Xバガーになった株への処方箋

日米ともに株式市場が好調で、個別株投資であっても数年のスパンを経験していればダブルバガー以上になっている銘柄があるでしょう。先日、そのような銘柄を持たれているらしい方からこんな話をされました。

「ダブルバガー以上になった銘柄を買い増しするのに勇気が必要なんですが、どうすればいいでしょう?」

ちょっと前なら、含み損との付き合い方を相談されたものですが、含み益との付き合い方の話をされるなんてちょっと時代が変わったなぁと思いつつ、確かにそのような経験が初めてに近ければ、どうしたらいいものか考えてしまうのも不思議はないなと思いました。

というわけで、今回はXバガー(X≧2)状態の「たっぷり含み益との付き合い方」を考えます。

目次

なぜ含み益に悩むのか?

株式投資をしていれば、「含み益」は歓迎する事象です。損をするために投資をする人はかなり稀でしょう。それにもかかわらず「含み益」状態で悩んでしまう理由を考えてみました。

1.もっと儲かるかも、あるいはそろそろ頭打ちかもと思えてしまう

株価は上がり続けはしませんし、下がり続けもしませんが、信用取引などでなければ下がる方は0以下にはなりませんが、上は天井がありませんから、もっと上がるかもと思えば容易に売れないし、いやそろそろ頭打ちかもと思えば手放した方がいいんじゃないかと考えるわけです。

2.「たっぷり含み益」状態に慣れていない

これは、経験が浅ければ当然のことです。裏を返せば、含み損だって初めて経験するタイミングがあるわけですが、含み損は経験する機会がそれなりにあっても、たっぷり含み益状態を経験する機会は含み損の経験より少ないことが多いからかもしれません。

3.買い増しすると、Xの値が下がって損した気分になる

これは、わかりにくいかもしれないので、簡単な表を用います。

出典:筆者作成

簿価1,000円で100株持っていた銘柄の株価が2,000円になれば、ダブルバガー(評価損益率:100%)です。この時に100株買い増しすると、簿価が1,500円になりますから、株価が2,000円のままなら評価損益率が33.3%になってしまい、評価損益率が低くなったことであまり儲かっていないような気になるということです。メンタルの問題でしょうか。

Xバガー銘柄取引への処方箋

例えばS&P500連動商品への投資であれば、Xバガーであっても資金に余力があるならコツコツ買うのでしょう。それは、長い目で見ればS&P500が上昇すると考える人が多いからだと思います。

翻って、個別銘柄の場合はどうするか。

確かに悩ましいです。たいていの個別銘柄のボラティリティはS&P500のそれより大きいですから、特に下がるときは速いと感じてしまうでしょうか。

このような前提を踏まえて「処方箋」をいくつか考えてみました。

1.そもそも立てた「自分のシナリオ」と照らし合わせる

投資には目的を持つべきです。そんなものなんかなくて儲かればいいんだというのも筋は通っていますが、そのようなスタンスだとどこで見切りをつけるかを決めにくくなります。例えば株主優待が目当てで保有している(この保有目的を積極的に肯定しませんが、それを楽しみに株式を保有する人の気持ちは理解できますし、筆者も結果的にそのような銘柄を持っています)のであれば、株主優待が変更される・廃止されるまでは売らないというのも一つのシナリオです。

あるいは最初から売却するときのリターンの水準を決めておくのも一つのシナリオです。もし、Xバガー銘柄に対するシナリオが無いのであれば、今からでもいいので考えて立ててほしいです。

手前味噌ですが、拙著の6章でご紹介した銘柄には「売るとしたらこんな状態の時」と言うコメントを入れています。参考になれば幸いです。

「2倍株・3倍株がぽこぽこ生まれる のんびり日本株投資」

2.株価の成長を客観的に期待できると考えるなら、買い増しする

それがわかれば苦労はしないんだよと言われそうなので、もう少し踏み込みます。

筆者なら、同業他社比較をPERや株価の騰落率などで比較して、相対的に見てすでにだいぶ高いと考えるならば無理に買い増しはせず、場合によっては手放すと思います。

また、筆者はあまりやりませんが特に中小型株が短期間で急激に出来高の増加を伴って上昇したような場合はダブルバガーぐらいで手放すことが多いように思います。

3.別の証券会社口座で買い増しする

XバガーのXの値を大きく下げたくないならばという話ですが、別の証券会社で買い増しすれば、もともと保有していた証券会社の口座でのXが大きく変わることはありません。ただし、NISA口座で買おうと考える場合、NISA口座は一つしか持てませんから、別な証券会社で保有した場合にはどちらかの保有分が必ず課税口座での保有になります。

4.わざと心理的に売りやすいような買い方をする

例えば、最初から2単元以上買い、ダブルバガーになったら1単元は売却して、もう1単元は保有し続けるみたいな話です。ただし、値がさ株であれば、それなりの資金力が必要になり、場合によっては難しいですね。

筆者がよくやるのは、単元未満株で保有し、利が乗ってきたら単元未満分の全部あるいは一部だけ売ることです。値がさ株であれば単元未満株だけで保有し、例えば3株だけ売るなんてことをやりますし、単元+単元未満で保有して、利が乗ってきたら単元未満部分だけ売るということもやります。「とりあえずちょっとは利益確定できた」というメンタルの安心を得る手段とでも言えばいいでしょうか。単元未満株は様々な制約がありますが、使い方によっては便利なものでもあります。

自分でタイミングを選べない制約がありますが、分割されたら一部売るというのも一つの手段です。分割されて株主優待の条件が結果的に変わらないから売れないみたいなこともあるかもしれませんが、そのような制約が無いのであれば、とりあえず結果的に半分、1/3を売るという形で利益確定してもいいでしょう。

個別銘柄をいつ手放すかというのはいつの時代も難しい命題ですが、これも経験がものをいうと筆者は考えています。手放すことに慣れるとでも言えばいいでしょうか。そういう意味では、米国の個別株は1株単位で取引できますし、株主優待制度と無縁ですから、保有期間の制約もない点で、日本株と比較すると含み益と付き合いやすいアセットだなぁと感じます。

とはいえ、含み益というものはありがたいものですね。ありがたいからこそ上手に付き合いたいものだとも感じます。

URLをコピーする
URLをコピーしました!

この記事を書いた人

大学講師兼投資ライター
システムエンジニア->証券アナリスト->地方公務員->セミリタイアな中小企業の嘱託研究員->大学講師

CFP、FP1級、日本証券アナリスト協会認定証券アナリスト保有。
TOEIC950。MBA取得済。投資歴31年余り。

システムエンジニア時代に投信売買システム、生命保険契約管理システムに携わり、それらのしくみにも精通。
趣味はサッカー観戦(川崎Fサポ)、旅、読書、野菜栽培、フラワーアレンジメント。
がんサバイバーでもある。

目次
閉じる