都会から遠く離れた島で、どのようにして仕事を生み、事業を育てていくのか。
そして、起業のきっかけが“場所との出会い”だったとしたら、事業はどのように育つのか。
今回お話を伺ったのは、三宅島を拠点に映像制作・ロケ支援・地域アテンドなど多岐にわたる事業を展開する 株式会社JAM 代表・北村友基さん。

地縁もなかった三宅島に飛び込み、たった一言の「おはよう」発信からイベント興行や、さまざまな撮影案件を呼び込み、さらに地域の子どもたちへ繋げる「起業育成」にも力を注いできました。
“都会での事業戦略が通じない場所”でどう事業は育っていくのか。
“人と向き合うことの価値”は、なぜこれほどまでに強いのか。
この記事は、これから起業したい人、地方で事業をつくりたい人、そして不動産賃貸業から事業の横展開を考える方にも、大きなヒントになるはずです。
起業の原点は「三宅島との出会い」だった
北村さんが三宅島に入ったのは、今から13年前。
当時は【映像美術・大道具統括】に携わっており、日本中を全国行脚。三宅島全島を見渡した瞬間、こう思ったといいます。
「ここ、ロケに使えるな」
その“直感”がすべての始まりでした。
島での活動がきっかけとなり、地元の企業から声がかかり、 島内企業での取締役常務 に抜擢されます。
地域で働く中で、島の現状を深く知り、同時に「ロケ地の可能性は、無限大」という確信も強まっていきました。
そして4年後、取締役の更新タイミングで決断します。
「フリーでやる方が、島の魅力を自由に表現できる」
そこから3年間フリーランスでの、ロケーション・マネジメント / コーディネーターに。
そして現在の会社を立ち上げ、5年が経ちました。
その間、北村さんが続けていたのは“たった一つのシンプルな行動”でした。
個人のSNS発信=「おはよう」をやり続けた
企業同士のやり取りだけでは、島の魅力は十分に伝わらない。
だから自分が見て感じた島の良さを、自分の言葉で発信し続けたといいます。
すると、ある時から変化が起きます。
「SNSを通じて、ほんとに三宅島でのロケをやりたい企業が出てきたんです。
大きな撮影をやる前提でのロケハンが舞い込むようになりました。」
島の空気・景色・人を誰よりも近くで伝えてきた存在だからこそ、企業側も“任せたい”と思ったのでしょう。
北村さんのスタイルは、“都会とは真逆”。派手な仕組みでも、広告でもない。
「自分が島をどう見ているか」を丁寧に発信する。これが事業になりました。
「大変」と思ったことがない。それでも、壁はあった。
「苦労されましたか?」と尋ねると、意外な答えが返ってきました。
「大変とか苦労とか、実は思わなかったんです。」
もちろん壁はあった。
コンプライアンスの問題、地域コミュニティの独特の距離感、都会との仕事の仕方の違い…。
しかし北村さんは、それすらも“壁”とは感じていませんでした。
「ロジックではなく、人と会って話すことで超えられる壁ばかりでした。」
ロジックよりも「対面」の方が強い世界
島では“誰がやるか”が非常に重要です。
便利さよりも、信頼の方が価値を持つ。
都会ではオンライン化・効率化が進み、会わなくても仕事はできます。
しかし島や山間部では、AIやツールだけでは何も動かない。
「相手に「かならず」会いに行く。会ってもらう。
最後は必ず人対人なんです。」
この姿勢は、北村さんが指導している子ども向けオートバイレースでも徹底しています。
「この人に伝えたい、と思う前に自身の行動を示しなさい。その行動をした反応を見て・見てもらうことで、すべてのマインドが変わるから。」
行動が最優先。感情・人情は後からついてくる。
これは、起業にもそのまま当てはまる言葉でした。
「都会的すぎるAI活用」——島では通用しない理由
AI活用について伺うと、明確な視点が返ってきました。
「いまのAIの活用って、都会的なんですよね。」
効率化、人材不足、スキマ時間の活用…。
こうした発想は都市部の問題には合っている。
しかし島では違います。
「長年の関係性、生活スタイル、地域文化の理解があってこそ仕事になる。AIだけでは仕事は生まれない。」
島で仕事が生まれる理由は、“その人を知っているから”。
「お願いしたい」と思われるのは、信頼の蓄積があるからです。
北村さんが13年目を迎える女子野球のコーチを務める際も同じでした。
「己を知ってもらう【種まき】に3年。
芽吹き、色が付き始めるのが5年目。
【花として】 成果が見えてくるのは7年目です。」
七五三とは、どんなモノ・コトにも通ずる大切な日本の定義だと思います
地域の信頼が“時間”でしか積み上がらないことを誰よりも知っています。
ここに、島で事業を続けられる理由があります。
起業したい人へ——「あきらめない。でも、空間を読め」
最後に、これから起業を考える人にアドバイスを聞くと、迷うことなくこう答えました。
「単純にまず、あきらめないこと。」
ただし、盲目的に突き進むことを意味しているわけではありません。
“あきらめない”の中にも取捨選択がある
「大事なのは“時代・世代読み”とその場に漂う“空間読み”。
空間読みとは、挨拶から始まるコミュニケーションです。」
北村さんにとって、あいさつは単なる礼儀ではなく“ビジネスの起点”。
自分を売り、相手を知り、信頼が生まれる最初の行動だからです。
「あいさつ」と、そこから「始まる」自分を売ること。
これを繰り返した人だけが変わっていきます。」
起業も、地方での事業も、不動産オーナービジネスの横展開もすべて同じ。
信頼でしか動かない場所があり、信頼でしか育たない事業があります。
「三宅島は、まだ誰も見たことがない舞台になる」
——声をかけてほしい企業・個人の方へ
三宅島は東京に近いのに“遠い存在”。
多くの人が、島の素顔をまだ知りません。
「2000年の噴火の前は、どういう島だったのか。
噴火の爪痕が残る今、どのような景色が広がっているのか。
その両方を映像作品として撮れる場所なんです。」
北村さんは、ロケ地選定からアテンドまで一貫してサポートします。
- 映像・映画・CMのロケ地を探している企業
- 子どもたちの合宿地を探す学校・団体
- “東京の中の別世界”を舞台に作品を作りたいクリエイター
こうした方々に、三宅島は圧倒的な可能性を提供します。
まとめ:ビジネスの出発点は、今日の「挨拶」にある
北村さんの話は、都会の効率とは正反対の世界を教えてくれます。
- ロジックよりも対面
- 効率よりも関係性
- AIよりも人柄
- 即効性よりも時間の蓄積
そして、事業はたった1つの行動から始まる。
「あいさつ。まずはこれだけでいいんです。」
あなたが今日誰かにかける一言が、未来の仕事を連れてくるかもしれません。
島で生きる起業家の言葉は、時代がどれだけ変わっても揺るがない“本質”を教えてくれました。
株式会社JAM 公式ページ
https://jam-04994.co.jp/


