拙著「2倍株・3倍株がぽこぽこ生まれる のんびり日本株投資」(https://amzn.asia/d/06pgwitW)では「避けた方がいいこと」ことを先に列挙したうえで、「やるべきこと」を挙げています。やらない方がいいことを先に避ければ、やるべきことは絞り込まれるという考え方です。「避けた方がいいこと」はここでは省き、「やるべきこと」の一つをベースに拙著で紹介していない銘柄を選んでみました。
今回ご紹介するのはハーモニック・ドライブ・システムズ(東プ:6324)です。
ナンバーワン企業に投資する
拙著の4章では「やるべきこと」を列挙しています。そのうちの一つで誰でも簡単に実践できることとして挙げたのが「各業界のナンバーワン企業を選ぶ」ことです。同業種の中で最も売上高が大きいとか、シェアが高いとかいった企業を「ナンバーワン企業」と定義しています。
「ナンバーワン企業」は手掛けているビジネスが今後もサステイナブルで成長の余地があり、また軟調なマーケットで大きく値下がりしても、株価の回復も早いという特徴があります。日本株に限らず、株価が大きく下がる局面では、多くの投資家が各業界のナンバーワン企業から買っていくことが多いです。
ご紹介するハーモニック・ドライブ・システムズは、将来の需要が拡大すると想定される分野でシェアトップ企業です。
需要拡大が見込まれる産業用ロボット
日常生活でその現場を見ることは稀ですが、日本企業が世界で高いシェアを持つ分野の一つが産業用ロボットです。世界的に労働力不足の解消や製造業の自動化のための手段として、多くの産業用ロボットが活用されています。産業用ロボットの年間世界販売台数は増加傾向にあり、2035年には日本のロボット市場は10兆円規模になるという予測もされています。その中でも特に製造業における産業用ロボットの活用は高いシェアを維持するものと考えられています。産業用ロボット市場におけるメーカーシェアは、世界的に有名なロボットメーカー4社が大部分を占有している状況です。それがファナック、安川電機、ABB、KUKAの4社です。ABBはスイス、KUKAは中国企業です。
ハーモニック・ドライブ・システムズを紹介する前に産業用ロボット市場の現状を挙げたのは、ハーモニック・ドライブ・システムズの主力製品が産業用ロボットに欠かせないものだからです。
現代のロボット化社会の関節の要:減速機
ハーモニック・ドライブ・システムズの主力製品は「減速機」です。産業用ロボットでの減速機の役割は「大きな力を生み出すこと」と「精密に動かすこと」です。産業用ロボットの動力になるのはモーターで「速く回る」ことを得意とします。しかし、重いものを持ち上げるような「強い力(トルク)」を出すには限界があります。そこで「減速機」が必要になります。
減速機の主な役割は4つです。
1)トルク(回転力)の増幅
減速機はギアを使ってモーターの回転速度を落とす代わりに、その力を何十倍、何百倍にも増幅させます。これにより、小型のモーターでも数キロ〜数百キロといった重い荷物を自在に動かせるようになります。
2)停止・位置決めの高精度化
産業用ロボットにはコンマ数ミリ単位の正確な動きが求められます。減速機を介すことでモーターの細かな回転をさらに微細な動きに変換でき、狙った位置でピタリと止める「位置決め精度」が飛躍的に向上します。
3)低速時の安定した動作
モーターは超低速で回そうとすると、カクカクとした振動(コギング)が発生しやすくなります。減速機を使えば、モーター自体は安定して回る速度を維持したまま、ロボットのアームだけをゆっくり滑らかに動かすことが可能になります。
4)装置の小型・軽量化
減速機を使わずに必要なパワーを得ようとすると、巨大なモーターが必要になり、ロボット自体が重すぎて動けなくなってしまいます。小型モーターと高効率な減速機を組み合わせることで、スリムでパワフルなロボットアームになります。
減速機を人間になぞらえるなら「筋肉の力強さ」と「指先の器用さ」を両立させるために欠かせない、ロボットの「関節」の要となる部品です。
産業用ロボットにも多くの用途がある減速機
減速機は我々の生活の身近な場所でたくさん使われています。
インフラ・大型設備――重いものを持ち上げるために大きなトルク(回転力)が必要な場所で欠かせない。
- エレベーター・エスカレーター: 人を乗せて垂直・斜めに持ち上げるために強力なパワーが必要
- スキー場のリフト・ロープウェイ: 多くの人を乗せたワイヤーを力強く巻き上げる。
- クレーン・建設機械: 数トンもの資材を吊り上げるために減速機でモーターの力を増幅させる。
乗り物――スムーズな加速や安全な停止に不可欠。
- 電気自動車 (EV)・ハイブリッド車: モーターの高速回転させることでタイヤを回すための力に変換します。EVには変速機の代わりに減速機が搭載されるのが一般的。
- 電動アシスト自転車: 坂道などで足の力をサポートする際、減速機が使われる。
- 電車の自動ドア: 乗客が挟まれないよう、一定の速度で滑らかに開閉させるために使われる。
- ジェットエンジン:エンジン内部の「タービン(燃焼ガスで回る羽根)」は超高速で回るのが効率的だが、外側の大きな「ファン(空気を吸い込む羽根)」を高速で回しすぎると、空気抵抗や騒音が激しくなり効率が落ちる。 減速機を挟むことで、タービンは速く、ファンは(比較的)ゆっくりと、それぞれ最適な速度で回せるようになり、燃費が劇的に向上。
- ヘリコプター:ヘリのエンジン(ターボシャフト)は毎分万単位の超高速で回転するが、巨大なプロペラ(ローター)をその速さで回すと空中分解してしまう。減速機で回転数を一気に1/100程度まで落とし、その分、機体を持ち上げるための凄まじいトルク(揚力)に変換している。
工場・物流――正確な位置決めと安定した動作を支える。
- ベルトコンベア: 重い荷物を一定の速度で運び続けるために必要です。
身近な家電・設備
- 自動ドア・電動シャッター: 重い扉やシャッターを安全なスピードで開け閉めする。
- 医療機器(手術支援ロボット・CTスキャン): 手術ロボットの精密な動きや、CTのスキャナーを滑らかに回転させるために不可欠。
- 電動ドリル・工具: ネジを締め込む強い力を生み出すために、内部でギアが回っている。
ハーモニック・ドライブ・システムズの減速機の強み
ハーモニック・ドライブ・システムズの主力製品「ハーモニックドライブ」をひとことで表現すると、「他の製品では代替が効かないもの」です。
歯車の遊びが極めて少なく、位置決め精度が非常に高いです。ロボット関節が1mmでもズレると不良品や危険が生じる溶接・組み立て・手術などで必須です。また、モーターの高速回転を大幅に減速しつつ大きな力を得られる。従来の歯車では多段が必要で、大きくなり重くなってしまいます。小型・軽量・コンパクトなので、ロボット関節に複数搭載しても全体を軽く保てます。特にヒューマノイドロボットでは1体あたり従来の6〜10倍の減速機が必要で、重量増が致命的になるため「ハーモニックドライブ」が欠かせません。
既に産業用ロボットのみならず、半導体製造装置、医療・手術ロボット、航空宇宙・宇宙探査機に用いられています。さらに、今後市場拡大が見込まれるフィジカルAI(人型ロボット)では指先や関節の繊細な動きに直結するため、AIが進化しても「物理的な精密動作」は不可欠で、減速機の役割がさらに重要になります。
減速機メーカーはほかにもナブテスコや住友重機などがありますが、製品の大きさなどでハーモニック・ドライブ・システムズとは用途にすみわけがあり、小型・軽量・コンパクト・精度の分野で圧倒的優位な立場にあります。
4月末、TOPIX資金が買う
ハーモニック・ドライブ・システムズは東証スタンダード市場銘柄でしたが、2026年3月1日に東証プライム市場に市場変更しました。筆者はこの銘柄を今年の夏ぐらいに紹介するつもりでした。2026年10月のTOPIXルール変更に伴い、スタンダード市場銘柄でありながら、TOPIXに採用されるだろうともくろんでいたからです。
が、3月1日にプライム市場に市場変更したことで、TOPIXは4月末にハーモニック・ドライブ・システムズを組入れます。4月28日の引けでTOPIX資金が買う銘柄です。

3月3日に4935円の52週高値を付けて以降、株価は軟調に推移していますが、長い目で見れば、2026年3月のマーケット全体の下げでこの銘柄には買い場が来たとも言えそうです。気長に付き合ってみてはいかがでしょうか。


