前回のおさらい
さて、前回の記事では、コインの最大のメリットである「資産保全性」に焦点を当て、いかにコインが「負けにくい投資対象」なのかを説明させていただきました。
今回の記事では、私が考える残りのメリット、
・マーケットインフラが比較的整っている
・為替ヘッジとして利用できる
・保有や運搬のしやすさ
・幅広い価格帯
・趣味と実益を兼ねた投資対象
について、順番に掘り下げていこうと思います。
マーケットインフラ
現物投資をする際、その商品カテゴリーのマーケットインフラが整っているかどうかは非常に大きな問題になってきます。なぜなら、出口戦略(つまり現金化のしやすさ)に大きく関わってくるからです。また、マーケットインフラが整っていることは、価格の安定性や値上がり率にも寄与しますので、参加者にとっては資産構築の戦略が組み立てやすくなります。
では、コインを取り巻くインフラ環境はどうでしょうか?
結論を申し上げると、現物投資先の中では、トップクラスで環境が整っていると考えています。
※引用元 https://www.sixbid.com/ja
※掲載画像は2022.11.03.撮影
例えば、オンラインで開催されているコイン(貨幣)オークション情報を集めた有名なポータルサイトに、SIXBIDというサイトがあります。
こちらを覗いてみると、ほぼ毎日、世界中でオークションが開催されているのがご確認いただけると思います。年間で数えると600以上のオークションが世界中で開催されていると言われています。(少し古い情報なので、現状はもっと増えているかもしれません。)
国内に目を向けても、年に2回開催されている日本コインオークション(https://www.ncanet.co.jp/)や、年4回のフロアオークションと毎月のe-Liveオークションを開催しているオークション・ワールド(https://www.auction-world.co/)を始め、泰星コインオークション(https://auctions.taiseicoins.com/)、銀座コインオークション(http://shop.ginzacoins.co.jp/auction/)など、ざっと有名どころを上げるだけでもかなりの数になります。
また、ここ数年で国内のマーケット参加者も一気に増えてきており、例えばヤフオクやメルカリなどのサイトでも、日々かなりの数のコインが取引されているのが分かります。
※掲載画像は2022.11.04.撮影
それから、鑑定機関の存在も、インフラ整備に大きく貢献しています。
現在のコインマーケットにおいて、世界の2大鑑定機関と言えば、NGC社(https://www.ngccoin.hk/) とPCGS社(https://www.pcgs.com/)です。この2社による数値化されたグレーディングを確認することで、売買する際の価格の目安を知ることができるのです。さらに、鑑定されたコインはスラブと呼ばれる密封されたケースに入れられて記録が残されます。スラブ入りのコインを購入することで、本来初心者には難しいはずの真贋の見極めに関する問題も大部分を解決することができるのです。
現金化できる機会が多く用意されている、保有している商品の価格目安が分かる、偽物掴みのリスクが少ないといったメリットは、そのまま安心感に直結します。現物投資にチャレンジしたいという人にとって、コインは保有者のメンタルに優しく取り組みやすい投資対象と言えるでしょう。
為替ヘッジ
マーケットによって価格が決められている以上、コインも為替レートからは少なくない影響を受けます。これをリスクと捉える方もいらっしゃるかもしれませんが、実はチャンスと捉えることもできるのです。
※2022年9月13日付
※引用元 https://www.pcgs.com/prices/coin-index/pcgs3000
例として、先日ご紹介した、こちらの米国コインのインデックスチャートをもう一度引用します。
2019年10月14日からの3年間で、29.74%の上昇(USDベース)を見せているわけですが、これを日本という位置から見てみると、また違った景色が見えてきます。
2022年9月13日付の米ドル対円相場を確認すると、108.25円。
これに対して、2022年9月13日付の価格は円安に大きく振れており、142.54円です。
(※参考元 七十七銀行 為替相場情報 https://www.77bank.co.jp/kawase/cash.html)
つまり、USD資産を保有していれば、この3年の単純計算で31.68%の利益が上乗せされていることになり、米国コインの価値は日本円ベースに換算すると70.84%上昇したという計算になります。
そして、コインは先述のように、世界中でオークションが開かれています。
国によって人気コインの偏りは多少あるものの、アメリカ・イギリス・ドイツ・スイス・香港など主要なオークションを、その時々の為替の状況を把握しながら選択をしていけば、為替リスクを逆に利幅を増やすためのチャンスに変えることができるのです。
ちなみに、言語の壁の問題でその恩恵を受けることができないと思われる方もいらっしゃるかもしれません。筆者もそう思っていた一人でした。しかし、少し見方を変えれば、コインはグローバル資産と捉えることが可能です。国内の主要オークションも海外からの参加者が増えてきており、海外マーケットの価格に合わせて落札金額が影響を受けることを考慮すれば、少なくとも今のような急激な円安に振れた場合などのリスクヘッジのひとつにはなるでしょう。
保有・運搬のしやすさ
コインは小さく保管がしやすい点も、メリットとして外せません。
例えば、現物資産として思い浮かぶものとして、金塊・絵画・ワイン・スーパーカーなどと比較するとどうでしょうか?保管用のスペース確保や温度・湿度管理などが大変ですし、いざとなった時に持ち運ぶのが大変です。また、紙幣や切手もコンパクトで人気ですが、材質が紙である以上、やはり保管に気を使う必要が出てきます。
しかし、コインは(特にスラブに入っているもの)は環境変化に強い上に、手のひらに乗るコンパクトサイズです。ポケットに入れて、ハンドキャリーで海外に持っていくことも可能です。
この手軽さが、コイン人気を後押ししているのは、間違いないでしょう。
幅広い価格帯
ここまでお話をしてきて、こういう感想を持った方もいらっしゃるかもしれません。
「でも、きっとお高いんでしょ?」
「庶民にはきっと手が出せるものじゃないわ…」
TV通販のようで恐縮ですが、こうお答えさせていただきます。
「そんなことはありません!お安いものもありますよ!」
これは、コインの展示会で、筆者が数年前に実際に購入したものです。価格は2枚とも200円でした。(選定基準は個人的にデザインが気に入ったからです。笑)
また、ヤフオクやメルカリなどを覗いていただくと、1枚あたり100円以下の価格で取引されているコインがあるのもご確認いただけると思います。もちろん、これらのコインがいきなり数か月で数万円になるようなことは考えにくいですが、10年前まではまったく見向きもされていなかったコインが、今では100倍以上の価格で取引されているような事例はたくさんあるのです。そう考えると、投機心がくすぐられる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
さらに、10万円、100万円、1000万円、1億円など、その方の予算に合ったコインが欲しいとなれば、その価格に応じたコインが実際にオークションで取引されているのを確認することができます。
予算が非常に少ない方から潤沢にある方まで、どのフェーズにおいても投資できる対象が見つかる、これはコイン特有のメリットだと考えています。
趣味と実益を兼ねた投資対象
「コインは人生に彩りを与える」
は?何言ってんの?と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、筆者が割と本気で思っていることです。
コインは「手のひらサイズの世界遺産」と呼ばれることがあります。
それもそのはずで、コインの図版とはその国のデザイン力が体現されたものです。その国のトップクリエイターと認められている超一流の彫刻家が依頼を受け、国の威信を背負ってつくり上げるのです。しかも、そうやって生み出された現存数が1枚とか2枚とかいう幻のコインが、(国ではなく)一般のコレクターの手によって保有されていたりするのが、コインの世界なのです。そんなことを想像してみると、そこにロマンを感じる方も少なくはないでしょう。
また、コインの勉強は、イコール歴史の勉強でもあります。
コイン好きの方は、紀元前に現在のトルコ西部に位置するリディア王国で「お金の概念」という、まさに人類にとっての大発明が起こったことは、当然のように知っています。またおそらくそういった方々は、マケドニア王国のアレクサンドロス大王が当時放っていた強烈な輝きを、古代ローマ帝国が示した威厳や当時の人々の暮らしを、神聖ローマ帝国・ハプスブルク家の隆盛と凋落を、当時のヨーロッパに暗い影を落とした宗教戦争と平和への願いを、フランス革命と英雄ナポレオンの登場によって芽生えた国民意識を、大航海時代に入りヨーロッパ各国の手によって新世界が切り開かれていく興奮を、イギリス王家の系譜とストーリーを、少なからず想像しながらコインを手に取ったことがあるはずです。
学生時代に歴史が大の苦手だった筆者が、つたなくも少しずつ歴史の再勉強をし始めているのは、間違いなくコイン収集が影響を与えています。
まったく興味がない方は鼻で笑ってしまうかもしれませんが、夜な夜なコインを眺めながら、ウィスキーをちびちび飲んでいるようなコレクターは案外多いのです(笑)
そして、そういったコレクターの存在が、コイン価格の維持・底上げに貢献しているとなれば、なぜコインが底堅いのかも、うなずいていただけるのではないでしょうか。
デメリット・リスクも理解しよう
さて、少々長くなってしまいましたが、ざっとコイン投資のメリットについて説明させていただきました。ここまで読んでいただいた方の中には、コイン投資を始めてみたいと思われた方もいらっしゃるかもしれません。
しかしながら、何事もコインの形と同じで表があれば裏もあります。次回は、デメリットやリスクについて説明をさせていただきますので、引き続きお付き合いいただけますと幸いです。
まとめ
国内オークションをはじめ、コインを現金化できる機会は案外多い。
鑑定機関によって数値化されたグレーディングが、コインの価値を判断する基準となっている。この仕組みの存在が「投資戦略を組み立てやすい」「偽物掴みのリスクが比較的少ない」といった安心感に繋がっている。
世界中で日々オークションが開かれているため、為替レートを味方に付けることで、より利益幅を増やすことができる。また、円安に急激に振れた場合などのリスクヘッジにも利用できる。
保有や運搬のしやすさも、コイン人気に拍車をかけている。
コインは幅広い価格帯が存在しているため、どのフェーズの人でも予算に応じた投資が可能。
コインは趣味と実益を兼ねた投資対象になり得る。
コイン好き・コレクターの存在が、価格の維持・底上げに貢献している。