金相場・銀相場の動きを振り返り、今後の動きを予想

中東情勢が緊迫していることや、米国で利下げが延期されるとの見方が強まったことから、NYダウをはじめ世界の株式市場は、このところ上値が重くなっています(2024年5月7日執筆時点)。今後も、これらの情勢(中東情勢、米国での金融政策など)を見極めようと、世界の株式相場は上値が重くなる可能性がありそうです。こうした場面で、NYダウに連動しない傾向がある資産として、金相場、銀相場の行方に注目したいと思います。価格の推移(チャート)を見ますと、注目したい点があります。

目次

金とは                    

「金」につきましては、当サイト2023年8月23日掲載の「金相場の動きを振り返り、今後の動きを予想する」で述べました。

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金投資のメリット

  • 安全資産として見られている

金相場は、世界情勢の変化に強く、株安や紛争、テロなどが起きると安全資産として金を買う人が増えるため、価値が上がる傾向があります。

最近では、世界的なインフレや地政学リスクの高まりなどを受けて、安全資産としての金に注目が集まり、金価格の上昇要因になりました。

  • インフレに強い
  • 信用リスクがない(無価値にならない)
  • 価値基準が世界共通

金先物(NY)の推移

ここでは、2003年12月以降、金価格(NY金先物)がどのように動いてきたかを表しました。金価格が高値をつけたのは、リーマンショックの後の2011年、新型コロナウイルスによる悪影響が懸念された2020年などとなっています。つまり、NYダウが強くないときに金は高値をつけてきました。

 2003年あたりからの上昇が特に大きいのは、中国・インドでの金の消費量が増加したことが挙げられます。

今年序盤までは、上値と上値を結んだ線(上値抵抗線)、下値と下値を結んだ線(下値抵抗線)の間での推移となっていましたが、2つのラインが徐々に狭まった後に大きく上昇しました。

上値抵抗線を上抜いた後は、しばらく上昇しやすいと言われることがあります。相場では「三角もちあい上放れ」、あるいは「もちあい放れにつけ」と言った表現で語られることがあります。

 銀とは

(参考:日本取引所グループのホームページ「銀とは」)

金と共に古代から通貨や宝飾品のほか、高級食器の素材としても珍重されてきました。また、金よりも割安で、時折高い投資効率が期待できる状況が発生することから、俗に「貧者の金」と称され、投資用貴金属としても根強い人気があります。

しかしながら、銀の最大の特徴は、工業用金属としての重要性であり、電子工業用部材、太陽光発電パネルの電極材、写真フィルムなどの工業用途に使用されています。そのため、銀の価格は、銀を使用する工業製品の生産量や世界の景気動向の影響を強く受けます。

銀投資のメリット

  • 金と同様に貴金属であり、工業用に利用されており、無価値になることはまずない
  • 金と比べて値動きが大きいため、利益を得るチャンスが多い
  • インフレに強い[敬小3] [敬小4] [敬小5] 

 銀先物(NY)の推移


ここでは、2003年12月以降、銀価格(NY銀先物)がどのように動いてきたかを表しました。銀価格が高値をつけたのは、金価格と同様に、リーマンショックの後の2011年、新型コロナウイルスによる悪影響が懸念された2020年などとなっています。つまり、NYダウが強くないときに高値をつけてきました。金相場と数カ月ずれることがありましたが、高値や安値をつける時期は近くなってきました。

銀価格の過去の高値を見ますと、2011年の高値、2020年の高値と上値を切り下げてきました。一方、下値は2008年の安値、2020年の安値、2022年の安値と下値を切り上げてきました。36カ月移動平均線の前後でよく下げ止まってきたことも読み取れます。

足元は、上値と上値を結んだ線(上値抵抗線)、下値と下値を結んだ線(下値抵抗線)の間での推移から上値抵抗線を上方に動きつつあります。上値抵抗線を上抜けた後は上方にしばらく上昇しやすいと言われることがあります。

金価格は今年、2020年高値を上抜け、過去最高値を更新したのですが、銀価格は今後、2020年高値を上抜けるかどうかが注目されます。

金価格と銀価格の比率の推移


ここでは、1980年からの「金価格÷銀価格」の推移を示しました。2011年4月は金の価格が32倍でしたが、2024年は80倍台での推移が続いています。過去の推移を見ますと、足元の銀価格は金価格に比べて割安な状態になっています。

 理由として以下の2つの点が日本経済新聞2023年10月18日19面に掲載されていました(内容の一部を抜粋)。

  • 金価格に比べて銀価格が相対的に安くなっているのは、工業用向けの用途が5割ほどの銀に比べ、工業用向けの用途が1割ほどの金の方が景気動向の需要に左右されにくいことが原因となっています。
  • 中国を含む新興国の一部でドル離れの動きが起こり、中央銀行が金の買い手となっています。

一方、日本経済新聞4月17日11面、4月23日22面に以下の内容が掲載されていました(内容の一部を抜粋)。

  • 国際エネルギー機関(IEA)の2024年1月の報告によると、2023年の世界の再生可能エネルギーの追加容量は5割程度増加し、このうち4分の3を太陽光発電が占めました。太陽光発電向け需要の拡大などを受けて、2023年の銀の産業用需要は前年比11%増えました。2024年も2023年比で9%増える見通しです。
  • 2024年の総需要は2023年比で2%増える見通しです。
  • 一方、鉱山生産やリサイクルなどの総供給は2023年比で1%減る見通しです。
  • 銀の低迷を長引かせてきた産業用需要に回復の兆しが出ています。最大の消費国である中国で、3月の製造業PMI(購買担当者景気指数)が好不調の境目である50を6カ月ぶりに上回りました。

今後の見通し

金相場も銀相場も、過去の推移を振り返ると、NYダウなど世界の株式相場の上値が重い場面でともに上昇する傾向が認められます。上値抵抗線を上抜けた後に上昇が長く続く可能性も考えられます。特に、銀は貴金属である点で金と共通しており、足元の水準は金と比べて割安な状態になっており、今後の需要が供給を上回るとの報道もあり、今後、有望な資産の一つと考えます。

この記事は投資経済マーケットについて学習および解説をすることを目的に作成されています。 投資や運用の推奨および加入や結果の保証を行うものではございません。 参考資料としてご活用いただき、運用を行う場合は自己責任でお願いいたします。

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