「保険」の基本的本質は、運用商品ではなく「非常事態に対するヘッジ(対策)」です。
ある生命保険のCMで、社長の重責を担っていた弟が病に倒れ、姉が社長業をバトンタッチするというシリーズがあります。
このCMでは法人にて代表が生命保険に加入するケースをわかりやすく示しているため、例として参照します。
法人の「まさか」に備える保険加入
法人保険に加入しておけば、代表やキーマンにもしものことがあった場合でも経営リスクを回避できます。
筆者(株式会社FP-MYS 工藤)のように、家計のライフプランを作成するファイナンシャルプランナー(FP)の多くが多用する格言があります。
それは人生と同じように会社経営にも上り坂と下り坂、そして「まさか」がある、ということです。
個人の「まさか」は突然の病気やケガ、職場の倒産や突然の災害など、突然大きく変わることはないと想定していた事柄が急変してしまう事態のこと。受け入れがたいマイナスの事態を指します。
法人を襲うまさかは代表等、キーマンの死亡です。そういった事態に直面した結果、会社が倒産する可能性さえもあります。
冒頭の例に出したCMにおける、1本目は病気に倒れるものの回復します。その時の法人保険の動きとしては、保険によって医療費がカバーできた!という展開です。
第二話においては、闘病むなしく弟は亡くなります。ただ、その時に法人保険の終身保険に加入していたことにより、死亡保険金を法人が受け取り、従業員の生活を維持することができました。
社長・キーマンが倒れたら
事業を継続・・拡大している法人、とりわけ人員の代わりがききにくい体制で運営されていることが多い中小企業の社長や経営幹部が病気やケガに見舞われ、通常業務が継続できなくなると大きな影響を受けます。
中小企業として法人保険を検討する際は
誰が倒れたら、どんな影響が出るのか
その影響をヘッジ(対応)するためにはいくらのお金がいるのか
この二つをイメージして加入する保険を検討することが大切です。
どれだけ売上を生み出す体制や仕組みが整っていたとしても、一時的にしろ船頭を失った会社はマイナスの影響が大きく現れます。
トップセールスで獲得してきた売上や社長の人脈・営業活動から得られる営業機会も打撃を受けます。
まず企業として、法人保険で担保しておくべきなのはこの売上の代替となる部分、次に万が一の場合代わりの人材を雇用できる費用、最悪の場合だと会社が解散しても取引先・従業員に迷惑をかけないようにできるお金です。
これらに優先順位をつけ、「まさか」があっても問題なく組織継続できるよう、加入設計しましょう。
「保障」の次が、「節税」
法人用の終身保険の持つ特徴は貯蓄性です。
法人の財務から保険料を支払い、一定期間が経過すると支払った保険料以上の返戻金を得ることができますので、経費として保険料の半額(※保険種別によります)を計上し、返戻金が100%に近づく段階で解約し、節税+貯蓄を行うことができます。
もちろん終身保険の被保険者になった社長が亡くなったら貯蓄性を活用することはできないため、通常は一定の期間が過ぎると加入している当該保険を解約し、一時金を受け取ります。
解約するための手続きを「解約返戻金」といい、支払った保険料総額に対して戻ってくるお金を解約返戻率といいます。
ですが本記事を執筆している2022年現在、金融庁及び税務署からの指導により、この解約返戻金が下がっています。
そのため、法人における保険の活用は本項目の表題にある通り、「あくまで保障が第一であり、節税効果は二の次であるという運用をしていかないといけません。
法人保険において解約返戻金による貯蓄性と節税は確かに重要ですが、同時に保障性も担保されていることも認識しておきましょう。
節税効果や運用益が期待できないから法人保険ごと解約するのは、リスク管理の手段としてはあまり推奨できません。
また、保険会社の営業に騙されて、条件が良かった時代の保険、俗にいう「お宝保険」は解約してしまわないよう、現行の保険商品設計と相談・見直しして、きっちりと判断するようにしましょう。
今更聞けない「損金算入」について
前項でも触れましたが、法人保険のメリットは保障や節税をしながら「損金(経費)」に計上できることです。
法人保険に加入して支払った保険料はこの損金、経営経費に該当します。
損金計上できる種別は主に「全額損金」「半額損金」、少し種類は少ないですが「3分の1損金」が存在します。
ものすごくざっくりとした区分ですが、
掛け捨ての保険は全額損金
解約払戻金等の資産性がある保険は半額ないしは3分の1損金
の保険が多い、という解釈で大丈夫です。
もちろん保険商品によって違いはありますが、リスクに回避するタイプの掛け捨て保険であれば「全額損金」、解約払戻金があるものであれば「半額経費計上」ぐらいの形で考えましょう。
退職金等を積み立てる、となるとまた話が変わるので、その辺りは別記事でご紹介します。
まとめ
保険は「保障を得る」のが第一目標
貯蓄と損金計上戦略は二の次
「自分がどのようなリスクに備えたいのか」によって選択肢は変わる
経営者としてどのリスクを重要視し、対処していくかによって保険選びを進めていきましょう。
また、適切な保険選び・提案・セカンドオピニオンが必要な方はお気軽にお問い合わせください。