今回は人気が高い通貨として、豪(オーストラリア)ドル相場を取り上げたいと思います。オーストラリアは原油や鉄鉱石などの天然資源を豊富に産出する国の通貨で、投資の世界で豪ドルは「資源国通貨」と位置づけられます。
世界的に資源価格が上昇しているなかで、資源国への投資は有力な選択肢になるでしょう。今回は、豪ドル相場の特徴について述べた後、これまでの豪ドル相場での推移を振り返り、今後の見通しについて考えてみました。
豪ドル相場の特徴
オーストラリアの主な輸出品は、鉄鉱石などの鉱物関連の商品です。また、石炭や天然ガスなどのエネルギー資源の輸出も多く、これらの商品を中心に輸出していることもあり、資源の価格相場の変動の影響を豪ドル相場は受けやすいという特徴があります。資源相場がどう動くかによって、豪経済の状況が変わりますので、豪ドルの取引をする場合は鉱物資源などの相場や値動きには注目が必要です。
また、今後の豪ドル相場を占う上では、貿易量の多い中国経済の動向や、米中銀の動きなども注目されます。
高成長を続ける豪経済
(以下は、フランクリン・テンプルトン・ジャパン株式会社HP(https://www.franklintempleton.co.jp/fund_special/story1.html)より抜粋)
「人口増加」によって「消費」が拡大傾向
オーストラリアの小売売上高は、コロナショックの影響から一時大きく減少しましたが、経済活動の再開とともに再び拡大基調にあります。
力強い人口動態
人口増加が予測されるオーストラリアの人口動態をみると、日本と違い30歳代が最も多い年齢層となっています。
消費意欲が高いこの年齢層が多いことは、オーストラリア経済の中心である個人消費の押し上げにつながると期待できます。
GDPの70%以上を占める第3次産業(サービス業)
鉱業が豪GDPに占める割合は11%となっています。仮に資源需要が低下しても、オーストラリア経済への影響は限られると考えられます。
オーストラリア経済への影響が大きいとみられるのは、GDPの70%以上を占める第3次産業(サービス業)です。金融や公益事業、消費関連などの内需関連セクターが、経済の主役となっています。
地政学リスクが低い
ウクライナ情勢や中東情勢に出口が見えないなかで、オーストラリアはこれらによる影響が小さいと思われます。
日本の2023年の対豪直接投資は過去最高に
以下は、日本経済新聞4月16日10面から抽出しました。
日本からオーストラリアへの直接投資額は2023年に約13兆円となり、過去最高を記録しました。食品や小売り関連(キリンHD、セブン&AIHD)で大型買収が相次ぎ、日本がオーストラリアへの海外直接投資全体の12%を占めました。ITや不動産関連の投資も目立ちました。
オーストラリアは資源産業からの多角化や、テック企業の振興を通じた雇用拡大を目指しており、日豪関係は深化したと言われています。
実際の豪ドル(対円)相場の推移と今後の見通し
ここでは、豪ドル(対円)相場がどのように動いてきたかを表しました。2000年あたりまでは、NYダウなど世界の主要株価指数と連動していませんでした。2000年にNYダウが高値をつけた一方、豪ドル相場は安値をつけました。2007年には、NYダウとともに豪ドル相場も高値をつけ、リーマンショックによる下落は世界の主要株価指数と連動しました。
原油相場が2008年に高値をつけて下落したことなどで商品相場が落ち着いた推移となり、2010年代に豪ドル円相場は高値を更新しませんでした。
2020年には新型コロナウイルスの感染拡大懸念による世界的な景気減速懸念も加わり、豪ドル円相場は安値をつけました。近年は関係の深い中国経済の減速による影響も受け、上値の重さも感じられていました。
ここに来て、コロナ禍による制限が撤廃され、原油など資源価格が上昇したこと、中国やオーストラリアでの経済指標に持ち直しが見られることから、再び高値をつけるようになりました。
今後は、米国、オーストラリアでの金融政策の行方による影響を受けやすいと考えます。米国での金利引き下げの動きが見られれば、オーストラリアの金利水準はより魅力的になる可能性がありそうです。
過去の値動きからは、2007年の高値である107円台が節目として挙げられますが、日本とオーストラリアの金利水準などを考えますと、上値メドになりにくいと考えられます。
豪ドル相場を対象にした25日移動平均乖離率の推移
下図は、最近の豪ドル相場とその25日移動平均乖離率の推移を示したものです。日経平均の25日移動平均との乖離率は、一般的に、プラス5%を超えると上昇ピッチが速いとされ、マイナス5%を下回ると下落ピッチが速いと言われますが、[小野1] [小野2] 最近の豪ドル相場でもプラス5%、マイナス5%は一つのメドになっているもようです。しかし、数年に1度はこれらの水準を上抜いたり、下押ししたりしています。
豪ドル相場の月別騰落率
ここでは、豪ドル相場の月別の騰落率を示しました。
各月別の平均騰落率を見ますと、以下のことが言えます。
- 2020年3月に安値をつけて上昇したのですが、2020年以降の4月、5月はすべて上昇となりました。2021年を除くと6月も上昇となりました。
- 2010年から2019年までの4月、5月、6月はマイナスとなることが多くありました。
- 7月、8月、9月は、2020年以降もマイナスとなることが多くありましたが、相場の方向性と一致しないことが多くありました。
- このように見ますと、5月、6月に上昇するか下落するかは、その後の相場を占う上で重要な時期になっていると考えられます。
当サイト、「非鉄金属相場の動きを振り返り、今後の動きを予想」に掲載しましたように「非鉄金属は5、6月に上昇するか下落するはその後の相場を占う上で重要な時期である」と述べましたが、豪ドル相場でも同様のことが指摘できます。
今後の戦略は
今回述べましたように、豪ドル相場は、コロナ禍による制限が緩和され、資源価格が上昇していること、オーストラリア経済の状況、地政学リスクが低いこと、日本と金利水準が異なることなどから、今後も上昇が期待できると考えます。5月、6月の動きにも注目したいところです。