株式相場を見る上で、どのような銘柄が物色されているのかを知るには、様々な株価指数を見る必要があります。JPX日本取引所グループは、多くの株価指数を日々公表しています(JPX日本取引所グループのHP「リアルタイム株価指数値一覧 」で見ることができます)。
各株価指数を見ることによって、物色の傾向などをつかみやすくなります。今回は、「大型株指数」、「小型株指数」、の動きを振り返り、今後の物色の方向について考えてみました。月別に見るとどちらが物色されやすいかなど、いくつかの傾向が見て取れます。
規模別株価指(大型株指数、小型株指数)について
日本取引所グループでは、規模別の株価指数をリアルタイムで算出し、公表しています。これらの指数は、TOPIX(東証株価指数)を補完する指数の一つで、TOPIX構成銘柄を、時価総額と流動性に応じて次の3つの規模別に分類し、それぞれの株価指数を算出したものです。
- 大型株:時価総額と流動性が高い、上位100銘柄(TOPIX100の算出対象)
- 中型株:大型株についで時価総額と流動性が高い、上位400銘柄(TOPIX Mid400の算出対象)
- 小型株:大型株・中型株に含まれない全銘柄(TOPIX Smallの算出対象)
引用:日本取引所グループ・用語集(https://www.jpx.co.jp/glossary/ka/105.html)
大型株指数の推移と36カ月移動平均かい離率の推移
下図は、大型株指数の動きとその36カ月移動平均かい離率の推移です。アベノミクスが始まった初期段階で36カ月移動平均かい離率は47%台をつけ、その後も上昇しました。その後の上昇場面では36カ月移動平均かい離率が20%台をつけて上昇が止まる場面が何度か見られました。
高値から高値まで約3年となる傾向があるようです。この傾向からは2024年後半あたりに高値をつける可能性がありそうです。
小型株指数の推移と36カ月移動平均かい離率の推移
下図は、小型株指数の動きとその36カ月移動平均かい離率の推移です。アベノミクスが始まった初期段階で36カ月移動平均かい離率は45%台をつけ、その後も上昇しました。その後の上昇場面では36カ月移動平均かい離率が20%前後をつけて上昇が止まる場面が何度か見られました。徐々に上方へのかい離率が小さくなっていることが分かります。
高値から高値まで約3年となる傾向があるようです。この傾向からは2024年後半あたりに高値をつける可能性がありそうです。
大型株指数とよく連動しますが、足元の小型株指数の上昇ピッチは遅くなっています。
「大型株指数÷小型株指数」の比率の推移
下図は、「大型株指数÷小型株指数」の比率の推移を示したものです。
図では、この比率の推移に36か月移動平均の推移も示しました。中長期的には、2018年5月に低い水準を付けた後に上昇傾向になっています。この移動平均の前後で低下が止まる傾向、あるいは上昇が止まりやすい傾向があるようです。足元は、36カ月移動平均(2023年12月末値は54%)に近づいては上昇するという動きが繰り返されています。
以下のことが指摘できます。
- リーマンショックが起きた後は、大型株指数の方が大きく下落しました。
- 「アベノミクス」相場が始まり、大型株指数の方が大きく上昇する場面もありましたが、2015年後半から2018年前半は、小型株指数の方が大きく上昇していました。
- 2018年序盤から2021年後半にかけて、小型株指数が横ばいで推移した一方、大型株指数は水準を切り上げました。コロナ禍による影響は小型株指数の上値の重さにつながったもようです。
- 2022年後半からは、いずれの指数も上昇しましたが、大型株指数の方が大きく上昇しました。
足元は大型株指数が堅調
足元は、大型株指数の堅調さが目立っています。これは、東京証券取引所が2023年3月末に企業に株価を意識した経営を要請したことが影響していると思われます。大型株(大型株指数に採用されている銘柄)の方が東証の要請によく応えていると思われます。
一般に外国人投資家は大型株を好むとされ、個人投資家は小型株を好むと言われます。新NISAが2024年からスタートしましたが、今のところは小型株の優位性は大きく出ていません。
東京証券取引所が発表します「投資部門別売買代金差額」(日本経済新聞朝刊・1月13日19面、1月19日19面)を見ますと、今年に入ってからの日経平均株価の上昇は外国人投資家の買いによる部分が大きいことが分かります。
大型株指数、小型株指数の月別の動き
下図は、「大型株指数の月別騰落率」―「小型株指数の月別騰落率」を示したものです。平均は、アベノミクスが本格的に始まった2013年から2018年までの期間、2019年から2023年までの期間で集計しました。
以下のことが指摘できます。
- 2018年以降は、1月、2月、4月、5月、10月、11月、12月に大型株指数の優位性が見て取れます。決算内容が明らかになる時期(4-6月期の発表時である8月を除く)に優勢になっています。特に、1月、11月に大型株への優位性が高まる傾向があります。1月は6年連続、11月は4年連続で優位性が見られています。
- 2019年以降は、3月、6月、7月、8月、9月に小型株指数の優位性が見て取れます。特に9月は小型株への優位性が高まる傾向があるようです。
- 「大型株指数÷小型株指数」の推移は、2018年序盤まで下落し、その後上昇傾向になったことを考えると、1月の騰落率が中長期的な方向性と一致してきました。1月の方向性は「大型株指数÷小型株指数」の動きを示唆していると言えそうです。
今後の戦略
アベノミクス相場で見られましたのは、「上昇の初期段階で大型株がより大きく上昇し、上昇の途中から物色が広がり、小型株指数の方がより大きく上昇した」ことです。足元の動きは、アベノミクスの初期段階に見られた動き(大型株がより上昇しやすいこと)と似ていると言えそうです。
また、これまでの季節的な傾向を参考にしましても、年前半あたりは大型株が優勢に動く可能性が高いと思われます。
しかし、「大型株指数÷小型株指数」の推移を見ますと、2013年、2015年につけた水準に近くなっており、今年半ば以降は小型株指数が優位になる可能性もあると考えます。