拙著「2倍株・3倍株がぽこぽこ生まれる のんびり日本株投資」(https://amzn.asia/d/06pgwitW)では「避けた方がいいこと」ことを先に列挙したうえで、「やるべきこと」を挙げています。やらない方がいいことを先に避ければ、やるべきことは絞り込まれるという考え方です。「避けた方がいいこと」はここでは省き、「やるべきこと」の一つをベースに拙著で紹介していない銘柄を選んでみました。
今回ご紹介するのはフルヤ金属(東プ:7826)です。
ナンバーワン企業に投資する
拙著の4章では「やるべきこと」を列挙しています。そのうちの一つで誰でも簡単に実践できることとして挙げたのが「各業界のナンバーワン企業を選ぶ」ことです。同業種の中で最も売上高が大きいとか、シェアが高いとかいった企業を「ナンバーワン企業」と定義しています。
「ナンバーワン企業」は手掛けているビジネスが今後もサステイナブルで成長の余地があり、また軟調なマーケットで大きく値下がりしても、株価の回復も早いという特徴があります。日本株に限らず、株価が大きく下がる局面では、多くの投資家が各業界のナンバーワン企業から買っていくことが多いです。
ご紹介するフルヤ金属は、難しいとされる分野で世界トップクラスのシェアを有するグローバルニッチ企業です。
イリジウムとルテニウム
フルヤ金属はイリジウム・ルテニウム加工で世界トップクラスのシェアを持ちます。まずはこれらの聴きなれない金属について理解しましょう。両方とも白金族元素に属する希少貴金属です。イリジウム約7トン、ルテニウム約20トン程度と年間生産量が極めて少なく、高い耐熱性・耐食性を持ち、最先端技術を支える重要な素材です。
イリジウム(Ir、原子番号77)は、融点が約2446℃と極めて高く、地球上で最も耐食性の強い金属の一つです。密度は22.42g/cm³と非常に重く、酸やアルカリにほとんど侵されません。主な用途は自動車用スパークプラグの電極、半導体結晶育成用のルツボ、ステントなどの医療機器です。微量添加で合金の結晶を微細化し、強度を向上させる効果もあります。
ルテニウム(Ru、原子番号44)は、融点約2334℃、密度12.45g/cm³で、イリジウムより軽量です。優れた触媒活性が特徴で、自動車排気浄化触媒、化学合成反応、水素エネルギー分野で活躍します。また、ハードディスクの磁気記録層や次世代メモリMRAMの薄膜材料として不可欠です。
昨今、メモリは株式投資のホットなテーマですので、ついでにMRAMについても触れておきます。MRAMはMagnetoresistive Random Access Memoryの頭文字をとったもので、日本語では磁気抵抗ランダムアクセスメモリといいます。データを電子の磁化方向で記録するため、電源を切ってもデータが消えません。従来の主要なメモリが抱える「電源を切るとデータが消える(DRAM/SRAM)」「書き込み速度が遅く寿命がある(フラッシュメモリ)」といった課題を同時に解決する「究極のメモリ」の候補として、SamsungやTSMCをはじめとする世界的な半導体メーカーが開発・量産を進めています。DRAM並みの高速読み書きと、NANDフラッシュの不揮発性を兼ね備え、書き換え耐久性はほぼ無限、低消費電力という特徴を持ちます。現在は自動車・産業機器・AIエッジデバイス向けに採用が進んでいます。
イリジウムとルテニウムに話を戻します。どちらも今後の需要増が見込まれていますが、融点が非常に高く耐食性が高いため加工が難しいことが特徴ですが、その加工に強みを持つのがフルヤ金属です。
国内初の偉業
フルヤ金属は、1981年に国産第一号となるイリジウムルツボの開発に成功しました。イリジウムルツボとは、高温下での材料溶解や単結晶育成に使われる特殊な器具のことで、スマートフォンの中にあるSAWフィルター(電波の選別部品)や、高輝度LED、各種半導体に使われる「酸化物単結晶」を作るための容器です。このイリジウムルツボはほかの金属では耐えられない酸化雰囲気かつ超高温環境に耐えられるため、高い融点を持つ酸化物単結晶の育成には不可欠で、最先端テクノロジー産業の根幹を支える製品です。フルヤ金属が開発に成功するまでは、イリジウムルツボはほとんど海外からの輸入に依存していたため、日本初の開発成功により、国内での安定供給と高品質な国産技術を確立しました。現在はこのイリジウムルツボで世界70%のシェアを持ちます。
ルテニウムは次世代半導体に用いられる
フルヤ金属は純ルテニウムを用いたハードディスク用素材でも世界シェア70%を持ちます。
フルヤ金属のルテニウム加工の強みは、HDD用素材で培った高い技術力と、次世代半導体分野における圧倒的な優位性にあります。生成AIの普及で需要が急増する最先端半導体において、限界を迎えた従来の「銅」に代わる「ルテニウム配線材料」の最有力サプライヤーとして量産化をリードしています。
半導体の歴史は高集積化の歴史とも言えます。ところが、2nm以下の超微細領域になると、銅では細すぎて電気抵抗が跳ね上がり、発熱や信号遅延が発生するという課題に直面しています。これに伴い、半導体メーカー各社のロードマップで銅からルテニウムへの材料転換が本格化しています。技術の核となるのが、フルヤ金属独自の精製技術による「純度99.999%(5N)」の極限のハイピュリティ化です。不純物を徹底的に排除し、結晶粒を均一に揃えることで、微細な半導体回路のエラーを防ぐ高品質な製品を安定供給できます。
リサイクルにも強みを持つ
フルヤ金属が扱う金属は希少なものが少なくありません。イリジウムやルテニウムも世界的な産出量が極めて少ない希少金属で、南アフリカなど特定の国に偏在しています。
そのため、地政学リスクや価格変動の影響を受けやすいという致命的な弱点があります。フルヤ金属はこの課題に対し、顧客が使用して摩耗・劣化したルツボや半導体ターゲット材、さらに製造工程で出るスクラップを回収し、再び新品同様の品質に蘇らせて供給する高度な「クローズド・ループ(循環型)」システムを確立しています。高品位から低品位スクラップまで対応可能な乾式炉や独自の化学処理技術により、年間生産量を上回るリサイクル能力を実現しています。
この循環型事業により、希少資源の有効活用と環境負荷低減を両立。出荷量の多くをリサイクル材で賄うことで、価格変動リスクを抑え、顧客の安定供給を支えています。半導体、有機EL、HDD、触媒など最先端分野で不可欠な「都市鉱山」の錬金術として、持続可能な社会に貢献する基幹事業です。
上場来高値を更新
2026年5月13日に発表した2026年6月期第3四半期決算で業績予想を大幅に上方修正したことが好感され、翌営業日に株価が大きく上昇しました。年初来から約170%上昇して、上場来高値を更新しています。それでもPERは18倍程度です(2026年5月14日現在)。
他社が容易に参入できない領域で強みを持ち、その分野の需要が当面落ちないであろうと想定されるため、さらなる上値を期待できると考えています。



