本当の起業とは「やりたいこと」ではなく「必要に迫られて生まれるもの」

――薬剤師としてのキャリアから生まれていった“余った薬”と需要・供給ギャップを埋める事業

「私は自分で起業家です」と名乗る人間を、正直あまり信用していません。

そう静かに語るのが、リバイバルドラッグ 代表取締役 蒲谷亘氏だ。

リバイバルドラッグ 代表取締役 蒲谷亘氏


キャリアとしては、薬学部を卒業して薬剤師免許を取得し、製薬会社の営業勤務をへて薬局を開業、その後にリバイバルドラッグ社を創業した。

そんな蒲谷氏は、若者間やいわゆるスタートアップ界隈で語られる“起業家像”とは、少し距離のあるところに立っている。

だが、その歩みを丁寧にたどっていくと、起業や新規事業を語るうえで見落とされがちな、本質的な視点が浮かび上がってくる。

蒲谷さんの考えは一貫している。
本当の起業とは「やりたいこと」を見つけて「お金のために」に始めるものではない。
必要に迫られ、「困りごとを解決しよう」と考え続けた結果、「仕組みとして立ち上がった」ものであり、「誰かに褒められる事がとても重要だ」と。

目次

薬剤師としてのキャリアと、現場で感じた違和感

蒲谷さんは、将来、様々なキャリアに派生できる薬剤師免許を取得し、冒頭に記載した製薬会社の営業勤務をへて薬局を開業、その後に余った薬の再販売を主とする「リバイバルドラッグ」を起業するというキャリアを歩んだ。

起業のきっかけとしては、薬局で働く中で気付いた、「薬がデッドストックになる要因」と「ひらめき」だった。

薬局には、使用期限や処方の偏りによって使われずに余ってしまう薬が必ずある。 しかし薬は、一般の商品と違い、自由に転売できない。薬機法をはじめとした厳しい法的規制があり、薬剤師としての責務は厳しく、そして重い。

その結果、まだ価値のある薬が廃棄されていく。
「この構造そのものを解決できないか?」という「問いかけ」が現在の事業の入口であったと語る。

重要なのはここで「起業したい」という発想が先にあったわけではないことだ。
目の前に無駄があり、困っている現場があり、「何とかできないか」と考え続けた。その延長線で、事業という形が自然と立ち上がっていった。

「起業家」という言葉に違和感を覚える理由

蒲谷さんは「起業家」という言葉を、あまり好まない。
それはそもそも「起業家」というのは自称するものではない、という感覚が強いからだ。

彼はそれを「政治家」と「政治屋」の違いになぞらえる。肩書きを掲げることと、実際に社会に何を残したかは別物だというわけだ。

では、蒲谷さんにとって起業とは何なのか。

答えは明確だ。
「困っていることを、人の頑張りで解決するのではなく、仕組みで解決すること」

たとえば豪雪地帯の雪下ろし。
人が毎回手伝ってあげるのは「親切」だが、根本的な解決にはならない。
空き家などに太陽光などで発電・電気の導線を通し、条件が揃ったら通電して雪が自然に溶けるようにすれば、そもそも雪下ろしという作業自体が不要になる。そういった「発想」を「現実にして」、元請け・一次請けとして形にする。これが起業と呼ばれる為に重要な要因だと語る。

「料理人の世界でもそうです。長年、師匠の料理人に指導を受け、独立して店を開くことを【起業】というと、それもただの開業で、違和感が残る。

それとは違い、修行した経験、そこから【より良いものを作るためには素材から考える。農業を含めてやってみよう】となるのが、起業な気がします」

そうしたスタンスと哲学が、実際の蒲谷さんのキャリアにも現れていると感じる。

小さく始め、問題が出てから直すという姿勢

リバイバルドラッグも、最初から全国規模を狙った事業ではない。
最初の一歩は、薬局のホームページに対して抱いた感想だった。

薬局店舗は地域型ビジネスだが、インターネットは「山や川を匿名で越えられる」。その地域では必要とされなくても、別の地域では切実に求められている情報がある。それを届けられるだけで、需給のミスマッチは少しずつ解消できる。

ただし、医療業界は非常に閉鎖的だ。役所などにリーガルチェックなどを行うと、 「前例がない」「答えられない」「できない理由」が次々に出てくる。この法律や制度のリサーチ、整理だけでも1年半以上を要したという。

だが、医療行為に関わる事業な以上、慎重さは欠かせない。蒲谷さんは新規事業の企画後も、すぐに社会へ広げることはせず、しばらくは“内輪だけ”で試し続けたという。そして、実際に動かせば、必ず問題が出る。

蒲谷さんは言う。
「ビジネスの格言、「大は小を兼ねる」は起業を考えた場合、間違いだと思っています。 細かく始めて、大きくする。実際に起きた小さな問題を直してから、次に進むのです」

理論よりも現場を優先し、試し、直し、また試す。
この積み重ねが、事業を“続く形”にしていった。

「知恵」は教わるものではなく、見つけるもの

起業において大切なのはお金よりも大切なのは知恵だという。

その「知恵」というものを掘り下げる行為とは「知識を深める」とは別物で、誰かに教わって得られるものではないという事。

「自分が持っていない知識を、ほかの誰かが持っていた場合、アイデアとして自分が気づけるかどうか? そして、その金言を持っている人の話をきちんと聞き理解し、自分の状況に合わせてアレンジできるか。」これが需要だという。

同時に彼は、「(知恵だけあっても)基礎がない人はいくらやっても難しい」とも言う。何でもいいから「これだけは負けない」という軸が必要だとも。

「パソコンが好きなだけでもいい。」

だが、将来そのパソコンを利用した仕事がなくなったらどうするのか。厳しく言えば、パソコン自体無くなったら?

誰かが作ったパソコンに代わる新しい物の“仕組みの中”で働く“下請けとして”留まる覚悟があるのか?

先の例に出した料理人が自分で育てた野菜をメニューにするように、土台を作れる側にも回れるかどうか。そこに、蒲谷さんが考える「開業」なのか「起業」の分かれ目があるという。

AI時代にあえて距離を取る理由

それに付帯して、近年の流行りである「AIの事業活用」に関してもご意見をお伺いした。AIは急速に広がっている。だが蒲谷さんは「ほとんど使っていない」と語る。

「AIは過去に発信された情報や入力した情報をを集めて出力しているだけで、正しさを保証するものではない計算や試験問題のように答えが一つのものなら有効だが、ビジネスや思想・判断には答えがない。しかも、間違った情報でも、それらしく見せてしまう危険がある。」という。

実際、蒲谷さんが特許取得を進めている新規事業の仕組みについても、AI上では正確に再現されていない部分が多いという。 「だからこそ、外部に向けて発信し、取材を受け、情報を整えていく必要がある。」という。

誤解のないように書くが、AIを否定しているわけではない。
「人間もAIを使って進歩する」と蒲谷さんは言う。
ただし前提はAIもあくまで道具の一つであり、AIを信じ切らず、最終的な責任は人が持つことだ。

余った薬の「売り方」と次の構想:リバイバルゲルトとは?

まず、リバイバルゲルト=RGとは、(リバイバル=復活)+(ゲルト=ドイツ語でいう金貨)= “復活する金貨” という地域通貨名とその地域通貨を利用したシステムを表す造語である。

当社では、余った薬を売りたい人がいる。その一方で、余った唯一無二の薬を買いたい人の方が実は多い。需要と供給のバランスが取れていない状態になる。

この、需要と供給のアンバランスなマッチングを解消した方法がリバイバルゲルト方式である。

では、単純に「早い者勝ち」で販売した場合、人気アーティストが販売するチケット、早押し勝負のように、アクセスが集中してパンクしてしまう可能性がある。

そこで、オークション形式にしたらどうなるか?

そもそも、再販売の薬を購入したい大きな理由としては、「安い値段で薬を仕入れられる」メリットがあるから成立している。しかしオークション形式では購入価格が吊り上がり、本来の目的意図から外れ、サイトが面白くないと感じる事は容易に想像できる。

そこで蒲谷さんが考えたのが、商品の価値を「値段」で競うのではなく、地域通貨(リバイバルゲルト)で競い、優先順位を決定する仕組みを構築したのである。

売却する薬の値段を固定し、購入希望者は、地域通貨であるRGで入札を行い、一番多くのRGを積んだ希望者に購入の権利を与えるシステムだ。

また、それとは逆に、使用期限が短いなど、購入に躊躇し判断が必要になる薬を購入した場合、RGが付与され、入札に使用できるRGの数が増える「新たな循環式のポイントビジネス」が構築された。

この金銭価値が無いRGを売却する商品に付与する考え方は、スーパーマーケットなどで見かけられる賞味期限が異なる商品が同時に棚にあった場合、期限が長い商品から買われる現象に、歯止めをかける新しい方法になると思っている。何故ならば、短い商品を購入した場合のみ、RGが付与されるからである。

現在、この方法は「リバイバルドラッグ社」の事業である薬のデットストックだけで行っているが、将来は「日本の第2の通貨」として、よりよい社会のために流通させる「循環型の地域通貨事業」を作り上げたいという野望を語る。

一例として、「ECサイトを利用したふるさと納税は、申請者側には商品が、自治体側には納税された税金と地域の好感度がUPするといったメリットが双方にある反面、そこには当然ECサイト側に対して支払う手数料が絡んでくる。

そこで、弊社は、金銭価値のない地域通貨=RGを納税した個人に自治体経由で提供する事で、個人は取得したRGで新しい発想のECサイトで、出品された唯一無二の商品が購入できる。そんな新しい仕組みが作れないかと思っています。もちろん、ふるさと納税に係わる経費は少なくなります。それは、当社が特許を取得しており、容易に参加出来るからと考えています。」と蒲谷さんは語る。

「こういった構想や仕組みを作ることに興味がある方、もしくは導入したい自治体は遠慮なく声をかけてもらいたい。まずは相談ベースからでも、ご縁をつなぎましょう」とのことだ。

起業で大事なのは「人脈資産」と「生かせる力」

蒲谷氏が重視しているのが、「人間関係という資産」に対する考え方だ。

知識やお金と同じように、人脈は起業や事業において非常に重要な要素であり、それをどう活かすかは、単なる「つながりの数」ではなく、「その人の本質を見抜けるかどうか」にかかっているという。

つまり、人の“良いところ”“悪いところ”を把握し、その人が何をもっとも得意とし、何を不得意とするかをきちんと理解したうえで、その人がもっともプラスの影響を与えられる場所を見つけてあげられるか。それが、組織や仕組みを作る側に立つ人間に求められる力量だとも。。

これを身に着けるには、学生時代のサークルや部活といった小さな集団の中にヒントがあるという。リーダーとして引っ張る役割もあれば、裏方としてチームを支えるマネージャー的な役割もある。時には、自分が主役になるのではなく、他人を助けてあげることや、周囲を見る視点が大切になる。

小さい頃から意識できていたかどうかが、将来の人材を見抜く力や、組織運営に活かされていく。

また、社会において必ず発生するのが、「あぶれる人」の存在だ。全員が器用に立ち回れるわけではないし、すべての人が初めからその人にとって“相応しい場所”にいられるわけでもない。そんなときに大事なのが、「あぶれた人を組み込む力」だと蒲谷氏は語る。

表に出るタイプではなくても、違う場所で生きる力があるかもしれない。そうした人材を見捨てずに、下から引き上げてあげる視点と実行力。それは蒲谷氏の事業哲学の根幹でもある「褒められることが大事」という考えに直結している。

何かを成し遂げたとき、それが「利益になった」だけではなく、「誰かに褒められることだったか?」と振り返る。社会に対して正直であること、価値を提供している自負があること。これこそが、事業が続いていく上での芯になっている。

蒲谷氏の取り組みや哲学は、ビジネスにおけるいわゆる「キラキラ」した成功談とは異なるかもしれない。しかし、だからこそ学ぶべき視点がある。起業とは、「やりたいこと」ではなく、「困っていることを仕組みで解決する」ことで自然と立ち上がるものであり、その根底には「人を活かす」「無駄を拾う」「社会に褒められることをする」という、極めて実直な人間観が通底している。

こういった理念に共感し、また新事業構想である「リバイバルゲルト」に興味がある方はぜひとも個別に連絡を取ってみてほしい。

また、リバイバルゲルトの内容は勿論、医療業界関係者やリバイバルドラッグの立ち上げなどに興味のある方は、全国の書店やAmazon、楽天等のECサイトで販売されている「リバイバルゲルト」という書籍を手に取ってみてほしい。

リバイバルドラッグ 公式ページ

https://www.revivaldrug.co.jp/

書籍「リバイバルゲルト」

https://amzn.to/45OVcW5
URLをコピーする
URLをコピーしました!

この記事を書いた人

本メディアを運営する「金融商品を売らない投資と財務の専門家」、BFPホールディングスです。

投資や財務の学習・計画補助・コンサルタントをご希望の方は、「こんなこと相談していいのかな・・・?」とお悩みになられる前にご連絡ください。

目次
閉じる