移動平均でみる日経平均株価の上昇スピード

日経平均株価は、4月終盤から堅調に推移しています。6月13日には約33年ぶりに3万3000円台を回復しました。最近の日経平均株価の上昇スピードは、過去に日経平均株価が急上昇した場面と比べてどの程度のものなのでしょうか。

今回は、市場参加者によく使われている移動平均に焦点を当てて、考えてみました。また、移動平均を使って売買する方法や、今後の株式投資を行う上でどのようなことに気をつければよいかについても触れてみました。

目次

移動平均について

株価の25日移動平均とは、それぞれの営業日までの直前25営業日での平均値を計算するもので、毎営業日ごとにその数値は変わります。毎日、対象となる25日が変わりますので、「移動平均」と言われます。

グランビルの法則について

移動平均を使って売買する法則として、米国のアナリストであったグランビルの提唱した法則がよく知られています。グランビルは、価格と200日移動平均線の位置関係から8つの投資法則を導きました。買いシグナルとして、次の4つを挙げています。

  1. 移動平均線が下落の後で横ばいになるか上昇基調になったときに株価が移動平均線を上回った場合。
  2. 株価が上昇基調の移動平均線を下回るような場合。
  3. 株価が上昇基調の移動平均線の上にあり、移動平均線に向かって下がり、移動平均線を抜けないで再び上向きに反転する場合。
  4. 株価が下降しつつある移動平均線より下に大きく離れた場合の4つです。

売りシグナルとして、次の4つを挙げています。

  1. 移動平均線が上昇の後で横ばいになるか下降基調になった時に株価が移動平均線を下回った場合。
  2. 株価が下落基調の移動平均線を上回るような場合。
  3. 株価が下降基調の移動平均線の下にあり、移動平均線に向かって上がり、移動平均線を抜けないで再び下向きに反転する場合。
  4. 株価が上昇しつつある移動平均線より上に大きく離れた場合の4つです。 

グランビルは200日移動平均を使いましたが、日経平均株価の動きなどを見ると25日移動平均などを使っても有効に利用できると思います。しかし、この条件だけで売買を行っても、収益を得ることは難しいでしょう。ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)要因と合わせて考えることで、平均収益率を向上させることができると考えます。

各個別銘柄の過去の株価の動きを見て、当てはまってきた移動平均や上記の①から⑧までの手法があるのなら、それらを使うことでパフォーマンスを向上させることが期待できるでしょう。

25日移動平均乖離率について

株式市場では、上昇または下落のスピードが過熱しているかどうか(速過ぎるか)を捉えようとする指標がいくつかあります。よく見かけるものに、株価の25日移動平均との乖離(かいり)率があります。移動平均との乖離率は、各営業日での株価と25日移動平均がどの程度乖離しているかを計算するものです。25日で計算されることが多いのですが、200日などを使うこともあります。25日を使う場合は短期的に過熱していないかが捉えられ、200日を使う場合は中期的に過熱していないかが捉えられます。

株式市場には逆張り戦略を狙っている投資家がいる

株式市場では、株価が下落したところで買い、株価が上昇したところで売りを行う(逆張り戦略を狙っている)投資家が一定程度存在しています(前述のグランビルの法則では、④と⑧の手法を使う投資家になります)ので、各移動平均乖離率が高過ぎる水準をつけていないか、低過ぎる水準をつけていないかを見ることは重要でしょう。

高過ぎる場面では、売りが出やすく、低過ぎる場面では買いが出やすいからです。「高値での買い」や「安値での売り」をするのを避ける方法の一つとして、移動平均乖離率を見ていくことが挙げられるでしょう。

特に、大きな材料が出ていない中で過熱感が出ているときは、過熱感が収まってから売買を行うなどの工夫がパフォーマンスをよくする上で有効となるでしょう。

日経平均株価を対象にした25日移動平均乖離率の推移

下図は、最近の日経平均株価とその25日移動平均乖離率の推移を示したものです。日経平均株価の25日移動平均との乖離率は、一般的に、プラス5%を超えると上昇ピッチが速いとされ、マイナス5%を下回ると下落ピッチが速いと言われます。今年6月14日に、この乖離率はプラス7.44%となりました。日経平均株価の上昇ピッチが速いと見た投資家は多いでしょう。

図は2020年以降となっていますが、この指標をアベノミクスの始まった2013年以降の推移を見ると、10%を超えたのは、異次元の金融緩和政策が打ち出されました2013年の黒田日銀総裁の就任後、消費増税の見送りが決まった2014年の衆議院選挙の直前、米国での景気回復が確認された2020年半ばなどでした。

この3つの場面の前後を除いて7%を超えたのは、第2次安倍政権の誕生直後の2012年末から2013年初め、新型コロナウイルスに対するワクチン開発への期待感が高まった2020年11月、(後の岸田内閣を誕生させることになる)自民党総裁選挙への期待が高まった2021年9月などでした。

大きな買い材料がある場合は、7~10%などの水準まで上がりますが、過去に高い水準を付けた場面と比べて、最近どの程度強い買い材料が出ているかを考えてみることは一つの参考になるでしょう。

今後の日経平均株価の展望は

足元の日本の株価材料を見ると、各企業が資本効率を意識した動きを活発化させていることがプラス材料として存在していると思われます。一方、内外の景気は必ずしも強気に見られているとは言えないでしょう。これは日経平均株価を予想する上で上値を抑える材料になります。

今後の日経平均株価は、強弱材料に反応しやすい展開を予想します。現在は上値を更新し続けている日経平均株価ですが、遠からず「上がったら売り、下がったら買いを行うことが有効になる」展開になると予想します。

個別株に適用する際は

個別株を投資する際も、移動平均、移動平均乖離率を見ていくことは有効と言えるでしょう。ただ、それぞれの銘柄によって当てはまる移動平均は異なりますので、過去の動きを研究しよく当てはまっている移動平均を使うと良いでしょう。


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