上場維持基準に関する経過措置終了銘柄に目を配れ

既に古い話になりつつありますが、2022年4月に東証の市場再編が実施された際、変更されたルールがあります。上場維持基準です。市場別の上場維持基準はhttps://www.jpx.co.jp/equities/listing/continue/outline/01.html を参照していただくことにして、プライム市場についてのみ確認すると以下の通りです。

出典:JPX website

わかりにくいのは「流通株式」だと思います。すごく簡略化すると、市場で取引できる株式のことで、大株主や役員などの保有分、自己株式などは市場に出回らない株式とみなされて、発行済株式数から差し引かれて求められる値です。算出された値に株価を掛ければ「流通株式時価総額」になりますし、発行済株式数に占める割合を算出すれば「流通株式比率」になります。プライム市場に上場している銘柄であるならば、この上場維持基準ぐらいはきちんと満たしてくださいというお達しです。

出典:https://www.jpx.co.jp/equities/listing/continue/details/02.html

ちなみに、プライム市場の株主数維持基準はかつての東証1部の基準よりも緩くなりましたが、流通株式に関しては厳しくなったのが2022年4月の変化です。

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経過措置があった

2022年4月に東証で市場再編が実施された際、それぞれの市場の上場維持区分を満たさない銘柄はたくさんありました。東証はそのような上場企業に対して、いきなり市場を変えてくださいとお達しを出したわけではありません。約3年程度猶予をさしあげますという経過措置を用意したのです。3年の間に、上場維持基準を達成できるようにしてくださいねということです。

そして、その「約3年」が昨春やってきました。上場維持基準に関する経過措置の終了に伴い、2025年3月1日以後に到来する上場維持基準の判定に関する基準日(以下「基準日」という)から本来の上場維持基準が適用されています。上場維持基準に適合しない状態となった場合には、原則として1年間(売買高基準に関しては6か月間)の改善期間に入り、改善期間内に基準に適合しない場合は監理銘柄・整理銘柄(原則として6か月間)に指定後、上場廃止となります。

出典:https://www.jpx.co.jp/equities/follow-up/04.html

銘柄によって決算期は異なります。よって、決算月に応じて、下の図のようなスケジュールが設定されています。

出典:https://www.jpx.co.jp/equities/follow-up/04.html

東証は改善期間に入っている銘柄をwebsite(https://www.jpx.co.jp/listing/market-alerts/improvement-period/index.html)でダウンロードできるようにしています(以下:改善期間入り銘柄リスト)。非常に親切です。プライム市場上場銘柄もそれなりにあります。日本株の個別銘柄投資をしている方は一度確認しておくといいでしょう。

保有銘柄が改善期間入り銘柄に該当していたら

自分のポートフォリオに改善期間入り銘柄があった場合にどうすればいいかを考えます。まずは、当該企業の適時開示を確認してください。

たとえば、改善期間入りしているテレビ朝日HD(東プ:9409)は、2025年6月に「上場維持基準への適合に向けた計画(改善期間入り)について」と題した適時開示を出しています。流通株式比率が適合していないことを明らかにしたうえで、同年4月に大株主が保有株の売出しを実施したこと、自社株買いを実施する予定を示して、2026年3月末という改善期間末には流通株式比率が上場維持基準を満たす見込みであることを示しています。

出典:テレビ朝日HD 適時開示資料

このように、上場を維持する意思があるのであれば、2025年4月以降に上場維持をもくろむことを示した何らかの適時開示を行っているでしょう。これは個別銘柄ごとに調べるしかありません。対面証券でそれなりの規模の資産を預けていたら、営業担当にお願いすれば代わりに調べてくれるかもしれませんが。

やや深刻にとらえた方がいいのは「時価総額」基準です。グロース市場銘柄にのみ基準が存在します。改善期間入り銘柄リストには20銘柄程度がこの条件未達で掲載されています。

出典:https://www.jpx.co.jp/equities/listing/continue/details/04.html

この場合の時価総額は、「上場会社の事業年度の末日以前3か月間における当取引所の売買立会における当該株券等の日々の最終価格の平均に、当該事業年度の末日における上場株券等の数を乗じて得た額」で判定します。たった1日とかではなく、3か月の終値の平均を見ることで、「たまたまクリアした」様な銘柄は排除することにしているのでしょう。

時価総額が未達銘柄の場合、他の基準を満たしているならばグロース市場以外に市場変更することで上場廃止を回避することが多いようです。改善期間入り銘柄リストに載っている20銘柄程度の該当銘柄のいくつかについてはすでにスタンダード市場への市場変更を公表している銘柄がいくつかあります。これも適時開示で把握できることです。

一方、市場変更の意思を示していないようであれば、上場廃止を想定することも必要でしょう。早めに撤退を考慮していいと思います。

中小型株を避ければ、悩まなくて済む

上場維持基準を満たしていないから上場廃止になると言われると、心臓によくない話ですが、改善期間入り銘柄リストに載る銘柄のほとんどはいわゆる中小型株です。自分なりの目的があって保有しているのならそれはそれでいいわけですが、配当利回りが高いとか株主優待がお得とかいった理由で中小型株を保有するのであれば、適時開示には敏感になった方がいいでしょう。そもそも、大型株を持っていても適時開示はしっかり確認するべきですが。

足下は大型株がやや弱含みな展開です。だからこそ大型株に資金を入れるべきかもしれません。少なくとも上場維持基準で悩む必要はないはずです。大型株はいわゆるTOPIX100のことです。発行済株式ベースの時価総額で2兆円以上の銘柄を選べばほぼ該当するでしょう。

出典:マネックス証券(青:大型株、赤:中型株、緑:小型株)
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この記事を書いた人

大学講師兼投資ライター
システムエンジニア->証券アナリスト->地方公務員->セミリタイアな中小企業の嘱託研究員->大学講師

CFP、FP1級、日本証券アナリスト協会認定証券アナリスト保有。
TOEIC950。MBA取得済。投資歴31年余り。

システムエンジニア時代に投信売買システム、生命保険契約管理システムに携わり、それらのしくみにも精通。
趣味はサッカー観戦(川崎Fサポ)、旅、読書、野菜栽培、フラワーアレンジメント。
がんサバイバーでもある。

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