高市早苗総裁誕生で考える、融資の借入金利と基準金利 〜短プラとTIBOR、どっちがお得?~

2025年10月4日に行われた総裁選で、高市早苗氏が選任されました。

個人的には、総裁選に民意が反映されたのは良いことだと思いますが個人的な政治の主義主張はどうでもよく、経営者・投資家としてはこの結果を踏まえどのようにして事業の意思決定を行うかです。

その中で、高市早苗氏が総裁・首相になることで銀行の金利がどのような動きを見せる可能性があるのか?についてお伝えしていきます。参考資料としてお役立てください。

目次

現在の状況とまとめ

高市早苗氏の政策スタンスと、それが実際に政策金利(中央銀行=日銀の短期金利や誘導目標金利)にどう影響し得るかを議論する前に、基礎知識と現在の状況についてまとめます。

まず、政策金利としては決定権は日銀が保有しており、自民党および高市早苗氏は「意向」は伝えることはできますが、中央銀行である日銀の決定に直接的な影響を及ぼすことはできません。

その大前提の上で、高市氏は少なくとも現状の景気悪化局面において「今、利上げをすることはアホだ」というコメントを本記事執筆の1年ほど前にコメントしており、政策金利に関しては利上げ反対派であるといえます。

そのうえで、日銀がマイナス金利を2024年に解除したのは記憶に新しいですが、2025年1月に金利を0.5% 水準に上げ、緩やかな “金融引き締めないし中立化への転換” を始めているとの説明が取締役・理事方向から出ている状況での、今回という形です。

とはいえまだ高市氏の政策がどうなるか不透明な現在、少なくとも短期的な利上げには動きにくいと想定され、目先はいったん、政策金利の上昇は止まる可能性が高いといえるのではないでしょうか。

基準金利の違いと政策金利

銀行融資を受ける際、融資の金利がありますよね?

あれは「何を基準に金利を決めるのか」という水準があります。

これを公式にするとT+α、Tが「基準金利」、つまり何を基準に金利を決めるのか、αが銀行の掛け目(つまりは銀行利益と貸出先のリスク)になります。

このTですが、融資においては「短期プライムレート」、通称「短プラ」と、「Tokyo InterBank Offered Rate(東京インターバンク オファードレート)」、通称「TIBOR」がというのが選択肢に上がります。

前述した「政策金利」に連動する(厳密には、完全連動ではなく基準として決定される)のは「短プラ」で、つまり「政策金利が上がる」=「短プラ」なので、高市さんの政策次第では「短プラ」が目先、有利になりやすいかも?というところです。

ただし先にお伝えした通り、そもそも「政策金利は方針はどうであれ、コントロール能力は日銀が持つ」ので、高市さんの意向がそのまま反映されるとは限らないので注意が必要です。

「短プラ」と「TIBOR」、どっちが有利?

では、「短プラ」で借りる・借りているのがすべて有利なのか?

こういった視点で見ると、そうも言い切れないのが融資の難しいところです。

まず前提知識として短プラは政策金利が基準となるのに対し、TIBORは複数の金融機関(リファレンス・バンク)が一定期間(1カ月もしくは3カ月ごとが多いです)に呈示する短期資金の市場実勢レートの平均値で決まります。

全銀協TIBOR運営機関が、リファレンス・バンクから毎営業日午前11時時点の金利を報告してもらい、その中から最高値2つと最低値2つを除いた残りのレートを単純平均して算出・公表したものがTIBORとなります。

また、本記事執筆時点での代表的な足元の水準は、短プラ=1.875%(主要行の店頭短期プライム、2025/3/3以降)で、MUFGの公表でも同率です。

一方で、日本円TIBOR(2025/10/07)は概ね 1カ月が0.61182%、3カ月が=0.81909%、6カ月が0.88091%です。

これを踏まえてまず素の時点で有利・不利を判断するなら、TIBORのほうが短プラより有利=金利が低い可能性が高い、ということです。

変動頻度を加味すると?

さて、ひとつ前の項目にもどしまして。

「基準金利の高さ・低さ」だけ見るとTIBORが有利と書きましたが、そのひとつ前の項目で

(引用)

前述した「政策金利」に連動する(厳密には、完全連動ではなく基準として決定される)のは「短プラ」で、つまり「政策金利が上がる」=「短プラ」なので、高市さんの政策次第では「短プラ」が目先、有利になりやすいかも?というところです。

と書きました。これはなぜか?

TIBORは算出される形式上、短プラより改定回数が多く、また短プラが「政策金利」が基準になるのに対してTIBORは「銀行のオファー金利」、つまり実務上の金利が基準となります。

つまり、「有利・不利」という目線を「基準金利の%」ではなく、「金利上昇が反映されるスピードが遅い=有利」と定義するなら、変化速度がゆっくりの短プラで借りるのが有利となります。

ですが、金利の高さ・低さという意味での有利・不利で言うと現時点ではTIBORで借りるのが「有利」で、ただし今後の政策を加味した銀行の相場観によってはこれが逆転するかもしれません。

ややこしいですよね。

まとめと補足

本記事を執筆現在、事業融資・運転資金は短プラが多く、不動産購入などの設備資金はTIBORが多い印象ですがそもそもの話として「皆さんはどっちで借りてる・借りようとしているか把握されていますか?」というところからスタートです。

もし把握されていないなら確認の上で「自分の財務状況や状況的に、どちらが有利なのか」をまとめて、銀行に持ち込むようにしましょう。

現時点では、という但し書きの上で個別状況にもよりますが、「安い金利で借りたいならTIBOR」、現時点で「変化に強い方針で借りたいなら短プラ」でよいとは思います。

ただしこれは融資金利のT +α、のTの部分なので、最終どっちが有利かはα、個別の財務や信用状況によっても変わってくると思いますのであくまで参考にご活用ください。

以上、総裁選結果と市場動向を話の枕にした金利の話でした。

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この記事を書いた人

「金融商品を売らない投資と財務の専門家」、株式会社BFPホールディングス 代表取締役。

株式・為替(FX)・不動産・事業投資など、総合的に投資を実行する現役の投資家兼アドバイザーとして活動中。2023年、書籍発行予定。

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