東京地下鉄(東プ:9023)が2024年10月23日に東証プライム市場に新規上場しました。社名としては「東京メトロ」の方が通りがいいように感じますので、この記事では「東京メトロ」と呼ぶことにします。
東京メトロのIPO(Initial Public Offering)は大型で、興味を持つ個人投資家が少なくなかったようです。申し込んだ方が少なかったようですね。
一方で、大型で東証プライム市場に上場した銘柄については、IPO以外にも着目すべきイベントがあります。インデックス連動資金の買いです。
IPO銘柄のTOPIX追加ルール
東証プライム市場に新規上場した銘柄は、新規上場日の翌月最終営業日にTOPIXに追加されます。2024年10月23日に東証プライム市場に上場した東京メトロの場合、2024年11月最終営業日にTOPIXに追加されます。実際の取引は1営業日前の引けで行われるので、東京メトロの場合は2024年11月28日の引けでTOPIX連動資金が東京メトロ株を買います。
TOPIXは浮動株ベースの時価総額加重平均株式指数です。
構成銘柄それぞれに「浮動株比率」があります。浮動株比率は大まかに言えば、発行済株式数に占める、取引可能な株式の割合です。この浮動株比率は公表されていません。ただし、明らかになっているルールがあります。
プライム市場に新規上場した銘柄の浮動株比率は、本来の浮動株比率に0.75を乗じた値になります。これを、「調整係数の適用」と言います。
つまり、2024年11月末に東京メトロがTOPIXに追加される際の浮動株比率は、本来の浮動株比率の0.75倍です。
浮動株比率がいつまでも0.75倍かと言われれば、そうではありません。
「浮動株比率の算定方法」によれば、3月1日以降翌年2月末までの間にTOPIXに追加された銘柄は、翌年4月の定期見直し時に調整係数をそのまま適用するか否かが検討されます。
東京メトロ株の場合は、2025年4月の定期見直し時に調整係数の解除の是非を検討されます。解除される基準となるものは、当該銘柄の流動性です。
仮に2025年4月に調整係数の解除が決定した場合、2025年4月最終営業日から、本来の浮動株比率でTOPIXの算出が行われます。
TOPIX連動資金の東京メトロ株買いについては、今後半年程度で2回の可能性があると理解してください。
日経平均株価への採用は?
日経平均株価採用銘柄の定期見直しは年に2回、4月と10月です。
採用銘柄はプライム市場上場に普通株について、流動性が高い銘柄をランキングし、セクターバランスを考慮して決定されます。
流動性は原則5年で計測します。
しかし、この「5年」は例外があるようで、過去に上場から5年経過せずに日経平均株価に採用された例はいくつもありました。
記憶に新しいところでは2022年10月に上場したソシオネクスト(東プ:6526)が2024年4月の定期見直しで採用されています。よって、流動性の計測においては、5年を経過せずに基準をクリアする可能性がありそうです。とはいえ、2025年春に採用というようなスピードにはならないのではないかと考えています。
セクターバランスについては、「運輸・公共」セクター銘柄数と他のセクター銘柄数とのバランスを考慮されることになります。東京メトロ株の時価総額は「運輸・公共」セクターで日経平均株価に採用されている銘柄のいくつかより大きいので、取引が活発になることは大いに考えられ、5年を待たずして日経平均株価に採用されることはあり得ます。
MSCI標準指数への採用は不透明
東京メトロのIPOは発行済株式数の50%程度が売り出されるものでした。
MSCI標準指数は浮動株ベースの時価総額加重平均指数であり、仮に浮動株比率が0.5だと仮定すると、浮動株ベースの時価総額が5,000億円弱ということになります(2024年10月末時点)。
MSCI標準指数に採用されている日本株と比べると、そう遠くない将来にMSCI標準指数が東京メトロを採用する可能性はあるかなぁと感じます。
MSCI標準指数の見直しは2,5,8,11月で、それぞれ前月の中旬から下旬の状況で見直しを判定されます。上場が10月23日だったことを考慮すると、11月の採用は見送られると考えています。今後、株価と為替レート次第では2月、5月ぐらいでの採用は可能性がないわけでもないと考えています。この記事が公開される頃には11月の定期見直しが公表済かもしれません。アナウンスを確認していただきたく存じます。
まとめ
- プライム市場における大型のIPOはインデックス買いも考慮に入れておきたい
- TOPIXは追加と浮動株にルールがある。11月末と2025年4月末に買い需要を見込める。
- 日経平均株価は、早期の採用を想定しづらいが、上場から1年半~2年程度で採用された実績があることを念頭に置いておきたい。
- MSCI標準指数は年4回の見直しを実施している。11月で見送られたら、次は1月中旬から下旬の株価と為替レート次第と考える。