名称が変わる「東証マザーズ指数」の動きを振り返り、今後を占う。

東証マザーズ指数は、2020年11月に高値をつけた後、2022年6月に安値をつけ、その後はこの高値、安値の間での推移を続けています(8月18日現在)

今回は、東証マザーズ指数の名称が11月に変わることに触れた後、これまでの東証マザーズ指数の動きに焦点を当てて、ある程度当てはまっていると思われる2つの移動平均を使って考察してみました。当面は大きな反発は期待できないと思われますが、過去につけた安値の前後では下がりやすいのではないかと予想します。

目次

東証マザーズ指数につい

東証マザーズ指数は、東京証券取引所における成長企業向けの市場である「マザーズ市場」に上場する内国普通株式全銘柄を対象として算出される時価総額加重平均型の指数として誕生しました。指数を対象にした先物取引も存在しています。

2022年4月の東証市場区分再編によりマザーズ市場は廃止となりましたが、東証マザーズ指数自体は2022年4月以降も継続して算出されています。

東証マザーズ指数は今後、一定のルールに基づき構成銘柄の入替(3段階)が行われ、 2023年11月6日に指数名称が「東証グロース市場250指数」へ変更される予定です。

(JPX日本取引所グループのHP「東証マザーズ指数とは?」より抽出)

移動平均について

株価の移動平均とは、それまでの一定期間での平均値を計算するものです。毎営業日、あるいは毎月ごとにその数値は変わります。

グランビルの法則について

移動平均を使って売買する法則として、米国のアナリストであったグランビルの提唱した法則がよく知られています。8つの法則は過去の原稿で取り上げました(6月25日掲載の「移動平均でみる日経平均株価の上昇スピード」)ので、今回は省略します。

グランビルは200日の移動平均を使いましたが、銘柄(指数)ごとに当てはまった期間を考えて使っていくことが有効ではないかと考えます。この条件だけで売買を行っても、収益を得ることは難しいのですが、ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)要因や他のテクニカル分析手法などと合わせて考えることで、平均収益率を向上させることができるでしょう。

東証マザーズ指数とその36カ月移動平均について

下図は、東証マザーズ指数とその36カ月移動平均の推移を示したものです。アベノミクスによる上昇時などでは安値をつける際に、36カ月移動平均の近くでたびたび下げ止まってきたことが分かります。

36カ月移動平均を明確に下回ったのは、2006年のライブドアショックから2008年のリーマンショックの後まで、2020年の新型コロナウイルスの拡大懸念による下落時、2022年の世界的な利上げ開始による景気悪化懸念が高まったときなどでした。

足元は、2022年6月の安値よりやや高い水準で推移しています。今後は、グロース市場の銘柄全体の業績が改善するのか悪化してしまうのかによって方向感が決まりそうです。日本経済新聞の相場欄ではグロース市場全銘柄の予想PERが掲載されていますが、8月18日現在で53.13倍と高くなっています。これが低下するようだと相場も上向くことが期待されます。

プライム市場全銘柄の予想PERは8月18日時点で15.04倍であり、プライム市場の銘柄と比べて業績が改善していないことが表れています。プライム市場の銘柄と比べて円安の恩恵が少ないことなどから、アベノミクス以降の政策の効果が定着していません。

ただし、当面は中国経済の先行きなどを見極めながら、2022年6月の安値(661)や2020年3月の安値(620)の前後などでは下げ止まりやすいと考えます。

東証マザーズ指数が安値をつけやすい時期は?

上図で、東証マザーズ指数が安値をつけた時期は、2009年が2月、2012年が5月、2020年が3月となっています。1-3月期決算発表の時期の前後が多いようです。

今後、業績改善の兆しが見られて東証マザーズ指数が上昇しやすくなるのは、まだ先になりそうです。少なくとも、2024年度の業績予想が行われ始める来年序盤あたりまでは待たなければならないと考えます。

25日移動平均乖離率について

株式市場では、上昇または下落のスピードが過熱しているかどうか(速過ぎるか)を捉えようとする指標がいくつかあります。よく見かけるものに、株価の25日移動平均との乖離(かいり)率があります。移動平均との乖離率は、各営業日での株価と25日移動平均がどの程度乖離しているかを計算するものです。

株式市場には逆張り戦略を狙っている投資家がいる

株式市場では、株価が下落したところで買い、株価が上昇したところで売りを行う(逆張り戦略を狙っている)投資家が一定程度存在していますので、各移動平均乖離率の水準を見ていくことは重要でしょう。

大きな材料が出ていない中で過熱感が出ているときは、過熱感が収まってから売買を行うなどの工夫がパフォーマンスをよくする上で有効となるでしょう。

東証マザーズ指数を対象にした25日移動平均乖離率の推移

下図は、最近の東証マザーズ指数とその25日移動平均乖離率の推移を示したものです。

日経平均の25日移動平均との乖離率は、一般的に、プラス5%を超えると上昇ピッチが速いとされ、マイナス5%を下回ると下落ピッチが速いと言われますが、最近の東証マザーズ指数ではプラス6%からプラス10%前後で上昇が止まりやすく、マイナス5%から10%前後で下落が止まりやすくなっています。しばらくは、強弱材料に左右されながらも、一定範囲内での推移が続く可能性が高いと見ています。

今後の戦略は

今回は、東証マザーズ指数での移動平均との関係をとりあげましたが、過去の下落場面と比べて大きな悪材料が出ない限り下値が限定的になると考えます。短期的には下がったら買いを行うことを検討したいところです。


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