「失敗しても、生き残れ」――“場づくり”を軸に事業を広げる経営者が語る、起業のリアル

「独立した当時ですか? 正直、何も考えてなかったですね。“会社辞めた、さて何しよう?”みたいな感じでした(笑)」 

そう振り返るのは、デザイン・ブランディング・店舗外観(店構え)・内装・ものづくりまでを一気通貫で手掛ける Bestie Partner 代表・高畠翔吾(たかばたけしょうご)氏です。

Bestie Partner 代表・高畠翔吾氏

現在は「まずは高畠さんに相談しよう」と言われるような、デザインを起点にした“場づくり”を軸に事業を展開しています。

しかし、その道のりは決して順風満帆ではありませんでした。具体的には

  • 一年近い無報酬の大型案件
  • アイデアの盗用
  • 依存していた事業の消滅
  • そして、「誰にも相談できない」という孤独

今回のインタビューでは、そんな数々の修羅場を経験してきた高畠氏に、「なぜ独立したのか」「何が一番苦しかったのか」、そして「これから起業する人に本当に伝えたいこと」を伺いました。

目次

「会社を辞めた。さて何しよう?」から始まった独立

高畠氏が独立したのは2017年。

もともとは百貨店や化粧品・アパレル関連のデザインと事業企画などを行う企業で、新規事業開発部署に所属していました。企画から業者選定、サンプル作成、カタログ制作、営業同行、現場管理までを幅広く担当。少人数部署だったこともあり、自然と「ものづくり全体を見渡す力」が身についていったといいます。

「今の事業の原点は、当時の経験ですね。 企画だけじゃなく、“実際に形にするところまで落とし込む”という感覚は、その頃に鍛えられました」

会社では本部付けの立場となり、経営層に近い場所で働くようになります。 しかし、そこで見えてきたのは、理想的な組織運営ではありませんでした。

役員同士の派閥争い、足の引っ張り合い、社員同士にも波及する空気。

「だんだん、“何のために仕事してるんだろう”って感覚になったんです」

会社自体には恩を感じていた。社内での広い繋がりもあった。
実際、退職時には有志で全国の100人近い社員が、各地で送別会を開いてくれたそうです。

ただ、オーナー企業ゆえに、自身のキャリアにも限界を感じていました。そのうえで上記のような運営体制であったため

「経営幹部候補としての期待は感じていました。有り難かった。でも、その先でゴールとされている副社長や専務という立場に魅力を感じなかったんです。人間関係というより、“ガバナンス”への違和感ですね」

と語ります。
そしてあわせて、「会社員を続けても、結局どこかで同じストレスを抱えるだろう」という感覚があったともいいます。

消去法のようにも見える独立でしたが、高畠氏は当時をこう振り返ります。

「何とかなるだろう、っていう精神でしたね」

遠回りに見えた経験が、全部つながった

独立後、最初から今の形に落ち着いたわけではありません。

  • プロダクト開発
  • 図面起こし
  • Webマーケティング
  • PC教室
  • ECショップ運営

さまざまな事業に関わり、試行錯誤を繰り返してきました。

「今思えば回り道だった部分もあります。でも、失敗とか成功って感覚ではないんですよね」

ECショップではデザインだけでなく、リーダー業務も経験。 その中で改めて感じたのが、「結局、なんやかんやで“手に職”は強い」ということでした。

そして、遠回りをしたからこそ見えたものもあります。

「会社員時代に学んだ“社会人としての基礎”って、実はすごく大きかったです」

例えば、

  • 電話対応
  • 名刺交換
  • 議事録
  • 社内調整

起業界隈では、いきなり独立する人も少なくありません。
しかし高畠氏は、「社会的なイロハ」を会社で学べた価値は大きいと語ります。

「そこが抜けてる人、結構多いんですよね」

しかしその上でも、やはり「やってみて初めて分かったこと」も多いという。

起業した後身をもって学んだ教訓を、具体例として一つ教えてもらいました。

“一年間タダ働き”――大型案件で学んだ現実

これまでで最も大変だった出来事を尋ねると、高畠氏は苦笑いしながらこう答えました。

「いままでなんやかんや、色々騙されました(笑)

中でも大きかったのが、知人経由で参加した大型開発プロジェクトですね。」とのこと。

うまくいけばこの事業だけでなく、今後継続して大きな仕事になる・・・そういった期待を抱き、一年近く全力でコミット。しかし、プロジェクトは自身に責任のないところで頓挫してしまいました。

しかも、その間の報酬は未払い。 対抗しようにも契約書もありませんでした。

「結果的に、一年近くタダ働きになってしまったんです。あれは痛かった。」

別の事例では、クライアント先の組織改変により、担当部署が消滅。それをきっかけに、当時の売上の半分以上を依存していた顧問契約までもが無くなったというケースも。

こちらは未払いこそなかったものの、高畠さんが自己資金を投資するような形で共同事業的に、サンプル開発などを進めていたためダメージは小さくありませんでした。

「退職金や投資収益があったから何とかなりました。でも、創業融資一本で突っ込んでたら、本当に危なかったと思います」

“成功者でも失敗する”――変化した価値観

この経験から、高畠氏の“成功”に対する価値観は大きく変わりました。

それは成功者は失敗しないのではなく、失敗しても大丈夫なように事業を行い、戦い続けているということです。

昔は、成功者に対してこう思っていたそうです。

「成功してる人って、失敗しないんだろうなって」

しかし、実際に起業してわかったのは真逆でした。

「失敗しながら、生き残ってる人が強いんですよ」

事業には必ず浮き沈みがあります。
つらい時期が長く続き、突然売上が跳ねる瞬間が来る。

いわゆる“Jカーブ”です。

「ジャンプする前が、一番しんどい」

だからこそ重要なのは、「成功すること」よりも、「成功するまで退場しないこと」。

「特に若いうちは、無茶できるんですよ。最悪、バイトでも立て直せる。でも年齢や家族が要素に加わってくると、またリスクの許容度が変わる」

だからこそ、高畠氏は一点集中型の「一本足打法」の危険性を強調します。

「一本の大当たりより、“小さく積み上げる” 強さが大事だと思います。大物狙い一本って、やっぱり外した時のリスク高いんです」

もちろん、戦略として一点突破はあります。例えばこれが「専業で事業をやっており、外したら売上が上がらずに生活できない」というのではなく、サラリーマンをやりながら副業的に行っている週末起業・スモールビジネスなら一本足打法も有効な戦略です。

 しかし専業でやっており、生活やメンタルの安定を考えると、一発でのるかそるかの大きな賭けに出るより、小さな仕事を積み重ねながら信頼を広げる方が、長期的には強い。

「いきなりポッと出てきた奴に大口案件って、普通頼まないですよね」

小口案件で信用を作る。
そこから紹介が生まれる。
やがて大きな仕事につながる。

その積み重ねが、現在の事業基盤になっています。

「今も基本、紹介で仕事がつながっています」

さらに重要なのが、“どこで利益を取るか”だけではなく、“どこであえて利益を取らないか”を考えること。

「全部で稼ごうとしない。入口の商品と、本命の商品は分けた方がいいです」

運命を左右する「人を見る目」

そういった事業的なリスク管理をしたうえで、そもそも付き合う人・企業の選別も大事だと語ります。

数々の失敗を経て、高畠氏は人を見る基準も変わりました。

「 “言葉ではなく行動を見ろ” と今は考えています。」

「昔は “何を言ってるか” を重視していました。でも今、重視するのは、“何をやっているか”ですね」

立派なビジョンを語る人。
熱量高く夢を語る人。

そういう人の中にも、「相手と一緒に成長したい」のではなく、「相手を利用したい」だけの人が混ざっているといいます。

特に交流会やコミュニティには、“玉石混合”の世界がある。

「言葉って、信用できないことがあるんですよ。行動が伴ってないと」

だからこそ、普段の小さな振る舞いを見る。

約束を守るか。連絡を返すか。 困った時にどう動くか。

そういう積み重ねに、人間性は表れると語ります。

「普段どれだけ立派なことを言っていたり、口だけで仲間ですよ!と言っていても、トラブルが起きたらさっと離れていく人がいる。」

「そんな人と事業をやってトラブルが起きたら、やけどでは済まないですし、誠意ある対応も見込めないですからね」

小さく積み上げて中長期的な安定と大きな案件を狙う。だからこそ、誰とどこに積み上げていくのかは非常に重要であるという教訓を学んだといいます。

「一人で抱え込まない」が人生を変えた

高畠氏が最も大きな学びとして語ったのが、「助けを求めること」でした。

大きなトラブルが起きた際、誰にも相談できず、一人で抱え込んでいた時期があったそうです。

家族にも言えない。
経営者仲間にも言えない。

そんな中、事情を知っていた数人の知人たちから連絡が入りました。

「話聞こうか?」
「弁護士紹介しようか?」
「仕事回すから、足しにして」

その経験を通じて、「情報開示=リスク」ではないと考え方が変わったといいます。

「むしろ、状況を共有しているからこそ、助けてもらえることがある」

経営者は孤独になりやすい。
しかし、一人で抱えると、自分の知識と常識の範囲でしか答えが出なくなる。

「一般論と、当事者の最適解ってズレることがあるんです」

だからこそ、信頼できる相手とは、普段から情報交換しておくことが大切だと語ります。

「そもそも取材していただいているBFPさんにご相談できたのも、このトラブル以前からお付き合いがあったからでした。詳細は省きますが、とりあえず相談してみよう、となった。ここは、信頼関係ですね。もしかしたら相談しても具体的な解決策は出てこないかもしれない。でも孤独に戦う経営者にとっては、トラブルが起きた時、愚痴を聞いてもらえるだけでも心が落ち着いたりするんです。これは本当に大事だと思います」とのこと。

もちろん、普段から「困った」「助けて」ばかり言っていると周りにはろくな人は残らない。

でも一方で「本当に困ったとき」に相談できる体制と、そのための布石 =「近況報告という名の情報共有」は非常に大事だと語ります。

「ハンドルは自分で握る」という覚悟

この話の流れで印象的だったのが、「幸福」の定義についての話につながった部分でした。

高畠氏はお金や時間以上に、「自分で決められること」を重視しています。

「結局、事業というか人生のハンドルを、自分が握れているかが大事なんですよね」

他人依存の事業は、一見ラクに見える。

しかし、主導権を握れない苦しさがある。

例えば過去の事例で、共同事業で営業を他社に依存した結果、自分ではどうにもできない状況に陥った経験もありました。

「自分で修正できない事業って、すごく苦しいんです」

もちろん、人に頼ること自体は大切。
ただし、“依存”してはいけない。

決断するのは、自分。
責任を負うのも、自分。

その覚悟が、経営者には必要だと語ります。

「熱く動き、誠実に築く」

現在、高畠氏はデザイン単体だけではなく、ブランディングから内装、看板、空間設計までを含めた“場づくり”へと事業を広げています。

単純な価格競争は目指していません。

「クラウドソーシングとは、そもそも競合したくないんです」

安く作るだけなら、他にも選択肢はある。
しかし、「誰に相談するか」という信頼の部分は、属人的な価値になります。

だからこそ、高畠氏は“言行一致”を大切にしています。

「一番信用できない人は、言行が一致していない人。そして、それは商品やサービスでも同じ。100点のモノでも、うまく伝わらなければ、0点にもマイナス100点にもなってしまうんですよ」

現在は、デザインやWebマーケティング領域、家具や内装関係でのパートナー企業も募集中とのこと。

最後に、座右の銘を伺うと、少し照れながら教えてくれました。

「“熱く動き、誠実に築く” です。書道家の方に書いてもらっていて」

遠回りも、失敗も、騙された経験もあった。
それでも、人との信用を積み重ねながら、事業を築き続けている。

その姿勢そのものが、これから起業する人にとって、大きなヒントになるのではないでしょうか。

Bestie Partner 公式サイト

https://www.bestiepartner.com/
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この記事を書いた人

本メディアを運営する「金融商品を売らない投資と財務の専門家」、BFPホールディングスです。

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