月別に見たNYダウの騰落状況

株価は、月別などで見るとある程度の傾向が見て取れることがあります。投資の教科書でも、「アノマリー(経験則)」という言葉で述べられることがあります。こうした時間軸で株価の傾向を見ていくことは軽視できないと考えます。

NYダウは、9月中旬に高値をつけた後に下落し、やや軟調に推移しています(10月13日執筆時点)。今回は、過去のNYダウの月別の騰落率はどうであったのか、また各月の動きはその後の推移に影響を与えたのかを中心に調べてみました。その後の推移に影響を与えている月があると思われます。

目次

何度か急落したことがある10月相場

10月のNYダウの平均騰落率は、2001~2010年、2011~2022年で調べたところ、いずれもプラスの数値になりました。

 10月のNYダウの騰落状況は、2001~2010年が7勝3敗で平均騰落率はプラス1.0%でした。2011~2022年が8勝4敗で平均騰落率はプラス2.9%でした。季節的には良好な傾向があります。

一方、表にありませんが、1987年のブラックマンデーは10月に起きました。1987年10月の騰落率は23.2%でした。アジア通貨危機の起きた年(1997年)  の10月はマイナス6.3%でした。

表にあるように、2008年のリーマンショックの時は9月から11月にかけて大きく下落したことが分かります。2008年10月は14.1%の下落となりました。

最近では、2018年10月、2020年10月もある程度の大きさの下落となりました。

1987年の下落や2008年の下落の後にNYダウがさえない展開になったのに対し、2018年や2020年の下落の後はそれほど軟調な動きにはなりませんでした。それぞれの10月の騰落率を見ると、2018年10月は5.1%の下落、2020年10月は4.6%の下落となっていました。

10月は急落することが多いと言えますが、10月の下落率の大きさはその後の調整の長さをある程度示唆していると言えるかも知れません。10月に一定以上の下落をすると調整が長引き、小幅の下落であれば調整は短期に終わる傾向があると思われます。

しかし、ITバブルが崩壊した2000年前後の10月は上昇したように、精度の高い示唆にはなっていないようです。2000年、2001年は9月に大きく下落していました。

11月は上がりやすい傾向があるが、下がると良くない傾向もある

日米の株価指数は秋に安値を付けて、年末にかけて上昇する年がよく見られます。

これは、10月は大手の運用会社が決算を行う時期とされ、手じまい売りが出やすく、10月末を過ぎると新たな買いが入りやすいと言われることが背景になっていると考えられます。 

11月のNYダウの騰落状況は、2001~2010年が6勝4敗で平均騰落率はプラス1.9%でした。2011~2022年が10勝2敗で平均騰落率はプラス2.9%でした。特に2011~2022年で良い傾向があり、この期間では一番パフォーマンスの良い月となっています。

しかし、2000年11月がマイナス5.1%、2008年11月がマイナス5.3%になっていることは気になります。NYダウはその後しばらくして安値をつけました。7-9月期の経済指標や決算発表の内容が明らかになる時期ですので、11月のNYダウが5%以上下落するようだとその後も軟調に推移する可能性がありそうです。

2021年11月にマイナス3.7%となりましたが、2022年1月に高値をつけ、その後は上値の重い展開になりました。昨年11月は上昇しましたが、今年も11月の上がりやすい傾向が見られるのかに注目したいところです。

12月は小幅に上がりやすい傾向がある

12月のNYダウの騰落状況は、2001~2010年が6勝4敗で平均騰落率はプラス1.2%でした。2011~2022年が8勝4敗で平均騰落率はプラス0.5%でした。2001~2010年で良い傾向がありましたが、2011~2022年ではややパフォーマンスが低下しました。

12月の騰落率を見ましても、その後のNYダウの動きには大きく関係していないように思われます。

上昇と下落が混在する1月相場

1月のNYダウの騰落状況は、2001~2010年が4勝6敗で平均騰落率はマイナス2.0%でした。2011~2022年が6勝6敗で平均騰落率はプラス0.5%でした。2001~2010年で悪い傾向がありましたが、2011~2022年ではややパフォーマンスが上昇しました。

1月の騰落率を見ましても、その後のNYダウの動きには大きく関係していないように思われます。

注目したい2月相場

少し先になりますが、2月の騰落率には注目したいと思います。この時期には前年10~12月期の経済指標や各企業の決算が発表され、年末商戦の結果が分かるからです。さらに、来年2月については、米国の金融政策の先行きが見え始める可能性もあります。

2月のNYダウの騰落状況は、2001~2010年が5勝5敗で平均騰落率はマイナス1.4%でした。2011~2022年が9勝3敗で平均騰落率はプラス0.9%でした。1月同様に、2001~2010年で悪い傾向がありましたが、2011~2022年ではややパフォーマンスが良くなりました。

しかし、過去の動きを見ますと、2月のNYダウの動きはその後のNYダウの推移の参考になるのではないかと考えます。

  • NYダウは、2000年に高値をつけましたが、2000年から2003年までの2月はすべて下落となり、この間のNYダウは2000年の高値を更新できませんでした。
  • 2004年から2006年までの2月はすべて上昇となり、NYダウは2007年に高値をつけました。
  • 2007年から2009年までの2月は下落となり、NYダウは2007年につけた高値の水準を何年か回復できませんでした。
  • 2010年から2017年までの2月はすべて上昇となり、その間のNYダウは上がり続けました。
  • 2018年からの2月は上昇する年と下落する年が混在するようになりました。NYダウは下落する場面が目立ち始め、2022年に高値をつけましたが、その後この高値を更新していません。

正確な予測ができるとは言えないものの、2月のNYダウが上昇するか下落するかは、その後のNYダウの動きを予測する上である程度参考になりそうです。

今後のNYダウの見通し

世界の経済情勢を見渡しますと、ウクライナ情勢・中東情勢の緊迫化、中国景気の停滞懸念、米国による金融引き締めとドル高の影響など、見極めたい動きが多くあります。しかし、米国での経済指標を見ますと、今のところ好調なものがみられています。

過去の月別の騰落状況を見る限り、今年11月から来年1月あたりに反発することも期待できそうです。

しかし、11月に下落した場合などではその後の動きには注意をした方が良いと思われます。また、今年の年末商戦の結果や米国での金融政策の方向性が変わる可能性のある2月あたりに新たな方向性が出てくる可能性も少なからずあると考えます。

参考資料としてご活用いただけますと幸いです。

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