東証スタンダード市場を考察

筆者の投資ポリシーの一つは日本株であれ米国株であれ「原則として中小型株に手を出さない」ことです。

理由はシンプルで、概して言えば大型株の方がパフォーマンスがいいからです。

こちらはTOPIX、東証スタンダード指数、東証グロース指数の2年の推移です。

赤がTOPIX、青が東証スタンダード指数、緑が東証グロース指数です。東証の市場再編が2022年の4月でしたから、長期間の比較を敢えて避けていますが、そのパフォーマンスの違いは明らかです。TOPIXが強いですね。

グラフ, 折れ線グラフ

AI によって生成されたコンテンツは間違っている可能性があります。
出典:マネックス証券

ところが、ごくごく直近だけを見ると少し見え方が違います。

TOPIXが軟調です。

筆者の経験でいえば何年かに一度ですが、中小型株に資金が入る局面があります。日本のグローバル企業株に手を出しづらいような局面が一例です。米国のトランプ大統領の施政に不確実性があると言われる現在は、内需企業が多い中小型株が資金の退避先として選ばれやすくなるのでしょう。

グラフ, 折れ線グラフ

AI によって生成されたコンテンツは間違っている可能性があります。
出典:マネックス証券

近年日本株をけん引してきたのは、大型の半導体関連株などでしたが、昨年の終盤ぐらいから市場の主役が代わってきているようで、大型株が冴えません。先ほどのチャートに紫で東証大型株指数(TOPIXの中の上位100社指数とご理解ください)を加えました。大型株指数がTOPIXに劣後しています。

グラフ, 折れ線グラフ

AI によって生成されたコンテンツは間違っている可能性があります。
出典:マネックス証券

この結果を見て、グロース市場株投資をお勧めはしません。特に東証のグロース市場銘柄は流動性に難があり、手放したいときに手放しづらい銘柄が少なくないからです。投資は出口も大事です。一時的なパフォーマンスだけで投資判断をしないほうがいいと考えます。

今回は東証スタンダード市場にフォーカスを当てます。

目次

東証スタンダード市場を理解する

まずは、東証スタンダード市場を理解しましょう。

スタンダード市場は、2022年4月に実施された東証の市場再編時に、従来の東証二部やJASDAQなどの市場が統合されて誕生した市場です。

スタンダード市場は、プライム市場とグロース市場の間に位置します。

グラフィカル ユーザー インターフェイス, アプリケーション

AI によって生成されたコンテンツは間違っている可能性があります。
出典:JPX website

新規上場基準と上場維持基準はこちらです。プライム市場の基準と比較すると株主数は半分、流通株式数と流通株式時価総額は1割ですので、基準はゆるいです。

テーブル, カレンダー

AI によって生成されたコンテンツは間違っている可能性があります。
出典:JPX website

筆者がマネックス証券のスクリーニング機能を用いて、スタンダード市場上場銘柄数を確認したところ、約1,600銘柄でした。勝手ながら結構多いなと感じました。地域経済を支える企業やニッチな分野で強みを持つ企業が多く上場しており、プライム市場と比較するとグローバル企業は少ないことが特徴です。

また、2022年4月の東証の市場再編以降、プライム市場の上場維持基準に未達な企業が当時の東証一部から鞍替えして、スタンダード市場上場銘柄になったケースも多いです。現在も、上場維持基準については猶予期間中であり、これからもプライム市場の上場維持基準に未達な企業がスタンダード市場へ移行するケースがあるでしょう。

グラフィカル ユーザー インターフェイス, アプリケーション

AI によって生成されたコンテンツは間違っている可能性があります。
出典:マネックス証券

スタンダード市場でも「大型」銘柄は足下で冴えない

東証スタンダード指数とは別に、「東証スタンダードTOP20」という指数があります。東証スタンダード市場に上場する国内普通株式のうち、上場時価総額と流動性を考慮して選定された上位20銘柄で構成される株式指数で、2022年4月の東証市場再編に伴い新設されました。スタンダード市場の「大型」銘柄で構成される指数と理解すればいいと思います。

構成銘柄の定期見直しは8月末を基準として年に1度、10月に実施されます。2024年10月の定期見直し後の採用銘柄は以下の通りです。知名度が高い企業がいくつか散見されます。

テーブル

AI によって生成されたコンテンツは間違っている可能性があります。
出典:JPX website

東証スタンダードTOP20のパフォーマンスを比較してみました。

2月以降TOP20が冴えません。スタンダード市場でも大型が劣後しているのが足下のマーケットのようです。

グラフ, 折れ線グラフ

AI によって生成されたコンテンツは間違っている可能性があります。
出典:マネックス証券

スタンダード市場銘柄を厳選

というわけで、スタンダード市場銘柄なら何でも株価が好調というわけではないことが明らかになりました。ならば、少し目利きをしてみようということで、以下の条件でスクリーニングしてみた結果をご紹介します。スクリーニングはマネックス証券が提供している銘柄スカウターを用い、いずれも2025年3月25日現在です。

  • 市場:スタンダード市場
  • 時価総額:300億円~1,000億円
  • 海外売上高比率:30%以下
  • 過去10期の当期利益増益回数:6回以上
  • 予想PER(会社予想):15倍以下

海外売上高比率は低めの方がトランプ氏等の不確実性のネガティブな影響を受けにくいだろうと考えたため、盛り込んだ条件です。過去10年にはコロナ禍があり、10期連続増益をクリアするのはどんな企業にもシビアな条件だと考えましたので、増益回数は6回以上にしました。

該当したのは7銘柄です(銘柄コード順)

銘柄コード銘柄名海外売上高比率(%)当期利益増益回数予想PER(会社予想)
1909日本ドライケミカル14.388.5
4992北興化学工業21.579.3
6016ジャパンエンジンC18.667.5
6137小池酸素工業23.769.6
6676メルコホールディングス2.266.1
7749メディキット14.6714.4
9368キムラユニティー19.2611.0
出典:マネックス証券銘柄スカウターを元に筆者作成

日本ドライケミカル(1909)は防災領域に特化したエンジニアリング企業です。

北興化学工業(4992)は農薬のメーカーです。

ジャパンエンジンC(6016)は船舶向けエンジンメーカーです。

小池酸素工業(6137)はガス・溶接・切断機械メーカーで、切断機(ガス・プラズマ・レーザー)は国内トップ、世界3大メーカーの1つです。

メルコホールディングス(6676)はITデバイスのメーカーです。2025年4月に商号を「バッファロー」に変更します。

メディキット(7749)は医療機器メーカーです。血管用カテーテルが主力商品です。

キムラユニティー(9368)はトヨタ自動車を主顧客とする自動車産業関連サービス企業です。

筆者は長いこと日本株市場を取引対象にしていますが、実はキムラユニティー以外は初めて知る銘柄でした。普段大型株をウォッチすると、ご紹介したような銘柄は視野になかなか入ってこないので、逆に新鮮な発見をしたように思います。

ここでご紹介した銘柄は、買いを勧めるわけではなく、考え方の一例になればと思って試した結果です。読者様なりに試行錯誤をすれば、もっと興味深い銘柄が見つかるかもしれません。よって、こちらで紹介した銘柄についての投資を検討する際は、自己の責任に基づくことはもちろん、その是非を慎重に判断していただきたく存じます。

本来中小型株投資は株式投資に慣れていない方であれば、決して易しいものではありません。また、購入タイミングを誤ると高値で買ってしまいがちです。一時的に著名になった銘柄にそのような傾向があるように感じます。他人の行動に左右されるのではなく、自分で探す努力が必要でしょう。それが面倒だと思うのであれば、お勧めしません。

よほど覚悟を決めるか、自信を持てる銘柄以外は、適度に利確したほうがいいかもしれません。宝くじを買うような感覚で向き合うべき投資対象かなと個人的には考えています。

URLをコピーする
URLをコピーしました!

この記事を書いた人

大学講師兼投資ライター
システムエンジニア->証券アナリスト->地方公務員->セミリタイアな中小企業の嘱託研究員->大学講師

CFP、FP1級、日本証券アナリスト協会認定証券アナリスト保有。
TOEIC950。MBA取得済。投資歴31年余り。

システムエンジニア時代に投信売買システム、生命保険契約管理システムに携わり、それらのしくみにも精通。
趣味はサッカー観戦(川崎Fサポ)、旅、読書、野菜栽培、フラワーアレンジメント。
がんサバイバーでもある。

目次
閉じる