株投資と貯蓄型保険に異なる「予想益」と「手間」

資産運用は様々な手段がありますが、どの方法を選ぶかによって異なる「手間」という視点から考えるのも1つの方法です。結果的に手持ちの500万円が10年で600万円になって120%の利益が生まれても、そのために10年間すべての時間と精力を使い果たしては財は残れど意味があるものでしょうか。

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貯蓄型保険が「手間がかからない」といわれる理由

よく保険の営業マンは貯蓄型保険について、株や投資信託ほど手間がかからないからお勧めですよ、という言い方をします。どのような意味でしょうか。

貯蓄型保険は返戻金が申込時にわかるのか

貯蓄型保険の代表格は終身保険です。申込者(保険加入者)による運用が必要ありません。申込時に一定期間加入していればどれくらいの保障が期待できるのか、また途中で解約すればどれくらいの解約返戻金が戻ってくるのかは申込時に明示されています。子どもの教育費確保のために活用する学資保険も、保障性も付加された生死混合保険と呼ばれる養老保険も同様です。契約中に更に内容の良い保険への乗り換えを考えなければ、いわゆる「塩漬け」により資産形成の柱とすることができます。保険会社による「約束した利率は守れませんでした、申し訳ない」が許される世界ではありません。他の運用商品と並べてみて、まず大きな特徴といえます。

株や投資信託は塩漬けにできないのか

一方の株や投資信託は基本的に塩漬けにはしません。もちろん購入時に銘柄を選んで何も手をつけないことは理論上可能ですが、売買のタイミングを精査してこそ最大利益を獲得することができます。職場からの圧力、ではなくて福利厚生の仕組みとしてNISAやiDeCoに取り組んでいる方々にとっても本質的には同様で、最大利益を狙ってこそ両者の仕組みがもつ税制優遇制度も効果を持ちます。

ならば保険を、となりがちですが、ここに注意点が1つあります。終身保険の持つ貯蓄性が、そもそも投資に適したリターンを期待できるものか?という視点です。

貯蓄性保険は投資目的に適さない?

数年前と比較して、終身保険の利率は下がっています。以前は申込以後に払い込んだ保険料の総額(払済保険料総額)を超える返戻金が期待できました(これを100%返戻といいます)。商品によりますが、最近は80%から90%を推移しています。

払済保険料総額が1000万円とすると、返戻金は800万円から900万円です。これを投資信託の成績とすると、決して笑顔でいられるものではないでしょう。生命保険は病気やケガに対する保障性があるため、返戻金の低下イコール商品価値ではありません。とはいえ生命保険以外と常に比べ、パフォーマンス比較をしていくことが大切です。

変額保険と一時払外貨保険という選択肢

これまでの貯蓄性保険の代わりに何が期待できるのか。保険会社では現在、2つの保険に力点を置いています。

1つは変額保険です。まさに投資信託と同様、加入者自身が運用方向を指示して利益を目指す種類のものです。とはいえ株式投資のような頻繁な売買ではなく、何パターンかの運用タイプを見込んだ選択肢のなかから選ぶものになります。

もう1つは一時払の外貨保険です。外国の利率を見込んで現時点のまとまったお金をベットし、利率創出に賭けます。今後円高に戻ってきそうな為替の状況も外貨建てについてはメリットがあります。

一周廻ってつみたてNISAがベストの選択肢では?

変額保険も一時払外貨保険も保障性も付加しているため、純粋な投資商品ではありません。ただ、決してベストアンサーではないのも事実です。

たとえば期限も見える短期的なお金を運用するとして、筆者はまったくフラットな状況で何がいい?と聞かれたら、つみたてNISAを案内します。配当所得が非課税になるというメリットもありますし、自分で銘柄を選べる自由度も短期的にはメリットです。何より、保険の持っている短期間の解約損失が無いのがNISAの特色です。

たとえば教育費のために300万円を貯めたい家族がいるとします。両親の年齢によっては保険は最適解ではありません。短期間での解約に不向きな保険が多いなかで、メリットを得るまでに解約になる可能性があるからです。その意味では短期間の現金化でも十分なメリットを期待できるNISAの方がベターの選択肢といえるでしょう。

ポジションがあってもバランス感覚を失わない専門家を

投資方法と同様に熟慮したいのが投資のパートナーとなる専門家の選び方です。筆者はFP(ファイナンシャルプランナー)としてもいくつかの顔を持っていますが、廻りを見渡していて感じるのは、何よりも大切なのはどこまで客観性を保っていられるかという点だと思います。

たとえば証券の案内で生計を立てていても、時には所有株の維持を進めることができる。保険会社に勤めていても、この場合はベストチョイスは保険ではないと断言することができる。これは決して簡単なことではありません。所属する組織に対しての「強さ」や専門家としての矜持、顧客に対しての信頼感の優先順位など、いくつかの要素があります。当たり前のようですが、決して顧客第一主義に何よりもイニシアティブを持っている専門家ばかりではありません。

顧客は様々な選択肢のなかで、自分に合った方法を見定めていく。その中で専門家の選択と関係も整備されていく。10年前の正解が環境の変化により推奨では無くなるなかだからこそ、そのような「変化」を大切にしていくことが正解を導くことになるでしょう。

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この記事を書いた人

株式会社FP-MYS 代表取締役。

相続×Fintechサービス「レタプラ」開発・運営。2022年夏より金融教育のプロダクト提供。上場企業の多数の執筆・セミナー講師の実績を有する独立型ファイナンシャルプランナー(FP)。

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