今更聞けない株式型クラウドファンディングとセカンダリマーケット

2013年頃から10年弱続くスタートアップのブームも陰りが見えてきたのでしょうか。2022年の年末にかけてIPO(株式上場)にたどり着いたスタートアップ銘柄の株価が上場後すぐに急落するなど、状況の変化を感じさせます。そんななか、数年前から一般の投資家にも敷居が低く一時期注目されているのが株式型クラウドファンディングです。

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株式投資型クラウドファンディングとは?

株式投資型クラウドファンディングとは、新興ベンチャー企業(スタートアップ)の株を購入し、IPOや大企業へのM&A(株式売却)に向けた値上がりを期待する投資方法です。一般的な株式投資に期待するインカムゲイン(配当益)にはあまり期待せず、上場や事業売却にともなうキャピタルゲイン(売買差益)時点にて確定益とするものです。

スタートアップの株式購入のうち、きわめて小型の株式購入が株式型クラウドファンディングです。本来のクラウドファンディングは不特定の投資家が寄付行為でお金を集める形態で注目されましたが、株式型クラウドファンディングは寄付行為ではなく、あくまでキャピタルゲインを目的とした株式購入です。一方で上場株にあるような頻繁な売却機会があるものではなく、購入金額が小規模である一方、企業に対しての発言力も低いものです。また売却には株主総会による同意を必要とする企業も多いです。株主総会を主催する運営側としては反社会的団体(反社)などに株を所有されないためのリスクヘッジとしてこの制度があります。

株式型クラウドファンディングを購入するメリットとデメリット

では投資家にとって、株式型を購入するメリットとデメリットは何があるのでしょうか。それぞれ分析していきましょう。

メリット

スタートアップ投資のなかでも圧倒的に少額で投資することができます。運営会社によりますが、10万円で希望する会社の株式を購入できることもあります。スタートアップは成功の暁には株価が100倍にも1000倍にもなると言われていますが、元手が10万円だとExitの際も(一般的なスタートアップ投資のイメージにあるような)天文学的な確定益にはなりません。それでも10万円で投資できること自体に、スタートアップ投資が元来持つリスクの高さを回避できるという特徴があります。

スタートアップ投資に慣れていない方がなかば脇役的な位置づけで株式型を選択する傾向もあります。株式購入といえば国も推奨するNISA(つみたて含む)やiDeCoが代表的です。非課税措置のメリットもあるこれらの投資とスタートアップ銘柄を共有することで、分散投資を実現する意味もあります。

デメリット

株式型クラウドファンディングのデメリットはキャピタルゲインの可能性の低さです。一説によればキャピタルゲインの発生まで至るのは10社に1社ともいわれています。投資の性格的には成功率を求めるものではなく、9社が失敗しても1社の「大成功」に期待するものといえるでしょう。この流動性の低さを理解して投資することがスタートアップ投資を間違えないための根本的な部分です。

スタートアップが一巡したあとエコシステムはどうなっていくか

仮に2022年末に見られたIPOの落ち着きが一巡するとして、株式型クラウドファンディングにチャレンジした方々はどうなっていくのでしょうか。

株式型サービスの発展によって、いわゆる既存のVC(Venture Capital)と相性が良くなかったサービスにも投資が集まり、スタートアップ廻りの活性化に繋がりました。一時期、株式型でお金を集めた企業は株主の多さからVCからの出資に繋がらないともいわれましたが、一周廻って品質の高い企業は生き残っているようにも思えます(スタートアップはこのあたりの不確かな話が断定口調で廻ってくることが本当に多いです)。

起業家はプレゼンの勢いなどでイニシャルの勢いを見せることはできますが、長年自分の信じている世界の実現を目指すなど、ランニングの熱量を見せることは難しかったと筆者はスタートアップの一員として捉えています。株式型も含めてチャレンジできる環境が整ったことによって、今後のスタートアップの主役が生まれていくのではないでしょうか。起業家という形ではなくても新たな企業の経営陣やサポート陣としての視点でも有望な人材となるでしょう。

いま注目のセカンダリーマーケットとは?

株式型の最大のデメリットは先述したような流動性の低さです。以前は一度株式を所有するとExitを待つだけだったのが、最近あらたな動きが生まれています。それがスタートアップ株のセカンダリーマーケットの醸成です。

セカンダリマーケットとは、非上場株を売買できる取引市場のことです。証券取引所が主催する公式性のあるものではありません。現在国内で唯一の投資型対象のセカンダリーマーケットは投資型クラウドファンディングのサービス会社が運営しています。

流動性が気にかかるスタートアップ株を持っている投資家は、セカンダリーマーケットの利用を検討するのも1つの選択肢です。もちろん所有株の株主総会の同意などが必要な株式も多いため、セカンダリーマーケットがあるからと無条件で流動性が高まる(売買可能になる)ものではありません。ただ、当該のセカンダリーマーケットが発展したり、他社による運営が増えたりすると、スタートアップ周りの環境が大きく変わるきっかけとなるでしょう。

2023年になりました。昨年大きなカントリーリスクとなったロシアとウクライナ戦争の長期化、または著しい円安基調など、1年のはじめに見通せない不確定な事項も増えています。スタートアップ投資を分散投資の一端としながらも、投資家として次世代のサービスづくりに注目していきたいものです。

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この記事を書いた人

株式会社FP-MYS 代表取締役。

相続×Fintechサービス「レタプラ」開発・運営。2022年夏より金融教育のプロダクト提供。上場企業の多数の執筆・セミナー講師の実績を有する独立型ファイナンシャルプランナー(FP)。

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