教育費用の変動性を無くすにはどうするか

ライフプランは見通しが大切です。家計の計画において頻出するライフプラン表は、現時点以降20年近くの収入見込みから毎月の支出、住宅購入などの支出、果ては年金見込みに至るまで、顕在化している数値を入れ込んでいきます。その時に課題になるのが、目の前ですくすくと育っている子どもにかかる教育費の変動性です。

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この子は将来何になりたいのか

目の前ですくすくと育つ子どもは可愛いものです。同時に両親は、この子が何かを目指したいという将来図へ具体的な素振りを見せると、ドキドキします。街の治安を守る警察官を見たら「公務員試験。。大学卒業して予備校か」、新幹線の運転士に憧れ始めたら「大学卒業してJRへ入社?」という具合です。情操教育に美術館に連れていき、画家になりたいといわれたらドキドキは一段階アップします(芸術系の学校進学は教育相場のなかでも費用がかかる)。一昔前であればOBOGや書籍を調べて明らかになっていた教育費も、いまはGoogle先生に聞けば瞬時で答えてくれます。それもまた、答えを知るまでの心の準備の猶予を除去するものでしょう。

教育費用の変動性を無くすにはどうするか

ライフプランにおける教育費の特徴は変動性が高いことです。我々FPは高品質な客観的資料である生命保険文化センターなどの資料から、1人の子どもを大学まで育てるためには役1,000万円から1,200万円が必要と試算しています。これは入学費用と授業料だけの試算であり、実際は塾費用や教材代など上振れが想定されています。

出典:生命保険文化センター

https://www.jili.or.jp/lifeplan/lifeevent/771.html

ライフプランとして教育費が1000万円かかるのか、800万円で収まるのが不透明であり、かつ子どもが一定年齢になるまで確定しない教育資金は。きわめて変動性の高いものです。毎月の貯金で貯めるにしろ、つみたてNISAなどを使って資産運用で対応するにしろ、対象となる費用感が不透明な状況では準備にも不安が募ります。

まして多くの費用捻出が同時並行で走るのが30代から50代、いわゆる現役世代の宿命です。教育費を貯めつつ、他は日常生活費を捻出するだけならいいのですが、住宅購入費や親自体の老後費用、その他もろもろ意識しないランニングコストなど、銀行口座を見ると不安感が先に現れます。

令和版教育費用の貯め方

筆者は最近縁あって、20-30代の母親の個人相談を数多く受けています。その傾向が見える令和版教育費用の貯め方をお伝えします。

目立つのはつみたてNISA

まず実感するのは、つみたてNISAがとても浸透していることです。イギリスの投資制度をもとに2014年にスタートしたNISAですが、年120万円までという規模感が一般家庭から敬遠され、活用世帯が伸び悩みました。その傾向を受け、2018年から年40万円のつみたてNISAがスタートします。

一般NISAも必ず120万円を投資しなければならないわけではなく、40万円以下でも問題ないのですが、ハードルの高さが先行して敬遠されたようです。またつみたてNISAを開始した人たちがママのコミュニティやSNSなどで情報発信した背景も重なり、つみたてNISAは一般的なものになりました。実際の声を聞くと教育費用と限定している方よりも、非課税なので何となく続けているという声が多いです。

学資保険は時代遅れなのか

10年以上前、教育資金の確保といえば学資保険でした。郵便局(かんぽ)やJAから発売された保険は運用利率10%近くの商品も珍しくなく、子どもが生まれたら学資保険一択で検討する家庭も多くありました。

最近は10%超えの商品はさすがに見かけないものの、運用期間によって5%から6%近くの利率を期待できる商品が販売されています。ただ先述したNISAなどの存在感が増していることと、保険のなかでも外貨や変額保険といった、学資保険の代わりに運用性を期待できる商品が増えており、存在感を失っているのは事実です。保険会社によっては既に学資保険を商品ラインナップのなかから削除しているところもあります。

筆者としては、子育てで忙しく不安も増すなか、祝金制度や万が一親が死亡した場合の保険料免除制度がある学資保険は、状況によってはまだ使えるものという認識です。NISAには無いレバレッジの利いた保障機能もあるため(生命保険はもともと保障性の商品ですが)、自分には学資保険が合っているのではと考えたらその前提で保険会社の人間や専門家に相談することをお勧めします。言い換えれば最初から学資はダメですよ!と断定する専門家は、客観性を担保すべき金融商品の取扱者としては疑いの目を向けたいところでもあります。

今後は少子化の更なる進行や経営難による大学の統廃合などにより、教育費まわりも環境変化が続いていくことでしょう。専門家として最新状況をキャッチアップし、届けていきたいと思います。

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この記事を書いた人

株式会社FP-MYS 代表取締役。

相続×Fintechサービス「レタプラ」開発・運営。2022年夏より金融教育のプロダクト提供。上場企業の多数の執筆・セミナー講師の実績を有する独立型ファイナンシャルプランナー(FP)。

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