15年ぶりの高値を更新した銀行株の動きを振り返り、今後を予想

株式市場を見る上で、どのような銘柄が物色されているのかを知るには、様々な株価指数を見る必要があります。JPX日本取引所グループは、多くの株価指数を日々公表しています。

最近の業種別株価指数を見ますと、「銀行」が堅調に推移しています。今回は、東証業種別株価指数・銀行について取り上げてみました。長期的な基調は変わったと思われます。

目次

最近の業種別株価指数の動き

ここでは、過去1年間の業種別株価指数の推移(一部)を示しました。

2023年からの日経平均株価は、欧米などで金利引き上げの動きが一服したこと、円安による企業業績の回復期待が高まったこと、3月に東京証券取引所が各企業に株価を意識した経営を要請したことなどを背景に上昇しました。

秋には世界的な利上げの影響が懸念され調整する場面もありましたが、年終盤には米国での緩やかな景気拡大、世界的な半導体需要の回復などが確認され、再び堅調に推移しました。

業種別株価指数を見ますと、2023年前半は電気機器や陸運などの上昇が目立っていました。一方、植田日銀総裁が4月に誕生した後、金利上昇がプラスに働く銀行や保険などが大きく上昇しました。

値上げをすると収益が落ちてしまいがちな業種であるサービス業、陸運業の上昇は足元でやや弱いものになっています。

業種別株価指数・銀行とは

東証業種別株価指数(及びTOPIX-17シリーズ)は、東証市場第一部に上場している国内普通株式全銘柄(TOPIXの構成銘柄)を、業種別に区分した株価指数です。

東京証券取引所では、日本株の分類として伝統的に利用されてきた33の業種分類を、投資利便性を考慮して17業種に再編したものをTOPIX-17シリーズとしています。17シリーズの一つが業種別株価指数・銀行で、ETFとして取引されています。

 銀行の経営環境は改善傾向

日銀が発表している貸出・預金動向によりますと、2023年3月に全国の銀行と信金の貸出平均残高が2000年1月の集計開始以来、初めて600兆円を超えました。これは、新型コロナウイルス感染症の影響や原材料高、エネルギー価格の上昇などで企業の資金需要が高まったためです。その後も残高は増え続けています。

また、銀行の経営は、日本銀行による金融政策の影響を強く受けます。金利の上昇が銀行の収益につながるからです。

植田日銀総裁誕生後に上昇

植田和男氏は2023年4月9日、日本銀行総裁に就任しました。前任の黒田東彦氏が主導した大規模緩和(下記を参照)は円高是正や株高に寄与する一方で、市場機能の低下といった副作用があると指摘されているなかでの就任となりました。

大規模緩和とは

日本銀行が黒田総裁のもとで2013年4月から始めた大規模な金融緩和政策です。資金供給量を大幅に増やして人々の期待に働きかけ、デフレ経済からの脱却を目指しました。以下の3つが柱となります。

  1.  長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)
  2. マイナス金利政策
  3. 上場投資信託(ETF)などリスク資産の買い入れ

 植田総裁は、就任後しばらく金融政策の変更に慎重な姿勢を見せていましたが、市場では大規模な金融緩和から金融政策を正常化するとの期待が強まり、3月までさえない動きを見せていた銀行株は上昇し始めました。

2023年7月の金融政策決定会合で、日本銀行は1のYCCの修正に踏み切りました。長期金利の上限の0.5%は「めど」とし、1%を事実上の上限としました。

粘り強く緩和を続ける姿勢を貫いてきた日本銀行の背中を押したのは、国民生活を圧迫している物価高と円安でした。

2024年には、日本銀行が2のマイナス金利政策を解除するのではないかとの観測が強まっています。また、明言はされていないのですが、3のETFの買い入れが最近は行われていないとの観測があります。

今後は、春闘での賃上げの動きが個人消費を押し上げ、企業の設備投資の増加につながるかが見極められるでしょう。

中国経済の減速や米国経済の減速懸念などがあるなかで、日本経済が順調に回復できるかは不透明です。

2008年以来の水準に回復

下図は、東証業種別株価指数・銀行の動きとその36カ月移動平均乖離率の推移です。

 業種別株価指数・銀行は、バブル崩壊後、長期的に下落傾向となってきましたが、小泉政権下、安倍政権下では反発する場面も見られてきました。

昨年からの上昇は、岸田政権下で植田総裁が就任し、金融政策を正常化させるとの見方が上昇要因となりました。

足元の業種別株価指数・銀行は2015年の高値を上抜き、2008年以来の水準まで戻しました。また、36カ月移動平均かい離率も2013年に黒田前日銀総裁が就任した後とほぼ同水準まで上昇しました。

株価指数を見る上では、高値・安値を切り上げたか切り下げたか、移動平均かい離率が水準を切り上げたかどうかは重要なポイントであると考えます。

75日移動平均かい離率の推移

下図は、過去12年間の東証業種別株価指数・銀行と、その75日移動平均乖離率の推移です。 

近年の東証業種別株価指数・銀行の75日移動平均乖離率を見ますと、プラス20%台をつける場面は上昇の途上となってきたことが分かります。

昨年見られた上昇は、アベノミクス当初(2013年)に見られた上昇をしのぐものであったと言えそうです。

これらを見る限り、銀行株の長期的な基調は変わったと考えられます。

 今後高値となりやすい水準

  • 2006年高値から2012年安値までの半値戻しの水準(302)
  • 2015年高値から2020年安値までの倍戻しの水準(395)

今後の戦略は

今回は、東証業種別株価指数・銀行と日本銀行の金融政策とその背景、2つの移動平均との関係などを取り上げました。日本銀行の金融政策の動きや移動平均の動きなどを見ますと、銀行株の長期的な基調は変わったと言えそうです。

今後は、日本経済がデフレ状態を脱却し、日本銀行が更なる正常化に向けて動き出すかが銀行株の行方を左右することになると思われます。

一方で、不透明な点もありますので、高値になりやすい水準などを考えて売買を行うことが有効と考えます。300台後半あたりまでの戻りが期待できると考えます。

この記事は投資経済マーケットについて学習および解説をすることを目的に作成されています。 投資や運用の推奨および加入や結果の保証を行うものではございません。 参考資料としてご活用いただき、運用を行う場合は自己責任でお願いたします。

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