日経平均株価は、2024年7月11日に42,000円台の史上最高値を更新しました。この時点から見ますと、2025年3月5日まで数千円の下落となっています(3/6執筆時点)が、水準としては1990年以来の水準を保っています。今回は、バブル期と言われました。1990年前後の日経平均株価と現在の日経平均株価の動きを比較してみました。
バブル期に日経平均株価は大きく上昇
1980年代後半に大きく日経平均株価が上昇しました。この背景には、好調な経済成長が続いたなかで、プラザ合意に伴うドル高修正の協調路線の決定があったと言われています。当時の日本銀行は、円高進行を回避するために公定歩合を引き下げました。これにより、預金から土地や株式への投資が活発化し、「バブル景気」が発生しました。1985年末に12,000円台であった日経平均株価は、1989年末にかけて3倍以上の水準まで上昇しました。

バブル崩壊で日経平均株価は大きく下落
日本銀行は、土地の価格の高騰などを受けて、1989年5月から1年半で5回の利上げに踏み切り、公定歩合を6%まで押し上げました。また、1990年3月に金融機関から不動産会社に対する融資の総量を規制し始めたことから、日経平均株価は土地の価格と共に大きく下落しました。
長年、日経平均株価は冴えない展開に
バブル崩壊後の日本経済は、力強さに欠けるなかで、あらゆる問題を受けて本格回復するまでに時間を要しました。日経平均株価は長期的に低迷しました。
1995年には大幅な円高、1997年にはアジア通貨危機が発生し、日本経済の重石となりました。輸出の減速で景気は悪化し、金融機関の財務状況を圧迫しました。1997年には大手金融機関が破綻するなど、銀行の貸し渋りと金融システム不安がピークに達しました。
小泉内閣の構造改革により、2003年安値から2007年まで上昇する場面がありましたが、2008年には米大手証券会社リーマン・ブラザーズが破綻したことをきっかけに世界中で連鎖的な金融・経済危機が広がりました。
2011年3月には東日本大震災が発生しました。原子力発電所事故の深刻さも重なり、経済の減速が意識されました。
しかし、企業はこの数十年間に不採算事業や余剰設備を廃止するなどして稼ぐ力を高めました。
アベノミクスをきっかけに日経平均株価は大きく上昇
日経平均株価の基調が大きく変わりましたのは、2012年12月に発足した第2次安倍内閣による「アベノミクス」が始まったところです。第2次安倍内閣は、デフレ経済からの脱却を目指し、日本銀行の総裁に就任した黒田東彦氏と共に大胆な金融緩和を柱にした経済政策「アベノミクス」を進めました。海外投資家も日本の変化を好感し、日本株買いを進め、日経平均株価は上昇基調となりました。
ドル円相場は、数十年ぶりの安値水準に
長年、日経平均株価の重石となってきた要因の一つとして、行き過ぎた円高が挙げられます。ドル円相場は1990年に1ドル=150円台でしたが、その後に円高・ドル安が進み、1995年、2011年には1ドル=70円台を付けました。2012年に始まったアベノミクス(大胆な金融緩和)により、ドル円相場はドル高円安基調になりました。2022年以降、米国で利上げが断続的に行われ、一時1ドル=160円台まで円安が進みました。
名目GDPが再び拡大傾向に
日本の名目GDP(国内総生産)は、1980年代まで拡大が続きましたが、1990年代に入ってから伸びは鈍化し、年率でおおむね500兆円台で推移してきました。
アベノミクス以降は緩やかに拡大し、内閣府が今年2月17日に公表した2024年のGDP速報値は609兆円台となりました。けん引役となりましたのは、設備投資です。国内で半導体関連の投資、人手不足に対応するための投資が堅調になっています。また、インフレによる押し上げ効果も大きくなっています。
2025年も国内での賃上げの動きが企業業績を下支えしそう
日本銀行が昨年12月13日に発表した12月の全国企業短期経済観測調査(短観)の業況判断DIでは、製造業が大企業・中小企業ともに改善したのに加えて、非製造業の景況感も改善が示されました。賃上げが消費を支え、価格転嫁の進展も企業業績を下支えしました。
雇用人員判断DIではバブル期以来の人手不足が示されており、企業は待遇を改善して人員を確保しようとする動きが続きそうです。
株価指標で見て足元は割安
株価指標で、株価の割安・割高を示す代表的なものにPERとPBRがあります。
ホームページ「QUICK MONEY WORLD」の「1989年のバブル高値と現在、市場と経済の比較表」によると、バブル期の予想PER、PBRは62.58倍、5.67倍となっています。
一方、日本経済新聞の「マーケットデータ」の欄では、日々の日経平均株価の予想PER、PBRを掲載しています。2025年3月6日朝刊(3月5日時点)に掲載された予想PER、PBRは15.04倍、1.38倍となっています。
つまり、現在の日経平均株価は、業績や解散価値との関係で、バブル期と比較して買われ過ぎていないことが指摘できます。
新NISAを通じた個人投資家の買いの動きが鮮明に
2024年1月に始まった新NISAは、非課税で運用できる期間が恒久化され、個人投資家は長期の資産形成がしやすくなりました。個人投資家によるNISAによる買いは、長く資産形成を目指すもの(短期売買でないもの)が多く、すぐに流出しないでしょう。
今後の課題
今も日本経済には多くの課題があります。その中心に少子高齢化が止まらないことが挙げられます。少数与党である石破内閣は、野党と協議して高校授業料の無償化、税制改正(年収の壁の見直し)などを進めています。各種の政策を通じて経済の足腰を強くしていくことが必要と思われます。
まとめ
バブル期と足元の日経平均株価は、水準こそ近いものになっていますが、足元の日経平均株価がバブル期の日経平均株価と違うところは、名目GDP、企業業績の水準に見合っているところであり、株価指標にそれが表れています。日本経済は課題を抱えていますが、バブル崩壊時とは異なり日経平均株価が長期で低迷する可能性は低いと思われます。
参考:HP「日経平均33年ぶり高値 日本株は復活したか」
