拙著「2倍株・3倍株がぽこぽこ生まれる のんびり日本株投資」(https://amzn.asia/d/06pgwitW)では「避けた方がいいこと」ことを先に列挙したうえで、「やるべきこと」を挙げています。やらない方がいいことを先に避ければ、やるべきことは絞り込まれるという考え方です。「避けた方がいいこと」はここでは省き、「やるべきこと」の一つをベースに拙著で紹介していない銘柄を選んでみました。
今回ご紹介するのはファナック(東プ:6954)です。
ナンバーワン企業に投資する
拙著の4章では「やるべきこと」を列挙しています。そのうちの一つで誰でも簡単に実践できることとして挙げたのが「各業界のナンバーワン企業を選ぶ」ことです。同業種の中で最も売上高が大きいとか、シェアが高いとかいった企業を「ナンバーワン企業」と定義しています。
「ナンバーワン企業」は手掛けているビジネスが今後もサステイナブルで成長の余地があり、また軟調なマーケットで大きく値下がりしても、株価の回復も早いという特徴があります。日本株に限らず、株価が大きく下がる局面では、多くの投資家が各業界のナンバーワン企業から買っていくことが多いです。
ご紹介するファナックは、2つの分野で世界トップシェアを争っている企業です。売上高の約85%を海外から得ています。
第1の柱:FA事業
世界トップシェアを争う2つの事業の1つ目はFA事業です。世界シェアの約65%を持っていると言われます。FAはFactory Automation=工場自動化のことで、工場で人が行っていた作業を機械やコンピュータ、ロボットによって自動化する仕組みのことです。製品の加工や組立、搬送、検査などを自動化することで、生産性向上や品質の安定化、人手不足への対応を実現します。FAを支える技術には、工作機械を制御するCNC、機械を正確に動かすサーボモータ、工程全体を管理するPLC、産業用ロボットなどがあります。
CNCはコンピュータ数値制御装置のことです。工作機械の動きをコンピュータで制御する装置です。加工位置や速度を高精度に指示し、自動車や機械部品の精密加工を支える「工作機械の頭脳」と呼ばれています。
サーボモータは位置や速度を高精度に制御できるモータです。CNCからの指令に従って工作機械の軸を正確に動かし、ミクロン単位の精密な加工を実現する重要な部品です。
PLCはProgrammable Logic Controllerの略で、工場の設備や機械を自動制御する装置です。センサーやモータと連携し、生産ライン全体を効率的かつ安全に動かす「工場の司令塔」の役割を担います。
ファナックは特にCNCで世界トップクラスのシェアを持ち、世界のモノづくりを支える重要な役割を担っています。CNCは、金属を削ったり穴を開けたりする機械に対して、「どの方向に」「どれくらいの速度で」「どの位置まで動くか」を指示します。人間で例えると、工作機械が「手足」なら、CNCは「脳」にあたります。
例えば自動車をつくる際には、エンジン部品やギア、ブレーキ部品などをミクロン単位の精度で加工する必要があります。そのため、多くの工作機械メーカーがファナックのCNCを採用しています。工作機械メーカーが機械を製造し、その中にファナックのCNCを組み込むことで、高精度な加工が可能になります。
ファナックのFA事業にはCNC以外にも、サーボモータやサーボアンプ、レーザー加工システムなどがあります。ファナックの強みは、CNC・サーボモータ・レーザーなどの主要部品を自社開発し、一貫したシステムとして提供できる点にあります。また、故障が少なく長期間安定して稼働する信頼性の高さも評価されています。工場では24時間連続稼働するケースも多く、機械が停止すると大きな損失につながるため、信頼性は極めて重要です。
顧客は日本だけでなく世界中に広がっています。自動車、航空機、半導体製造装置、医療機器など、高精度な加工を必要とする産業で利用されています。よって特に中国、欧州、米国などの製造業の設備投資動向が、ファナックの業績に大きな影響を与えます。
近年は人手不足や製造業のデジタル化を背景に、工場の自動化需要が世界的に拡大しています。ファナックはIoTやAIを活用し、工作機械の稼働状況を遠隔監視したり、故障を予兆検知したりするソリューションも提供しています。単に機械を動かすだけでなく、「工場全体の生産性向上」を支援する企業へと進化しています。
第2の柱:産業用ロボット
産業用ロボットとは、人間の代わりに工場でさまざまな作業を行う機械のことです。例えば、自動車工場では車体の溶接や塗装、部品の組み立てなどを担当しています。ロボットは決められた動作を正確に繰り返すことができるため、品質の安定化や生産効率の向上に大きく貢献しています。
ファナックの産業用ロボット事業は、工場の自動化を支えるロボットを開発・製造・販売する事業です。現在、ファナックは産業用ロボット分野で世界トップクラスの企業の一つとして知られており、自動車、電機・電子機器、食品、医薬品、物流など幅広い業界で利用されています。世界シェアは約2割程度と言われているようです。
ファナックのロボットは用途に応じてさまざまな種類があり、重い自動車部品を持ち上げる大型ロボットから、小さな電子部品を扱う精密ロボットまで幅広いラインアップをそろえています。また、人と同じような動きをする多関節ロボットや、製品を高速で仕分けするロボットなども提供しています。
特に強みを持つのが自動車産業向けのロボットです。自動車メーカーでは、車体の溶接工程に多数のロボットが使用されています。高温で火花が飛び散る危険な環境でも、ロボットは24時間安定して作業を続けることができます。そのため、世界中の自動車工場でファナックのロボットが活躍しています。
近年は、電子機器の組立、食品の箱詰め、医薬品の搬送、物流倉庫での仕分けなど、人手不足が深刻な分野でロボット導入が進んでいます。特にEC市場の拡大に伴い、物流センターでの自動化ニーズが高まっており、新たな成長分野として注目されています。
ファナックの大きな強みは、ロボットだけでなく、第1の柱であるFA事業で培われたCNCやサーボモータなどの制御技術も自社で保有していることです。ロボットの頭脳となる制御装置から駆動部分まで一貫して開発できるため、高い信頼性と性能を実現しています。また、故障が少なく長期間安定して稼働することも高く評価されています。
さらに、AIやIoTを活用した「スマートファクトリー」への対応も進めています。ロボットの稼働状況をリアルタイムで監視したり、故障の予兆を検知したりすることで、工場全体の生産性向上を支援しています。単にロボットを販売するだけでなく、工場の自動化ソリューションを提供する企業へと進化しているのです。
このようにファナックの産業用ロボット事業は、世界中の工場でモノづくりを支える重要な存在であり、ファナックの成長を支える中核事業の一つとなっています。ロボットを通じて、生産現場の効率化と品質向上を実現し、世界の製造業の発展に貢献しています。
高い営業利益率
日本の製造業はしばしばその利益率の低さを指摘されます。世界一の自動車メーカートヨタ自動車(東プ:7203)の営業利益率は2026年3月期で7.43%と1ケタ台です。しかし、ファナックの2026年3月期の営業利益率は21.42%とトヨタ自動車の3倍近い値です。アドバンテスト(東プ:6857)の44.22%、東京エレクトロン(東プ:8035)の25.58%には及びませんが、FA事業や産業用ロボット事業は世界でのシェア争いが激しい中で20%以上の営業利益率は健闘していると言っていいように思います。
製造業向けフィジカルAIの本命企業
フィジカルAIとは、AIが現実世界の状況を認識し、自ら判断してロボットや機械を動かす技術のことです。生成AIが文章や画像を扱うのに対し、フィジカルAIは工場や倉庫などで実際に作業を行う点が特徴です。
ファナックは、このフィジカルAI時代の有力企業の一つと考えられています。その理由は、産業用ロボットやCNC(工作機械の頭脳)、サーボモータなど、工場自動化に必要な主要技術を幅広く持っているためです。世界中の工場で数多くのロボットや工作機械が稼働しており、豊富な運転データやノウハウを蓄積していることも強みです。
今後、AIがより高度な判断を行えるようになれば、ロボットは人間の指示がなくても作業内容を理解し、自律的に動くようになると期待されています。その際、AIの判断を実際の動作に変えるロボットや制御技術が重要になります。ファナックはまさにその領域で高い競争力を持っています。
一方で、最先端のAIモデルそのものを開発している企業ではないため、フィジカルAI全体の主役というよりは、AIを実際の工場で活用するための重要な担い手といえます。特に製造業向けのフィジカルAI分野では、ファナックは世界でも有力な本命企業の一社と考えています。
5月に高値を付けた株価は6月に入って軟調ですが、言い換えればいい仕込み時が来たとも考えられます。生成AIの次のAI産業銘柄として覚えておきたい銘柄です。



