日経平均株価は、2024年7月に42,000円台の史上最高値を更新しました。この時点から見ますと、2025年4月まで数千円の下落となっています(4月17日執筆時点)が、水準としては1990年以来の水準を保っています。今回は、建設株について取り上げました。東証業種別株価指数・建設を対象に、バブル期と現在の動きについて比較してみました。
業種別株価指数・建設とは
業種別株価指数について検索してみますと、以下のホームページで詳しく説明されています。(https://tbladvisory.com/online/2023/04/04/stock-industry-jp/)
業種別指数・建設は、住宅や道路、鉄道、空港などの建設を行う業種です。景気の影響を受けやすいのですが、公共事業や大型プロジェクトが進行すると需要が増えます。
建設業界の環境は大きく変化
建設業界を取り巻く環境は大きく変化しました。労働力不足やデジタル化の遅れ、高齢化など、多くの課題を抱えています。さらに、近年、日本では働き方改革が浸透するなど、建設業界は色々な観点から大きな転換期を迎えています。
こうした中で、建設業界ではDX(デジタルトランスフォーメーション)化など新しい取り組みが進められています。1990年前後の建設会社と現在の建設会社では、株価の予測方法などが大きく変わったように思われます。
バブル期に日経平均株価と共に大きく上昇
1980年代後半に大きく日経平均株価が上昇しました。この背景には、好調な経済成長が続いたなかで、プラザ合意に伴うドル高修正の決定があったと言われています。当時の日本銀行は、円高進行を回避するために公定歩合を引き下げました。これにより、預金から土地や株式への投資が活発化し、「バブル景気」が発生しました。
建設株は、日経平均株価と共に大きく上昇しました。
バブル崩壊で日経平均株価と共に大きく下落
日本銀行は、土地の価格の高騰などを受けて、1989年5月から1年半で5回の利上げに踏み切り、日経平均株価は土地の価格と共に大きく下落しました。
建設株は、1990年代に入り日経平均株価と共に大きく下落しました。
これまでの建設株の動き
ここでは、東証業種別株価指数・建設株の動きと日経平均株価の推移を示してみました。

バブル崩壊後の日本経済は、力強さに欠けるなかで、あらゆる問題を受けて本格回復するまで時間を要し、日経平均株価は長く低迷しました。建設株は日経平均株価と共にアベノミクスが始まる(2012年終盤)まで冴えない展開を続けてきました。
アベノミクス以降は多くの業種が上昇しましたが、業種別株価指数・建設は2017年11月に高値をつけ、2023年序盤あたりまで冴えない動きを続けました。今後は新たなステージに入る可能性があると考えます。
建設業界の現状
ここでは、建設業界の現状を示しました。ホームページ「施行のミチ」から抽出しました。
建設投資額の減少
バブル期の1992年は約84兆円に達していた建設投資額は、2011年には約42兆円まで落ち込みました。その後増加傾向にありますが、近年は約70兆円の見込みとなっており、ピーク時に対して約2割減の水準になっています。
資材の高騰・円安
建設業界は、近年、資材の高騰によるコストの上昇に見舞われています。
コロナ後の需要回復による木材や鋼材の価格が高騰する、ウッドショック・アイアンショックで資材不足が続いていたところに、ウクライナ情勢によるエネルギー価格の上昇や急激な円安による資材高騰が加わりました。
増加する建設業界の倒産件数
建設業界では倒産件数が増加しています。背景にあるのは、投資額の減少・資材の高騰だけではありません。人材不足・後継者不足も原因となっています。
今後も一定の需要は続く
住宅やビルといった建築物やインフラは、建てたら終わりではありません。建築物は数十年で老朽化します。定期的なメンテナンスや再建の必要があるため、建設の仕事は途切れることがなく、常に一定の需要があると考えられています。特に今後はバブル期に建てられたビルが改修機を迎えます。
また、地震や洪水といった自然災害による建設物や都市構造の破損も無視できません。自然災害は今後も発生すると想定されており、災害対策が進められています。
前向きな建設需要も見られる
日本企業に前向きな兆しも見られています。停滞が続いた物価や賃金、金利が上がり出したことを背景に、企業は生産性の向上が求められるようになりました。
日本の名目GDP(国内総生産)は、1990年以降、年率でおおむね500兆円台で推移してきましたが、内閣府が今年2月17日に公表した2024年のGDP速報値は609兆円台となりました。けん引役となりましたのは、設備投資です。
人手不足やデジタル化の進展など環境が変化し、企業は「成長分野への投資を進めるべき」との声が聞かれます。
最近、期待されていますのが、生成AIやクラウドサービスの普及です。企業は、データセンターの建設などを進め始めました。
建設業界の課題解決に向けて進められている対策
建設業界では問題を改善するべく働きかけが進められています。今後は、労働者にとって働きやすい環境(残業規制など)が整えられると期待されています。
DXによる業務効率化
建設業界ではDX化が進められています。3次元モデルによる建設生産システムや営業システムの導入、クラウドサービスの利用などのデジタル化は、業務効率の改善や労働者の負担軽減に役立ちます。人手不足が深刻な建設業界では、DX化による恩恵は大きなものとなるでしょう。
国土交通省でも、建設業界の「アイ・コンストラクション」を推進しています。これは、現場の測量から設計、施工、検査、建設物の維持管理までのすべてのプロセスにICT機器を導入し、全体の生産性向上を目指す取り組みで、現場の少人数化が実現します。
今後の見通し
今回は、東証業種別株価指数・建設を対象に、バブル期と現在の動きについて比較してみました。バブル期と現在では、建設業界の環境、建設株を動かす材料などが大きく変わったと思われます。建設業界は、取り組むべき課題が多いのですが、課題をこなせば株価はこれを好感して大きく上昇する可能性を秘めているでしょう。
