NYダウは、2022年1月に高値をつけた後、同年11月に安値をつけ、その後はこの高値、安値の間での推移を続けています。
今回は、NYダウの動きに焦点を当てて、ある程度当てはまっていると思われる2つの移動平均を使って考察してみました。2022年の高値と安値の間での推移がまだ続くのではないかと予想します。
移動平均について
株価の移動平均とは、それまでの一定期間での平均値を計算するものです。毎営業日、あるいは毎月ごとにその数値は変わります。
グランビルの法則について
移動平均を使って売買する法則として、米国のアナリストであったグランビルの提唱した法則がよく知られています。グランビルは、価格と200日移動平均線の位置関係から8つの投資法則を導きました。買いシグナルとして、次の4つを挙げています。
①移動平均線が下落の後で横ばいになるか上昇基調になったときに株価が移動平均線を上回った場合。
②株価が上昇基調の移動平均線を下回るような場合。
③株価が上昇基調の移動平均線の上にあり、移動平均線に向かって下がり、移動平均線を抜けないで再び上向きに反転する場合。
④株価が下降しつつある移動平均線より下に大きく離れた場合の4つです。
売りシグナルとして、次の4つを挙げています。
⑤移動平均線が上昇の後で横ばいになるか下降基調になった時に株価が移動平均線を下回った場合。
⑥株価が下落基調の移動平均線を上回るような場合。
⑦株価が下降基調の移動平均線の下にあり、移動平均線に向かって上がり、移動平均線を抜けないで再び下向きに反転する場合。
⑧株価が上昇しつつある移動平均線より上に大きく離れた場合の4つです。
グランビルは200日移動平均を使いましたが、銘柄(指数)ごとに当てはまった期間を考えて使っていくことが有効ではないかと考えます。この条件だけで売買を行っても、収益を得ることは難しいでしょうが、ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)要因や他のテクニカル分析手法などと合わせて考えることで、平均収益率を向上させることができるでしょう。
NYダウとその36カ月移動平均について
下図は、NYダウとその36カ月移動平均の推移を示したものです。過去にNYダウが安値をつける際に、36カ月移動平均の近くでたびたび下げ止まってきたことが読み取れます。グランビルの法則の②や③が有効であったと言えます。
36カ月移動平均を明確に下回ったのは、2000年のITバブルの崩壊後、2008年のリーマンショック時、2020年の新型コロナウイルスの拡大懸念による下落時、2022年の利上げ開始による景気悪化懸念が高まったときなどでした。足元は、36か月移動平均を下値に推移するのか、下回ってしまうのか微妙なところにあります。
足元の材料を考えますと、FRBの利上げによる悪影響が強く出てしまうのか、あるいは物価の落ち着きと利上げの出口、景気回復への道筋が見えてくるのかによって、方向性が決まりそうです。しばらく、下値では36カ月移動平均線が意識され、上値では2022年高値が意識されやすい展開を予想します。
NYダウが安値をつけやすい時期は?
上図で、NYダウが安値をつけた時期は、2009年、2020年が3月、2002年が10月、2022年が10月となっています。1-3月期決算発表の時期の前、7-9月期決算発表の時期の前後あたりになっています。この現象を参考にしますと、10月あたりに安値をつけやすいことになります。
今後、利上げの出口が見えて景気回復の兆しが見られてNYダウが上昇しやすくなるのは、まだ先になりそうです。来年3月あたりまで待たなければならないかも知れません。
25日移動平均乖離率について
株式市場では、上昇または下落のスピードが過熱しているかどうか(速過ぎるか)を捉えようとする指標がいくつかあります。よく見かけるものに、株価の25日移動平均との乖離(かいり)率があります。移動平均との乖離率は、各営業日での株価と25日移動平均がどの程度乖離しているかを計算するものです。
株式市場には逆張り戦略を狙っている投資家がいる
株式市場では、株価が下落したところで買い、株価が上昇したところで売りを行う(逆張り戦略を狙っている)投資家が一定程度存在しています(前述のグランビルの法則では、④と⑧の手法を使う投資家になります)ので、各移動平均乖離率が高過ぎる水準をつけていないか、低過ぎる水準をつけていないかを見ることは重要でしょう。
高過ぎる場面では、売りが出やすく、低過ぎる場面では買いが出やすいからです。特に、大きな材料が出ていない中で過熱感が出ているときは、過熱感が収まってから売買を行うなどの工夫がパフォーマンスをよくする上で有効となるでしょう。
NYダウを対象にした25日移動平均乖離率の推移
下図は、最近のNYダウとその25日移動平均乖離率の推移を示したものです。日経平均の25日移動平均との乖離率は、一般的に、プラス5%を超えると上昇ピッチが速いとされ、マイナス5%を下回ると下落ピッチが速いと言われますが、最近のNYダウでこの傾向が当てはまっていると言えそうです。最近は動きづらさを表して、上下に乖離しにくい展開になっています。しばらくは、物価水準や金融政策を巡る発言などに左右されながらも、一定範囲内での推移が続く可能性が高いと見ています。
今後の戦略は
今回は、NYダウでの移動平均との関係をとりあげましたが、しばらくは上下に動きづらいと思われます。短期的には上がったら売り、下がったら買いを行う戦略が有効になるものと考えます。
一方で、相場格言には「もちあい放れにつけ」というものもあります。今年のNYダウは2022年の高値と安値の間での推移が続いて来ましたので、今後どちらかの方向が出た際には、ある程度大きな値幅の変動が見られる可能性があります。もちあい放れにつくことも一つの戦略になるではないかと考えます。