NYダウの動きを振り返り、2024年終盤を予想

NYダウは、2024年7月に史上最高値を更新しましたが、7月末から見られた下落は急速なものでした(8月8日執筆時点)。今回はこの背景について述べた後、これまでの動き(季節的な傾向を含めて)を振り返り、2024年終盤のNYダウの動きについて予想しました。

目次

米経済指標で悪化の兆し

以下は、日本経済新聞8月3日1面の記事から抽出しました。

  • 8月7日に米労務省が発表した7月の雇用統計では、非農業部門の就業者数は前月から11万4000人増えました。市場予想は17万~19万人増でした。失業率も上昇しました。
  • 米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は7月31日の記者会見で、「労働市場がこれ以上冷え込むことは望んでいない」と述べました。これまでは物価抑制を優先してきましたが、今後は雇用の悪化リスクをより慎重にみるという考えを示しました。
  • 雇用が悪化した理由は、新型コロナウイルス禍後に起きた様々な過熱状態が収まったためです。人材の引き合いが弱まり、賃上げの勢いが落ち着き、インフレが高止まりする懸念が薄らぎました。

昨年終盤から見られたNYダウの上昇期間を考ると、コロナ禍からの株価や景気の回復が一服しやすい時期であると言えるかも知れません。

当面は米経済指標を見極める動きになりそう

今後のNYダウの動きを占う上では、米国の経済指標の内容が吟味されて、FRBが利下げをどの程度実施するのか、大統領選挙の行方などが大きな材料となります。

昨年終盤以降のNYダウは、「米国でインフレが鈍化し、景気が減速しても深刻なリセッション(後退)にはならない」との見方を背景に上昇してきました。米景気が軟着陸できるのかを見極めるべく、当面は一定範囲内で推移する可能性が高いと予想します。

NYダウのこれまでの動き(月次)

下図は、NYダウの動きとその36カ月移動平均乖離率の推移を示したものです。36カ月移動平均かい離率の推移を見ますと、20%超にかい離した場面があるとNYダウはその後も上昇してきたことが読み取れます。2021年は3月にプラス23%台までの上方かい離が見られた後、2022年1月に高値をつけました。その後は、プラス20%を超えてかい離することなく、緩やかに上昇しました。

36カ月移動平均かい離率が下方に低下した場面を見ますと、コロナ禍にあった2020年にマイナス13.7%までの低下が見られました。この水準は2000年のITバブル崩壊後、2008年のリーマンショック後に見られた水準よりは上方となりました。

今後は、プラス方向にかい離するのか、マイナス方向にかい離するのか注目したいと思います。

NYダウのこれまでの動き(日次)

下図は、過去5年間のNYダウとその25日移動平均かい離率の推移を示したものです。
矢印で示しましたように、25日移動平均かい離率の水準を切り上げているか切り下げているかは、その後のNYダウを予想する上で参考になりそうです。足元の25日移動平均かい離率の推移を見ますと、目先は弱気と判断されると考えます。

NYダウの季節的傾向

株価は、月別などで見るとある程度の傾向が見て取れることがあります。

今回は、過去のNYダウの月別の騰落率はどうであったのか、また各月の動きはその後の推移に影響を与えたのかを調べてみました。その後の推移に影響を与えている月があると思われます。

2月に上昇したことには良好な経験則がある

2月は、前年10~12月期の経済指標や主要企業の決算が発表され、年末商戦の結果が分かるので重要だと考えています。

過去の動きを見ますと、2月のNYダウの動きはその後のNYダウの推移の参考になるのではないかと考えます。

  • 2000年から2001年までの2月はすべて下落となり、この間のNYダウは2000年の高値を更新できませんでした。
  • 2007年から2009年までの2月はすべて下落となり、この間のNYダウは2007年の高値を更新できませんでした。
  • 2010年から2017年までの2月はすべて上昇となり、その間のNYダウは上がり続けました。
  • 2018年からの2月は上昇する年と下落する年が混在するようになり、動きは複雑になりました。


2月のNYダウが上昇するか下落するかは、その後のNYダウの動きを予測する上で一定の参考になりそうです。

上昇しやすい7月相場

7月のNYダウの平均騰落率は、2001~2024年で調べたところ、19勝5敗で平均騰落率はプラス1.8%と良好になっています。

7月に大きく上昇することにも、良好な経験則があります。リーマンショックのあった翌年の2009年に大きめの上昇率を見せ、その年は年末まで堅調に推移しました。

秋口に冴えない傾向がある

表のように8月、9月の平均騰落率は悪くなっています。夏季休暇を取る投資家がいること、米国の新年度を前に売りを活発化させる投資家がいることが背景になっていると思われます。

 何度か急落したことがある10月相場

10月のNYダウの平均騰落率は、2001~2023年で調べたところ、プラス1.9%と良好になっていますが、急落を何度か見せました。

表にありませんが、1987年のブラックマンデーは10月に起きました。この月の騰落率は23.2%でした。アジア通貨危機の起きた年(1997年)の10月はマイナス6.3%でした。2008年のリーマンショックの時は9月から11月にかけて大きく下落しました。

大統領選挙が行われる年の11月の動きにも注目したい。

今年11月に大統領選挙が行われますが、この月のNYダウの動きにも注目したいと思います。ITバブルが崩壊した2000年、リーマンショックのあった2008年の11月は下落しましたが、2016年、2020年の11月は堅調に推移しました。

今後のNYダウの見通し

今後のNYダウを占う上で、経済指標や金融政策の行方、米国大統領選挙の行方を見極めたいと考える投資家は多いでしょう。

8月から10月までは大統領選挙を控えており、米景気が軟調陸できるのかが分からない状況では、過去の月別で見られた傾向のように上昇を期待しづらい時期がありそうです。しかし、大統領選以降は、政策への期待感が高まり易く、経済見通しで明るさが見え始めれば、上昇する期待が持てそうです。10月、11月の方向性が重要であると考えます。

この記事は投資経済マーケットについて学習および解説をすることを目的に作成されています。 投資や運用の推奨および加入や結果の保証を行うものではございません。 参考資料としてご活用いただき、運用を行う場合は自己責任でお願いいたします。

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