日本の「FP」はなぜ中立になれないのか

日本にはお金を収受して悩み事や課題を相談する文化が定着していません。「水と安全はタダ」と言われ久しいですが、筆者はここに「お金の相談」も含まれると考えています。金融機関や税理士などの士業はお金にまつわる相談をお受けしますが、それは自身の守備範囲内での貸付や税務手続きでのマネタイズが確立しているからこそ出来る無料サービスの枠内での話です。筆者が活用している、FP(ファイナンシャルプランナー)の資格も同様だと思います。

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なぜ日本においてFPは保険の販売人なのか

FPにて個人事業主を開業し、法人成りをして株式会社を設立してから2023年で8年目に入ります。とかく感じるのは、日本においてFP=保険の販売者という印象が強いこと。ポジションを明らかにすると筆者は現在保険を販売していますが、独立仕立ての頃は保険の販売だけが回答ではないと敢えて保険販売をしてはいませんでした。

この理由は、ある国内保険の保険会社が販売者のことをライフプランナー(LP)と称しはじめたことに起因すると考えています。ライフプランナーはとても耳障りのいい言葉で、競合を含めた保険業界に一気に浸透しました。またLPを先に取られた競合は、同じく生活全般の相談に応じる資格という意味で、国家資格だったFPという言葉を使い始めます。これによりFPと名乗ると、保険ですか?と定義される流れが確立されたといえます(国家資格の運営側でなぜ商標を取っていなかったのかは気になりますが)。

日本のFPが目指す「中立」とは何か

FPの理想形は資産運用にコモディティ(商品)という言葉があるように、保険や証券、その他諸サービスなどの販売に相談を寄せないことです。たくさんの商品があるなかで保険のメリットを紹介したり、証券が他の運用方法より秀でていると案内したりすることは、時に顧客の不利益を生みます。

では何も商品を売らず、マネタイズは有料相談一本とするFPこそが正解なのでしょうか。筆者はこれも理想形ではないと考えます。現状の仕組みで有料相談に限定するとFPのハードルが上がり、例えるならFPが恵まれた人たちに限定されたサービスとなる可能性があります。諸外国のなかにはお金の相談ができるのは金銭的に恵まれた国のみで、他の所得層は相談料を払えないという国も存在します。その結果当然ながら金融リテラシー・生活リテラシーが最大化し、国や政府への不満に繋がるという構図です。いわばコモディティから遠い代わりに情報格差が発生しており、留意すべき国民間の問題といえるでしょう。

FPが中立になるには既存制度から距離を置く?

現在の仕組みでは、保険や証券などコモディティ寄りでは本当の意味での中立になることは難しいと思います。一部のFPが徹底しているように、「保険も証券も販売しませんというスタンスの徹底」で無ければ、中立を名乗るのは難しいでしょう。

商品を売らず、相談相手を高所得者に限定しない。そのような立ち位置が実現できれば、日本のFP、そして専門家が中立になることが出来ると考えます。ただ、現状はとても高いハードルです。月並みですが国が主導しての相談の仕組みづくりがまずは必要になるでしょう。

こちらも言うは易しですが、相談をする顧客候補もリテラシーを上げることは避けられません。この人は目的があって専門知識を提供しているのかを見定め、それが自分の問題解決になるのかを判断することが大切です。筆者がいま保険を取り扱っているのは、このように顧客の満足度を高める案内ができるようになったと自覚したからです。ならば保険を通じて個人相談を開始しようという考えの変化によるものです。

そのように考えると専門家は信頼の高い人間が生き残ります。そのほかの大多数がどうなるのか。筆者は、10年後にはGoogle先生のアシスタントになると考えています。

10年後の専門家はGoogle先生のアシスタントか

どのような質問にも瞬時で回答する、通称Google先生が登場するまで、専門家は相談者との知識の差を活かして活躍する職業でした。2022年現在もそれは大筋において変わりません。ただ、広範囲の方がGoogleの発信する情報に瞬間的にアクセスできる以上、情報取得力としての差は無くなっています。では10年後、FPの相談業務はどうなっているでしょうか。

可能性が最も高いのはGoogle先生の真贋判断役になること

最も可能性の高いのがこの選択肢です。Google先生の情報量は人間が生まれ持った能力で競争できるものではありません。ただ発信量が多いからこそ、その中には間違いや誤解を生む情報も混ざっています。現在Googleが好きそうな情報を守り、メディアなどにおいて頻繁に表示させるSEOという仕組みがビジネスになっていますが、そのルールも2019年頃から代わり、きちんと専門家が書いた情報を重宝するという方針に転換しています。

また正しくとも、情報を出す場面が誤っているという、いわばタイミングの問題もあります。そしてこれからの時代がどうなるのかの「ヨミ」の部分もまだ人間に優位性があります。相場などの先行きを読むのはAIの登場により置き換わった部分もありますが、完全な立ち位置の置き換わりを危惧するのはまだ先でしょう。

筆者がFPを取得して13年、開業して8年になります。残念ながら、FPの中立性は多くのところで議論される一方で、8年間のあいだで中立議論には答えは出ていないように思います。いま筆者は個人相談も主業務として行っていますので、まずは自分の相談業務として、可能な限りの中立性を掲げていきたいと思います。

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この記事を書いた人

株式会社FP-MYS 代表取締役。

相続×Fintechサービス「レタプラ」開発・運営。2022年夏より金融教育のプロダクト提供。上場企業の多数の執筆・セミナー講師の実績を有する独立型ファイナンシャルプランナー(FP)。

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