株式市場を見る上で、どのような銘柄が物色されているのかを知るには、様々な株価指数を見る必要があります。JPX日本取引所グループは、多くの株価指数を日々公表しています。
最近の業種別株価指数の動きでは、9月上旬の高値をけん引しましたのは、「飲食や不動産、銀行など、日本の物価や金利の上昇、内需回復の恩恵を受ける企業」でした(日本経済新聞9月6日3面より)。9月半ばには、自動車などの主力株にも買いが入りました。
今回は、9月に最高値を更新した東証業種別株価指数・輸送用機器について考えて見ました。まだ上昇が期待できるものと考えます。
業種別株価指数・輸送用機器とは
業種別株価指数について検索してみますと、以下のホームページで詳しく説明されています。(業種とはなに?東証の33業種について解説します – TBL Online Education Center(https://tbladvisory.com/online/2023/04/04/stock-industry-jp/))
輸送用機器は、自動車、航空機、鉄道車両、船舶など、輸送に関する機器を製造・販売する産業。経済成長や需要拡大に伴い、輸送需要が増加すると需要が伸びる傾向があります。世界的な需要の変化、特に新興国での需要の拡大が期待されると株価が上昇する傾向があり、景気後退や自然災害などの影響を受けると、下落する傾向があります。
自動車などを中心に、企業業績への上振れ期待が強まっている。
以下は日本経済新聞9月16日17面の記事です。
「証券大手3社が15日までに主要企業(金融除く)の2023年度の経常利益予想を公表しました。全社が6月発表時点の予想を上方修正し、22年度比で4~7%増える。生産が回復する自動車や客足が戻るレジャー・交通などが上振れする」。
「業種別では、3社とも自動車の利益予想を大きく引き上げた」。円安がプラスになっている上に、野村證券の元村シニア・エクイティ・ストラテジストのコメントとして、「半導体不足の解消による増産効果や車種構成の改善、値上げなどが押し上げる」と取り上げられています。
こうした背景の中で、業種別株価指数・輸送用機器も堅調に推移しています。
最高値を更新た輸送用機器株
ここでは、東証業種別株価指数・輸送用機器の動きとその36カ月移動平均乖離率の推移について示してみました。
業種別株価指数・輸送用機器は小泉政権の郵政解散(2005年8月)後にバブル時の高値を更新しました。その後もアベノミクスの始まった序盤(2015年)に更なる高値を更新し、その後この高値を前に反落する場面もありましたが、ここに来てアベノミクス以降に付けた高値を更新しました。
数年に一度の高値を上抜けるかどうかは、株価をみる上で重要なポイントとなります。株式市場では、株価が上がったところで売りを行う(逆張り戦略を行う)投資家が存在していますので、数年に一度の高値を上抜けるということは利益確定売りを吸収できたことの証明になります。
主だった高値を上抜けた後はその後も上昇しやすいといえるでしょう。アベノミクスの始まった序盤(2015年)に高値を更新した際も、2007年の高値から384の値幅を上方に高値を更新しました。
また、高値を付けてから次の高値をつけるまでのサイクルとして、7~10年程度になる傾向が見て取れます。2023年に最高値を更新したことはこれまでの経験則通りの現象と言えます。
36カ月移動平均乖離率の推移
36カ月移動平均乖離率の推移をみますと、株価が1989年12月高値、2007年2月高値、2015年5月高値をつける前に最も上方に乖離してきました。足元の水準は前述の3つの地点より低い水準にとどまっており、今後はさらに上方に乖離して、株価もさらに上昇することが期待できそうです。
「東証業種別株価指数・輸送用機器」を対象にした75日移動平均乖離率の推移
下図は、最近の東証業種別株価指数・不動産とその75日移動平均乖離率の推移を示したものです。
東証業種別株価指数・輸送用機器は、小規模な反発・反落が多い傾向がありますので、少し長めの75日間の移動平均を使ってみました。小規模な動きに左右されないためです。
日経平均の25日移動平均との乖離率は、一般的に、プラス5%を超えると上昇ピッチが速いとされ、マイナス5%を下回ると下落ピッチが速いと言われますが、最近の東証業種別株価指数・輸送用機器の75日移動平均乖離率を見ますと、プラス20%弱で上昇が止まりやすい傾向があります。また、マイナス20%前後で下落が止まりやすい傾向もあります。
過去の推移を見ますと、プラス20%弱に上昇するようだと、1~2年程度は高値を更新し続けているケースが見られています。足元の水準は、2015年や2022年につけた水準より高くなっています。この点からも、今後上昇が続く可能性がありそうです。
相場でよく見られる高値メドの求め方
市場などでよく上値メドとして取り上げられるものとして、以下のようなものが見受けられます。輸送用機器株の今後の上値メドについて考えました。
過去につけた高値、移動平均線など
足元の輸送用機器株では、これらの水準を既に上回っています。
過去の上昇幅を参考にするもの
N計算値と呼ばれるものは、過去に上昇した値幅が繰り返し見られることを前提にしたものです。
V計算値と呼ばれるものは、過去に下落した値幅の倍だけ下落することを前提にしたものです。
N計算値を求めますと、2001年9月安値から2007年2月高値までの値幅(上昇幅)が2261円。2008年12月安値から2015年5月までの値幅が2644円。
2020年3月安値から足元までの値幅は、すでにこれらの値幅を上回っています。値幅が徐々に長くなっていると考えれば、2020年3月安値から3000円程度上方にある4948あたりが一つの候補になりそうです。
36カ月移動平均のプラス80%の水準など
前述の図で示したように、36カ月移動平均乖離率はプラス80%まで高まり、輸送用機器株はさらに上昇してきました。現在の36カ月移動平均乖離率のプラス80%は5638であり、6000程度までの上昇もあり得ると考えます。
今後の戦略は
今回は、東証業種別株価指数・輸送用機器で2つの移動平均との関係などをとりあげましたが、ここに来て動きが(これまでと)異なるものになってきたと思われます。
過去の上昇場面より優位になっている点が指摘できます。上値メドとして算出した5000~6000あたりを上値メドに想定した買いが有効であると考えます。
投資・運用の参考にしていただければ幸いです。