株価は、月別などで見るとある程度の傾向が見て取れることがあります。こうした時間軸で株価の傾向を見ていくことは軽視できないと考えます。
NYダウは、昨年12月に最高値を更新した後も、おおむね堅調に推移しています(3月7日執筆時点)。今回は、今後のNYダウを占う上で、過去のNYダウの月別の騰落率はどうであったのか、また各月の動きはその後の推移に影響を与えたのかを中心に調べてみました。その後の推移に影響を与えている月があると思われます。
NYダウと36カ月移動平均かい離率の推移
図は、NYダウの動きとその36カ月移動平均乖離率の推移を示したものです。36カ月移動平均かい離率の推移を見ますと、20%超にかい離した場面があるとNYダウはその後も上昇してきたことが読み取れます。近年では、2021年は3月にプラス23%台までの上方かい離が見られた後、2022年1月に高値をつけました。
一方、36カ月移動平均かい離率が下方に低下した場面を見ますと、コロナ禍の2022年にマイナス17.1%までの低下が見られました。しかし、この水準は2000年のITバブル崩壊後、2008年のリーマンショック後に見られた水準よりは上方となりました。
36カ月移動平均かい離率が20%に達するかを見極めたいところですが、今後は月別の傾向なども考慮して、高値をつけやすい時期などを捉えたいと考えます。
2月に上昇したことには良好な経験則がある
2月のNYダウの動きは、前年10〜12月期の経済指標や主要企業の決算が発表され、前年の年末商戦の結果が分かる時期なので重要だと考えます。2000年、2022年は1月に高値をつけた後に軟調に推移しました。
2月のNYダウの騰落状況は、2001〜2024年で見て15勝9敗、平均騰落率はマイナス0.2%となっています。2001〜2010年は悪い傾向がありましたが、2011〜2020年ではパフォーマンスが良くなりました。コロナ禍にあった2022、2023年に下落しましたが、2024年は上昇しました。
過去の動きを見ますと、2月のNYダウの動きはその後のNYダウの推移の参考になるのではないかと考えます。
- NYダウは、2000年に高値をつけましたが、2000年から2003年までの2月はすべて下落となり、この間のNYダウは2000年の高値を更新できませんでした。
- 2004年から2006年までの2月はすべて上昇となり、NYダウは2007年に高値をつけました。
- 2007年から2009年までの2月は下落となり、NYダウは2007年につけた高値の水準を何年か回復できませんでした。
- 2010年から2017年までの2月はすべて上昇となり、その間のNYダウは上がり続けました。
- 2018年からの2月は上昇する年と下落する年が混在するようになり、動きは複雑になりました。
- 2021年2月に上昇し、2022年に高値をつけました。
正確な予測ができるとは言えないものの、2月のNYダウが上昇するか下落するかは、その後のNYダウの動きを予測する上である程度参考になりそうです。
今年の2月相場では、大手半導体関連企業の好決算が発表されたことなどを受けて堅調に推移しました。今後も堅調に推移する期待が持てそうです。
大きく下がるとよくない傾向がある3月相場
3月のNYダウの騰落状況は、2001〜2023年で見て15勝8敗で平均騰落率はプラス0.6%でした。季節的にはまずまず良好な傾向があります。
しかし、2001年3月がマイナス5.9%、2020年3月がマイナス13.7%になっていることは気になります。2月に続いて大きく下落することが多いのですが、3月のNYダウの動きもその後の推移を占う上で一定の参考になりそうです。4%以上下落するようだとその後も軟調に推移してきた経験則があります。
1年で最も上昇しやすい4月相場
4月のNYダウの騰落状況は、2001〜2023年で見て19勝4敗で平均騰落率はプラス2.2%でした。勝率では12カ月で見て最も高く、平均騰落率は11月に続いて2番目となっています。
下落したのは、2000年、2002年、2004年、2005年、2022年でした。リーマンショックの前後の4月相場は上昇していました。4月のNYダウの動きは、その後の相場にはあまり影響していないと思われます。
上昇が一服しやすい5月相場
米国の投資家のなかでも、「SEL IN MAY(5月に売り抜けろ)」の格言はよく知られています。5月は1-3月期の経済指標、決算発表が出そろう頃であることに加えて、前年に支払った税金の還付金が投資家に戻ってくる時期になります。
還付金が戻って来る頃は、年前半で投資をする最後のチャンスになり易いと考えられます。それは、夏期休暇の時期や、米国で新年度となる9月を前に売りが出やすい時期を控えているからです。
実際に、2001〜2023年のNYダウの月別騰落率を調べてみますと、5月、6月、8月、9月の平均騰落率はマイナスとなっています。
5月から9月の相場では悪い兆候が出ていないかを注視したい
各年の5月、6月、8月、9月に見られた騰落率とその後のNYダウの推移を見ますと、6月に大きく下落すると、よくない傾向がありそうです。
6月の騰落率を見ますと、ITバブルが崩壊した2000年から2002年の6月相場はすべて下落しました。リーマンショックのあった年を含む2005年から2011年の6月相場は7年連続で下落しました。コロナ禍にあった2021年、2022年の6月相場も下落しました。
当サイトで2023年10月23日に掲載しました「月別に見たNYダウの騰落状況」で述べましたように、NYダウは10月に急落することが多かったのですが、5月から9月相場では悪い兆候が出ていないかを注視したい時期と考えます。
今後の戦略は
昨年終盤からのNYダウは、米国での経済指標や企業の決算内容で好調なものが見られたことを背景に堅調に推移してきましたが、11月の大統領選挙の行方、物価の動向、地政学的な動き(ウクライナ情勢・中東情勢)など、見極めたい要因も多くあります。
月別の傾向を考えても、5月から9月あたりではいったん下落する可能性があります。そのときは、過去の相場と比べてどの程度下落したのかなどを見て、季節的な傾向のみによる下落なのか、大きな下落につながる材料が隠れていないかを判断していくことが米国株に投資をする上で有効となりそうです。