NISA新制度を翌年に控えた今こそNISAをはじめる理由

2024年からNISA(少額投資非課税制度)が開始します。非課税投資枠の大幅な拡大と制度の恒久化が予定されており、利用している投資家にとっては大きなニュースです。現時点でNISAに取り組んでいない投資家の方のなかには、新制度が始まってから開始しようと考えている方もいますが、新制度開始を待たず2023年中に開始するメリットもあります。

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NISA新制度になって何が変わるかのまとめ

NISA新制度になって何が変わるのでしょうか。現在NISAは2種類が走っており、今回大きく変わるのは2014年にスタートした年間投資上限120万円のNISA(一般NISA)です。遅れて2018年にスタートしたつみたてNISAは「つみたて投資枠」と名前を変え、年間投資上限額が現在の40万円から120万円になります。

変更点①:一般NISAとつみたてNISAの併用が可能になる

現在、両者の併用はできません。もう片方に切り替えることはできますが、NISA口座にて何も買い付けていない状況(株や投資信託を利用していない状況)が前提となるため、利用ケースが限られます。

新制度では両者の併用が可能となります。一般NISAの年間投資上限も現在の2倍である240万円、ここにつみたてNISAの120万円が加わるため、最大360万円に拡大します。一般NISAは「成長投資枠」と名前を変え、立ち位置としてはつみたて投資枠を1階、成長投資枠を2階というイメージです。

変更点②:生涯非課税限度額が最大1800万円で新設

これまでのNISAの年間120万円、つみたてNISAの40万円という上限額は、実際に株や投信を購入した場合に積みあがっていきます。一方NISA運用のなかで購入したものを売却した場合も、これまでは積みあがった金額が変わることはなく、使用済みの枠となっていました。

新制度ではあらたな概念として「生涯非課税限度額」が設けられます。現行のNISAでは無い仕組みです。限度額は買付金額ベースで1800万円で、うち成長投資枠(旧一般NISA)が1200万円と設定されました。

わかりやすく例えると忘年会のビンゴです。これまでのNISAは一度穴があくと、ビンゴになってもその穴を戻すことはできませんでした。新制度NISAは該当する株を売却するとその穴を埋め、再度ゲームに参加することができます(同じ番号が2度は呼ばれないと思いますが)。

変更点③:非課税保有期間の無期限化

これまで一般NISAは5年、つみたてNISAは20年という非課税保有期間が限られていました。今回の改正で期間は撤廃され、無期限となります。たとえばつみたてNISAの希望者が20代で、50代前後から別荘を買って暮らしたいというニーズがあった場合、これまでのつみたてNISAでは20年が上限のため活用できませんでした。一方で老後資金用のiDeCo(個人型確定拠出年金)もありますが、これだと50第に拠出金を引き出すことはできないものでした。

今回のニーズはこのような対応のほか、教育費や住居など特定によらず広範的に資産運用をしたい人に対してとても使い勝手の良い制度に変更されることとなります。

NISA新制度を待たず、現行NISAを始めた方がいい理由

FPとして相談を受けていると、2024年からNISA新制度が始まるのであれば開始を待ってNISAを始めたい一定層がいると思いますが、制度改正1年前だからこそ、いま現行NISAをスタートし、備えておきたい理由もあります。

生涯非課税限度額に現行の投資分は含まれない

前項にてお伝えした1800万円の生涯非課税限度額に現行のつみたてNISAで投資している分は含まれません。現行制度には生涯非課税制度という概念がないため、現行のつみたてNISAを使うと来年更に非課税枠を限度いっぱい利用できることになります。つまり、1800万円×現行のつみたて利用分というフライングのメリットを享受できることになります。

2024年は相場の変動期で初心者には向かない?

さまざまな専門家が憂いているのがこの指摘です。投資の初心者が一歩踏み出すには、ローリスクで投資経験を積み重ねることのできる凪の(波のあまり立っていない)相場であるべきです。ところが2023年初頭から先行きを見ると、ロシアや中国・台湾の関係などでカントリーリスクが懸念されます。また世界の相場を不安定にする最大のイベントである、アメリカ大統領選挙も控えています。世界を賑わせたドナルド・トランプ氏が再び共和党から出馬するという意思を固めており、もし共和党の候補に認められれば前回以上の大騒ぎとなるでしょう。

日本においても2023年に中央銀行である日銀の総裁が変わることは確実です。少子化や物価高騰といったリスクもあるほか、台湾有事ともなれば決して遠い国の話ではありません。

これらのリスクに対し、投資信託って何だろうという初心者が大切な自己資金を費やすのはとても危険です。もし新制度のもとで投資を始めるのであれば、可能な限りの経験値と自信をつけてからのスタートをお勧めします。新制度の前に座学で一生懸命勉強するのも方法論の1つですが、投資は習うより慣れろの世界でもあります。現行のつみたてNISAのうちに5万円でもいいのでスタートし、ファンドを通して世の中の相場推移を見る訓練を始めるようにしましょう。

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この記事を書いた人

株式会社FP-MYS 代表取締役。

相続×Fintechサービス「レタプラ」開発・運営。2022年夏より金融教育のプロダクト提供。上場企業の多数の執筆・セミナー講師の実績を有する独立型ファイナンシャルプランナー(FP)。

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