京都に見られるような「うなぎの寝床」土地と相続の関係

うなぎの寝床とも称されるような間口が狭く、奥に進むに連れて整形地が現れる土地があります。まるでアルファベットのLを上下逆にしたような形態は、よく京都にて見られます。また道路に2mや3mの長さで僅かにひっかかるように立ち、やはり奥行きが広がる土地も日本ではよく見られます。このような土地を急に所有することになった方のお話です。サブテーマとしては、相続は送るばかりではなく、受け取る方の都合も考えなくてはいけないな、と思い知らされます。

目次

顧客属性

  • 京都市東山区の土地を遺贈にて受け取った60代のAさん
  • 何か京都らしい事業に取り組もうとするもコロナ禍で放置
  • そういえば相続どうなるんだと問い合わせ

ある時「遺贈」により土地持ちに!

Aさんの先代は特に京都に土地を持っている家系ではありませんでした。Aさんも60代を迎えるまで、大阪市内でマンションを購入し、いわゆる区分所有だった方です。急に京都の土地オーナーになっても困るだけです。突然の話が持ち上がったきっかけは、父親の兄弟である90代の男性に相続人がいないことでした。

90歳男性、Aさんにとって叔父となる方は、遺言をしたためていました。遺言には京都市東山区の45坪の敷地を、Aさんにすべて譲るという内容でした。もちろんAさんは法定相続人ではありません。本来は相続権が無いのですが、ほかの親族と違いバリバリの現役だったことが目に留まったのでしょうか。50代で企業を興したAさんは京都でITサービス業を展開していました。現役だから何か役立てて貰えるかもしれない、と叔父は考えたのでしょう。

相続人がいない方の相続は生前の意思が尊重されます。Aさんから見て90代の叔父は自筆証書遺言にてAさんへ京都の土地の所有を示し、大切に保管していました。自筆遺言の欠点は、資産を送る相手に告知する必要がない点です。

土地の所有は資産が増加する一方、固定資産税や都市計画税の納付義務が生じます。今回の土地は間口が狭く、奥に進むにつれ広がる「うなぎの寝床」型のため、建物を建てるには間口に建築物が接していなければならず、とても難易度が高いものです。土地を相続したAさんは当初、何か京都らしい事業を展開しようかと考えたのですが、事業が忙しく後回しにしていました。敬遠していた理由の1つは、この土地がうなぎの寝床だった点に他なりません。

それでも何か活用しようとするなかで、Aさんは年齢に応じた体調不良を感じるようになります。もし自分に何かあったら、この土地は自分の子どもたちに相続しなければならない。そのために今やっておくべきことは何だろうか。Aさんはあまり自分に時間がないことに気がつきます。

うなぎの寝床の土地評価とは

Aさんが子どもたちのために相談したのは、この所有地がどれくらいの相続税を納付する義務があるかという懸念でした。通常、相続において土地の評価は相続税評価額にて進められます。評価方法は路線価方式と倍率方式の2通りです。

日本中の多くの道路には路線価が設定されています。この路線価にもとづいて土地を評価する方法が路線価方式です。路線価は行政機関のほか、国税庁のホームページで確認することができます。

一方で路線価が設定されていない土地の場合は倍率方式を使います。倍率方式は相続税評価額ではなく、固定資産評価額にもとづいて計算します。この時に土地ごとに設定してある倍率を計算するという流れです。

(路線価方式)路線価10万円・各種補正率1.0・土地面積100㎡
相続税評価額 10万円×1.0×100
(倍率方式)固定資産税評価額1,000万円・倍率1.1
相続税評価額 1,000万円×1.1=1100万円

うなぎの寝床には「奥行長大補正率」

さてAさんのうなぎの寝床型土地は、上記基本原則と何が違うのでしょうか。実は基本的には変わらず、路線価があれば路線価、無ければ倍率方式で計算します。この補正率に奥行長大補正率が適用され、相続税評価額が算出されます。より細かく解説をすると補正率は複数あり、ほかにも評価額を下げる方法があるのですが、不動産の専門家向けの解説記事ではないので控えます。

相続で大切なのは鮮明にしておくこと

これまでに特集では様々な相続のエピソードをもとに、トラブルや問題になる相続のポイントを提示し、解説してきました。相続が問題になる根幹は、準備を不十分なままに被相続人が亡くなり、相続人が大慌てすることです。共有されていない情報や遺言書の中身、何よりも資産承継の最重要部分である「どの資産を誰に、どのように分けるか」という点です。今回遺贈の送り手となった90歳の叔父にしても独り身だったからトラブルにはならなかったものの、仮に家族がいて無視しての遺贈ならばそこにもトラブルの種があります。

相続で大切なのは、可能な限り早く話し合い、資産共有して、可視化をしておくこと。今後も突き詰め続けたいと思っています。

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この記事を書いた人

株式会社FP-MYS 代表取締役。

相続×Fintechサービス「レタプラ」開発・運営。2022年夏より金融教育のプロダクト提供。上場企業の多数の執筆・セミナー講師の実績を有する独立型ファイナンシャルプランナー(FP)。

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