不動産を短期売買する際の税金と注意点について解説!

不動産は毎月の家賃収入だけでなく、売買によって利益を得ることができます。

しかし利益が発生した場合は、譲渡所得税を納税しなければいけません。譲渡所得税は高額な納税額となるため、事前に計算方法を理解しておく必要があります。

さらに売買では税金以外にも必要な費用が発生するため、双方の金額を算出しておかなければ利益が生まれない売買になる可能性もあります。

そこで今回は不動産を短期売買する際の税金と計算方法、必要な費用を紹介します。最後に短期売買する際の注意点を解説するので、不動産の売却を検討している方はぜひ参考にしてください。

目次

不動産の短期売買とは

不動産の短期売買とは、所有してから5年以内に売却することです。不動産を売却して利益が発生した場合に納税する譲渡所得税は5年を境に税率が分かれているためです。5年以内の売却は「短期譲渡所得」、5年以上の保有は「長期譲渡所得」に該当し、以下の表の通り税率に差が生じます。

短期譲渡所得税率(保有期間5年未満)長期譲渡所得税率(保有期間5年以上)
30%15%

納税額を抑えるためには5年以上保有してから売却した方が良いです。とはいえ売却利益に対しての税率であるため、微小な利益であれば大きな納税額にはなりません。さらに築年数が新しい建物は取得費によって利益を大幅に圧縮することが可能です。

譲渡所得税は売却代金の価格設定にも用いられる

譲渡所得税は売却する不動産の価格設定にも用いられます。不動産を建築・購入する方の多くは金融機関からのローンを利用しています。売却時にはローンを完済する必要があり、譲渡所得税に加えてさらに諸費用も支払います。そのため短期売買で利益を残すためには以下の通り支出額より売却価格の方が大きくなければいけません。

売却価格>(支出額:ローン+譲渡所得税+諸費用)

すなわち、ローンと譲渡所得税、諸費用を計算することができれば、黒字となる売却価格を設定できることになります。次の項では取得費を踏まえ、譲渡所得税の計算方法について紹介します。

短期売買する際の税金の計算方法

譲渡所得税は売却代金ではなく、課税対象額に対して税率を掛けた値を納税します。ここでは譲渡所得税の計算方法を紹介します。

譲渡所得税の計算式

譲渡所得税は以下の計算式で算出します。

課税対象額=売却代金-(取得費+譲渡費用)-特別控除額譲渡所得税=課税対象額×税率

譲渡所得税は売却代金から取得費や譲渡費用などを差し引いた金額に対して課せられる税金です。取得費や譲渡費用などの合計額が売却代金より上回っていた場合、譲渡所得税は発生しません。

取得費とは

取得費とは、不動産を取得した際にかかった費用です。土地の購入代金や建築代金、購入時の手数料などが含まれます。ただし建物の取得費は本体価格などから所有期間中の減価償却費を差し引いた金額です。

建物の取得費=本体価格-減価償却費

減価償却費とは、不動産などの固定資産は年々劣化していく考えから、目減りした資産価値分を経費にできる会計上の項目です。減価償却費があることでアパート収入などの所得を抑えることができ、所得税や住民税の節税につながるメリットがあります。

建物の取得費の計算方法

建物の取得費は本体価格から減価償却費を差し引いた金額です。建物の減価償却費は構造や用途、価格や工事内容によって計上できる期間が異なるため、建物ごとによって値が変わります。減価償却費は計上できる期間が建物の構造ごとによって以下の表の通り分かれています。

木造軽量鉄骨造(骨格材肉厚が3mm以下の場合)重量鉄骨造鉄筋コンクリート造
法定耐用年数22年19年34年47年

参照:減価償却資産の耐用年数表

上記の法定耐用年数は住宅や店舗などの建物の場合ですが、事務所などの場合はさらに2年〜3年延長されます。

建物の取得費の計算例

譲渡所得税を計算するうえで肝心な取得費を一例として計算してみましょう。

2,200万円の本体価格の木造住宅を5年経過して売却する場合、取得費は以下の通りです。

  • 1年あたりの減価償却費:2,200万円÷22年=100万円
  • 5年経った減価償却費の合計=100万円×5年=500万円
  • 5年経った際の取得費=2,200万円-500万円=1,700万円

新築時の本体価格の取得費は2,200万円ですが、毎年減価償却分が減少します。すなわち、築年数が経過することで取得費は低くなります。また電気工事や外構工事、給排水工事なども同様に計算しますが、法定耐用年数が5年〜15年など、工事内容によって異なるため注意してください。

譲渡費用に含まれるもの

譲渡費用に含まれるものは、不動産を売却する際にかかる費用です。主に以下の項目が該当します。

  • 仲介手数料
  • 契約印紙代金
  • 広告料
  • 測量費
  • 不動産鑑定料
  • 立ち退き料
  • 解体費用
  • 建物売却に伴う補修費用など
  • 譲渡所得の申告を依頼した税理士への報酬金額

譲渡費用は不動産を売却する際に実費で支払う必要があります。そのためどれくらいの費用になるかを事前に計算しておく必要があります。

特別控除とは

特別控除とは特定の売却を行った場合に適用される控除です。

控除一覧控除額
マイホーム(居住用財産)を売却した場合3,000万円
土地建物を公共事業などのために売却した場合5,000万円
特定土地区画整理事業などのために土地を売却した場合2,000万円
特定住宅地造成事業などのために土地を売却した場合1,500万円
平成21年~平成22年に取得した土地を譲渡した場合1,000万円
農地保有の合理化などのために土地を売却した場合800万円
低未利用土地等を売却した場合100万円

特別控除は控除額が大きい分細かな条件などが定められているため、該当するかのチェックは専門家に依頼しましょう。

短期売買を行う際の注意点

不動産の短期売買で利益を残すためには、譲渡所得税やローン、諸費用の計算にも2点注意することがあります。

保有期間が1月1日時点で計算される

不動産の保有期間は1月1日時点で計算されるため期日管理には注意が必要です。例えば2015年5月15日に取得した不動産を売却する場合、2020年12月31日まで売却していると短期譲渡所得となり高い税率が適用されます。長期譲渡所得税率が適用されるには、2021年1月1日以降で売却する必要があるため、期日管理を行っておきましょう。

売却価格と相場価格に乖離がないかが確認する

譲渡所得税やローンの残債、諸費用などを計算したうえで売却価格を設定しても、相場価格と乖離がないか確認しておくことが大切です。相場価格より高い売買価格に設定するとでは売れない可能性も高いためです。相場価格を知るためには、国交省のWEBサイトである土地総合情報システムの「不動産取引価格情報検索」で取引事例を見ることができます。

まとめ

不動産を短期売買する際は譲渡所得税が課せられる可能性が高いです。税率も30%と高い利率であるため、ローン残債や諸費用などの支出額も加えて計算してから売却価格を設定することが大切です。ただし価格を設定しても相場価格との乖離が大きいと売れない可能性も高く、なおかつ5年以上保有すれば税率は半分になります。不動産の売却を行う際は、タイミングと支出額を計算してから行いましょう。

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