拙著「2倍株・3倍株がぽこぽこ生まれる のんびり日本株投資」(https://amzn.asia/d/06pgwitW)では「避けた方がいいこと」ことを先に列挙したうえで、「やるべきこと」を挙げています。やらない方がいいことを先に避ければ、やるべきことは絞り込まれるという考え方です。「避けた方がいいこと」はここでは省き、「やるべきこと」の一つをベースに拙著で紹介していない銘柄を選んでみました。
今回ご紹介するのはフクダ電子(東ス:6960)です。
ナンバーワン企業に投資する
拙著の4章では「やるべきこと」を列挙しています。そのうちの一つで誰でも簡単に実践できることとして挙げたのが「各業界のナンバーワン企業を選ぶ」ことです。同業種の中で最も売上高が大きいとか、シェアが高いとかいった企業を「ナンバーワン企業」と定義しています。
「ナンバーワン企業」は手掛けているビジネスが今後もサステイナブルで成長の余地があり、また軟調なマーケットで大きく値下がりしても、株価の回復も早いという特徴があります。日本株に限らず、株価が大きく下がる局面では、多くの投資家が各業界のナンバーワン企業から買っていくことが多いです。
ご紹介するフクダ電子は、心電計の国内トップメーカーです。
「強固な関係」が参入障壁
フクダ電子(6960)は、心電計を中心とした医用電子機器メーカーです。1939年の創業以来、循環器・呼吸器領域に特化して事業を展開してきました。特に心電計分野では国内で過半のシェアを持ち、医療現場における存在感が非常に大きい企業です。フクダ電子が心電計で国内過半シェアを築いた理由は、長い歴史の中で培ってきた技術力に加え、全国規模の販売・保守網や医療機関との強固な関係が組み合わさり、後発企業が簡単には追いつけない競争力を形成しています。
同社の強さの原点は、日本で心電図検査が普及する初期段階から市場に参入していたことです。1939年の創業以来、心電計を中核事業として技術開発を続け、1951年には国産初の「熱ペン直記式心電計」を開発しました。1950年代には国立病院や国立療養所への一括納入も実現しており、日本の医療現場に心電計が普及していく過程で早くから確固たる地位を築きました。
しかし、フクダ電子の本当の強みは、心電計を「売って終わり」にしなかったことにあります。1953年から全国の主要都市に営業拠点を設け、アフターサービス体制を整備してきました。現在では全国200カ所以上に営業・サービス拠点を展開し、製品販売だけでなく、定期点検や修理、緊急時の対応まで手掛けています。患者の生命に関わる医療機器では、故障時に迅速に対応できることが極めて重要です。そのため「製品性能+営業担当者+保守サービス」が一体となった仕組みそのものが、強力な参入障壁となっています。扱うものが精密機器ですから、保守・消耗品・更新需要が定期的に発生し、安定的な営業キャッシュフローを産む力を持っています。医療機器界のサブスクモデル構築済とでも言えばいいでしょうか。
また、医療現場との距離の近さも指摘しておくべき点です。同社は大学病院やクリニックなどから医師や医療従事者の要望を集め、それを製品開発へ反映してきました。「多くの医療機関で使われる→現場から改善点が集まる→製品を改良する→さらに使いやすくなる→採用が広がる」という好循環が形成されています。心電計そのものは競合企業にも開発できますが、全国の医療機関との接点とサービス網を何十年もかけて構築することは容易ではありません。また、医師や検査技師にとって、長年使い慣れた医療機器を他社製品へ変更する負担は小さくありません。80年以上にわたって蓄積してきた顧客との関係が他社の参入を容易にせず、スイッチングコストを高くしたのです。
技術面でも、1970年代には心電図の自動解析技術を実用化し、その後も小型化、デジタル化など心電計の進化を支えてきました。現在ではAIを利用し、12誘導心電図から発作性心房細動のリスクを推定する技術にも取り組んでいます。
さらに、心電計で築いた顧客基盤を生体情報モニター、血圧脈波検査装置、AED、ペースメーカー関連機器、在宅医療機器などの販売につなげられる点も強みです。クリニックの開業支援も手掛けており、医師との接点を入口として幅広い医療機器を提案できます。
海外事業は小さいことは諸刃の剣
国内では強さを見せますが、海外売上高は全体の2.5%程度と非常に少ないです。
前述したとおり、フクダ電子の大きな強みは、日本全国に張り巡らされた営業・サービス網です。各都道府県に少なくとも1カ所以上の営業拠点を配置し、病院や診療所に対して医療機器を販売するだけでなく、保守・点検、買い替え、さらにはクリニックの開業支援まで長期間サポートしています。つまり、単に心電計を製造して代理店に販売するメーカーではなく、「製品+営業網+保守網+医師との信頼関係」までを一体として提供していることが強みです。
一方、この強みを海外で再現するには、国ごとに販売・サービス網を整備し、それぞれ異なる医療機器規制や認証制度、医療制度、商習慣にも対応する必要があります。このため、国内で成功したビジネスモデルをそのまま海外へ展開することは容易ではありません。
一方で、売上の大部分を国内市場で稼いでいますから、為替変動、とりわけ円高への耐性が比較的高い企業と考えられます。海外売上比率が非常に小さいので、円高が進んでも、海外売上の円換算額が減少する影響は、自動車や機械、半導体など海外売上比率の高い輸出企業と比べて限定的です。さらに、海外から製品や部材を調達しているので、円高が輸入コストの低下、つまり原価低減につながる可能性があります。多くの精密機器メーカーが、海外で稼いでいる近年では珍しい特徴を持つ企業です。
ファンダメンタル考察
中長期的な業績を見通すと、国内人口の高齢化に伴う循環器・呼吸器疾患の増加が追い風になると考えられます。特に、従来型の心電計に加え、ホルター心電計や長時間モニタリング、在宅医療、AIを活用した心電図解析など、新たな医療ニーズの拡大が期待されます。
一方、売上の大部分を国内市場に依存しているため、人口減少が進む日本で大幅な売上成長を続ける企業というより、国内での高いシェアを背景に安定した利益とキャッシュを生み出す企業として捉えるべきでしょう。
財務基盤は強固で、2026年3月末の自己資本比率は83.8%、現金・預金は約607億円に達します。年間配当も2026年3月期に230円へ増配し、10期連続増配中で、2027年3月期も230円を維持する計画です。急成長企業ではありませんが、国内で築いた競争力と高い収益性を維持しながら、AI、長時間心電図、在宅医療などを新たな成長分野として、着実な成長を目指す企業といえるでしょう。
短期的に買い需要を見込める
これまでとは違う視点でフクダ電子を考察します。
TOPIX(東証株価指数)は、第2段階の見直しが進められています。大きな変更点は、銘柄選定についてプライム・スタンダード・グロースの全市場を対象とすることです。そのうえで、年間売買代金回転率や浮動株時価総額など、企業規模と株式の流動性を重視して構成銘柄を選びます。

新ルールによる初回の定期入替は2026年10月に予定されており、条件を満たせばスタンダードやグロース市場の企業もTOPIXに採用される一方、現在の採用銘柄でも基準を満たさなければ除外される可能性があります。
フクダ電子は現在、東証スタンダード市場に上場していますが、前述したTOPIXのルール変更によって新規採用候補として注目されています。スタンダード市場の中では比較的時価総額が大きいため、新TOPIXへの採用候補として意識されている銘柄の一つです。仮に採用されれば、TOPIXに連動するETFや投資信託、年金などの運用資金から機械的な買い需要が発生します。つまり、「TOPIX改革→スタンダード銘柄も対象→フクダ電子の新規採用→インデックス資金の流入」という流れが期待されます。業績とは直接関係しない材料ですが、TOPIX採用が実現すれば、株式の流動性向上や投資家層の拡大につながる可能性があり、今後の株価を見るうえで注目したいポイントです。
この点に関してはスケジュールの把握が重要です。
定期入替は年に1回、10 月最終営業日に行い、定期入替基準日は8月最終営業日です。構成銘柄の選定結果は10月第5営業日に発表されます。2026年は10月7日です。引け後に発表されるでしょう。TOPIXに新たに採用される銘柄、除外が決まった銘柄については翌営業日から株価が反応するのが一般的ですが、いくつかの証券会社が事前に予想を出しており、発表前からそのような反応がある銘柄もあります。この辺りは情報を持てる人、持てない人の差が出ます。対面証券会社に口座を持っていると、予想レポートを読める場合があります。


