ご近所やお友達のワタナベさん?
「ミセス・ワタナベ」。
筆者にとっては耳慣れた「言葉」ですが、10年ぐらいあまり耳にしていませんでした。
え?友達の渡辺さんじゃないの?と思った方。
その渡辺さんをここでご紹介するのは皆さんの時間を無駄に奪うことにしかなりません。
投資をしている人なら知っていてほしい「言葉」だからこそ、このような形で生地にさせていただいています。
「ミセス・ワタナベ」は特定の個人ではない
「ミセス・ワタナベ」は特定の個人を指しているわけではなく、日本人の主婦を中心とした女性やサラリーマンのFX投資家を語源とした俗称で、欧米の報道機関によって名付けられたといわれています(Wikipediaより)。
FXは2000年代後半から2010年代始めぐらいに取引する方が増え、中でも日本人がどうやら多かったようで日本人の代名詞として「ミセス・ワタナベ」と名付けられた模様です。そのような名前が付くぐらいだったので、少なくとも日本人のFX取引はそれなりに存在感がある投資主体だったのでしょう。
実際、10年ぐらい前は日本経済新聞などでもよく見かける「言葉」でした。
しかしながら、近年はほとんど見かけませんでした。
その「ミセス・ワタナベ」をこの秋以降、見かける機会が増えたように思います。
なぜでしょうか?
為替相場を動かす要因
筆者は企業業績を動かすファクターとしての為替相場には興味がありますが、為替相場の変化そのものを投資対象とはしていないため、FX取引をやったことはありません。そんな筆者なりに「ミセス・ワタナベ」を耳にも目にもしなくなった理由を考えてみました。
為替相場を動かす要因はたくさんありますが、代表的なものは当該通貨の金利だと個人的には理解しています。ものすごくざっくりとしたシナリオですが、ほかの要因がすべて同じだとしたら、お金は金利が高いところに入っていくのが自然です。
下のチャートは米国と日本の過去5年の10年国債利回りを示したものです。
上が米国、下が日本です。
直近の動きが似ているように見えるかもしれませんが、目盛りを確認してください。値が全く違います。
出典:モーニングスター
お金が金利が高い方に入っていくのが自然だとすれば、金利が上昇し続けている米ドルは日本円より魅力的に見えるはずです。
逆なら、米ドルは魅力的に見えません。
米国の金利が下落し続けていたころ(上のチャートの2020年まであたり)では、米ドルの金利が低かったので、「ミセス・ワタナベ」のような日本のFXトレーダーは米ドルに魅力を感じなかったのでしょう。だからしばし「ミセス・ワタナベ」の名を耳にすることは稀でした。
が、米国の金利が上昇してきた昨今の局面では、為替のボラティリティも手伝って、「ミセス・ワタナベ」が頑張りがいあるマーケットになったのだと思います。
国際決済銀行(BIS)の3年に1度の調査によれば、米ドルと日本円の取引は世界で2番目に取引ボリュームが多い通貨ペアだそうです。
Triennial Central Bank Survey – Foreign exchange turnover in April 2019 (bis.org) (11ページ参照)
米ドルと日本円のペアの取引には日本人が関与することが多いでしょう。それが世界で2番目の取引量となれば日本人のFX投資家に「ミセス・ワタナベ」という俗称がつくことにも合点がいきます。
ちなみに、この調査は3年に1度実施され、次のレポートは今年の12月に発表される見込みです。ただ、調査の締め切りは今年の6月だったようなので、まだ「ミセス・ワタナベ」の存在感が大きくなっていない時期の結果が公表されることになるでしょう。
実は筆者は2年ほど前に別媒体(残念ながら今はもうありません)で、「ミセス・ワタナベ」について、以下のように書いていました。
「ミセス・ワタナベ」は存在そのものが消えたわけではなく、常にチャンスはうかがっているのでしょう。その名を耳に目にする日は例えば日米間の金利差が大きくなっているときなのかもしれません。足元の円高が進行するようであればドル買いも増えるでしょうから、再び「ミセス・ワタナベ」が存在感を示す日はそう遠くないかもしれません。
この記述から約2年。
「そう遠く」はなく、「やや遠かった」かもしれませんし、その他の記述もはまっていない点がありますが、「その名を耳に目にする日は例えば日米間の金利差が大きくなっているとき」という点は当たっていたと思います。
米国と日本の金利差が開けば開くほど「ミセス・ワタナベ」を見聞きする機会が増えると思います。そんな時にこの記事を思い出して改めて読んで頂けたら嬉しいです。
まとめ
「ミセス・ワタナベ」は特定の個人を指しているわけではなく、日本人の主婦を中心とした女性やサラリーマンのFX投資家を語源とした俗称
為替相場を動かす要因の代表的なものは当該通貨の金利
お金は金利が高い場所を好む
USD/JPYは世界で2番目に取引量が多い通貨ペアである
取引量が多い通貨ペアの金利差が開けば、日本のFX参加者である「ミセス・ワタナベ」の出番