日経平均と株価指標(騰落レシオ)の動き

2024年に入ってからの日経平均株価は、取引時間ベースで38、000円台をつけるなど(2月15日執筆時点)、堅調に推移しています。今回は、日経平均株価の動き、株価指標の動きを振り返り、今後の動きを予想したいと思います。

具体的には騰落レシオに焦点をあてて、日経平均との関係について考えてみました。この指標が高い水準をつけているかを見ることは意味がありそうです。

目次

2024年の日経平均株価の動き

2023年の日経平均株価は、2022年末と比べて7,369円(28%)の上昇となりました。

予想以上に強い米国経済とインフレの減速が見られる中で、米国や欧州での金利引き上げの停止が世界の株式市場の追い風になりました。

2024年に入ってからも、米国では緩やかな景気拡大が続くゴルディロックス(適温)経済の状態が続いています。日本株は、米国経済の好調さ、ハイテク株を中心とした米国株の上昇、円安・ドル高の進行、新たな少額投資非課税制度(NISA)の開始などがプラス材料となっています。

2024年は大型株を中心とした上昇

2024年の日本株は、これまでのところ大型株中心の上昇となっています。日経平均株価が高値を更新する一方で、中小型株は相対的に出遅れており、今後は中小型株に物色が広がるかには注目したいところです。

株価指数以外の株価指標にも注目したい

株式投資をしている方のなかには、日経平均株価やTOPIXのような単なる株価の水準を示す指標だけでなく、他の株価指標などにも注目する投資家がいます。よく取り上げられるのは、売買代金がどの位であったのかなどです。

騰落レシオの計算方法、使い方

今回は、「騰落レシオ」という指標をとりあげます。騰落レシオの計算式は以下となります。

騰落レシオ(%)=(市場全体の過去25日間の値上がり銘柄数÷市場全体の過去25日間の値下がり銘柄数)×100 

上記では「市場全体」としました。2022年4月4日に東京証券取引所の再編が行われたのですが、2022年4月4日以前は「東証一部上場銘柄」の値上がり銘柄数、値下がり銘柄数を対象としていました。現在はプライム市場の全銘柄を使うことが多いようです。

つまり、騰落レシオは、一定期間の値上がり銘柄数を値下がり銘柄数で割ったもので、値上がり銘柄数のほうが多ければ数値は100%を超えてきますし、値下がり銘柄数のほうが多ければ数値は100%を切ってきます。

一般的な使い方として多いのが、騰落レシオが120%を超えてくると買われ過ぎ(過熱)、80%を切ってくると売られ過ぎなどと判断されるものです。

実際の騰落レシオと日経平均株価の推移について

下図は、2020年以降の日経平均株価と騰落レシオの推移を示したものです。
他のメディアなどでは、日経平均採用銘柄で騰落レシオを計算しているところもあり、他のメディアでの数字と異なっている場合があります。

前述の「一般的な使い方」として述べたように、騰落レシオが120%を超えた前後に、日経平均の上昇が終わった場面は実際に見られています。2021年序盤から2023年序盤までの日経平均株価や、2023年半ばから2023年終盤までの日経平均株価のような、上値が重い時期に、騰落レシオは120%を超えた辺りで反落となってきました。(後の岸田内閣を誕生させることになる)自民党総裁選挙への期待が高まった2021年9月などで見られました。

図にはありませんが、日経平均株価が低迷していた「アベノミクス相場の前」などでも同様の現象がみられてきました。

一方、図に矢印をつけましたように、2020年のコロナウイルス感染拡大による懸念が後退した場面、2023年の東京証券取引所による企業への資本効率改善を要請した場面などを見ますと、日経平均株価の上昇の途上で騰落レシオは高水準を付けていたことが分かります。

  1.  2020年6月2日に騰落レシオは150.78%の高水準を付けましたが、その後の日経平均株価は上昇スピードこそ落ちてしまいましたが、上昇基調が続きました。この時期は、米国での景気回復が確認されたことが上昇の原動力となりました。
  2. 2020年12月8日に騰落レシオは153.58%の高水準を付けましたが、日経平均株価は2021年2月16日に30,417円の高値を付けました。この時期は、新型コロナウイルスに対するワクチン開発への期待感が高まったことが上昇の原動力となりました。
  3. 2023年5月に騰落レシオは162.92%の水準をつけ、その後騰落レシオは低下しましたが、日経平均株価は6月半ばまで上昇を続けました。この時期は、円安を背景に企業業績が改善したことや、各企業が資本効率を意識した動きを活発化させたことが上昇要因となりました。

つまり、大きな買い材料(大量の買いを行う投資家)が存在する場合は、騰落レシオが150%を超えますが、そこで日経平均株価の上昇は終わらず、しばらく経ってから上値を付けることがよく見られます。

今後も、騰落レシオが高水準をつけるのかには注目したいところです。この指標が高水準をつけるということは、多くの銘柄に含み益が発生し、他の銘柄への投資余力も大きくなると言えます。

今後の日経平均株価の展望は

2024年の日本株を予想する上で、円安を背景に企業業績が改善していることや、各企業が資本効率を意識した動きを活発化させていることがプラス材料として存在しています。一方、内外の景気は必ずしも強気ばかりではないようです。これは日経平均株価を予想する上で、上値を抑える材料になります。

2023年10-12月期のGDP速報値は、実質の季節調整値で前期比年率0.4%の0.4%となりました。物価高やコロナ禍からの回復が一巡し、消費が下振れました。

2024年の景気回復要因として期待されますのは、春闘で一段の賃上げの動きが示されることです。この動きが個人消費を押し上げるなどの好循環につながれば、日経平均株価にも良い影響を与えるでしょう。

大企業の春季交渉結果がまとまるのは3月中旬となります。各年度の企業業績予想がそろう年前半に日経平均株価は上昇しやすい傾向があるのですが、今回取り上げました「騰落レシオ」の推移などを見ながら、投資を行うことは有効な手段の一つと考えます。

この記事は投資経済マーケットについて学習および解説をすることを目的に作成されています。 投資や運用の推奨および加入や結果の保証を行うものではございません。 参考資料としてご活用いただき、運用を行う場合は自己責任でお願いたします。

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