デメリット・リスク一覧
前回までの記事では、筆者が考えるコインのメリットについて説明をさせていただきました。読んでいただいた方の中には、新たな投資対象としてコインに興味を持ってくださった方もいらっしゃるかもしれません。
しかしながら、何事も“オモテ”があれば“ウラ”があります。今回の記事ではコイン投資のデメリットやリスクについて説明をさせていただきます。コイン投資に取り組もう(もしくは検討してみよう)という方は、こちらもしっかりとご理解をいただきたいと思います。
まずは、筆者が考えるコイン投資のデメリット(リスク)をざっと並べてみます。
・中長期目線での投資となる
・偽物掴みリスク
・高値掴みリスク
・値下がりリスク
・ダメージリスク
・紛失/盗難/災害リスク
以降、順番に説明していこうと思います。
中長期目線での投資になる
たくさんの魅力があるコイン投資ですが、短期目線(数か月以内)での利益確定を目指したい、という方にとっては基本的に不向きな投資商品だと考えています。
主な理由は2つ。
「手数料の支払い」と「現金化するまでのタイムラグ」が問題になってくるからです。
まずは「手数料」について説明します。
コインを購入・現金化しようと思うと、いくつかの方法が考えられますが、ここでは例として、日本最大と言われる「日本コインオークション」(https://www.ncanet.co.jp/)で購入し、次の同オークションで出品する流れを想定してみましょう。
※2022年6月時点の情報をもとに計算いたします。
まず、オークションで購入した場合、落札金額とは別に [ 落札手数料10%+その手数料に掛かる消費税 ] が必要になります。また、郵送してもらう場合は、送料として700円(国内在住者の場合)が必要となります。
例)コインを10万円で落札した場合
落札価格(100,000円)+手数料10%(10,000円)+消費税10%(1,000円)+送料(700円)
= 合計(111,700円)
次に、オークションへ出品した場合、落札金額に対して [ 落札手数料の10%+その手数料に掛かる消費税+送金手数料1,000円 ] が差し引かれて振り込まれることになります。
※日本コインオークションでは、落札金額が100万円を超える場合は落札手数料は5%
例)コインが13万円で落札された場合
落札価格(130,000円)-手数料10%(13,000円)-消費税10%(1,300円)-送金手数料(1,000円) = 合計(114,700円)
※また、この時の落札者が支払う金額(=市場価格)は、上で紹介した計算式に当てはめると145,000円となります。
つまり仮に、[落札者が支払う金額=その時の相場価格] となることを前提としてざっくりと考えるならば、市場価格が111,700円→145,000円(130%)以上になったタイミングで出品することで利益が得られる、といったアタリを付けることができます。
この利益発生ポイントを念頭に、コインの伸び率を仮に1年あたり10%と想定すると、3年以上の保有を目安にしよう、といった考えが導かれます。
もちろん、仮定に仮定を重ねた数字ですし、コインによっても値上がり率は大きく異なります。また実際に取り組む際は、相場よりも安く買い、なるべく高い価格で買ってもらう工夫をすることで、想定保有期間を縮めることは可能です。しかし、少なくとも数年は保有することを前提とした方が、勝てる可能性が高くなることはご理解いただけるのではないかと思います。
次に「現金化するまでのタイムラグ」について説明します。
上記と同様に、日本コインオークションを例に見てみましょう。
ホームページを確認すると、次回のオークションへの出品についての記載がありました。
第57回日本コインオークション(2023年6月開催予定)へ出品する場合、
出品受付締切日=2023年1月31日到着品まで受付
つまり、出品手続きをしてから実際にオークションが開催されるまで、約5か月間、待機しなければいけない期間がある、ということです。
ちなみに、第56回(2022年12月開催予定)へ出品する場合は、
出品受付締切日=2022年8月31日到着品まで受付、
でしたので、約4か月間の待機期間だったことになります。
このタイムラグについても、例えば、別の会社が主催するマンスリーオークションに出品する、ヤフオクやメルカリ等の仕組みを活用する、などの工夫で想定期間を縮めることは可能です。しかし、それぞれの市場特性を理解する必要がありますし、購入価格以上の価格で売却しようと思えば、やはりそれなりの待機期間は想定しておいた方が懸命と言えるでしょう。
ちなみに、即日現金化の強い味方、業者の買取サービスがあるじゃないか、と思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし当然、業者は商売でやっていますので、間違いなく買い叩かれる結果になります。買取サービスに頼るのは、赤字になっても構わないので現金が欲しい、本当にキャッシュフローに困った時の最後の手段として考えておくべきです。
偽物掴みリスク
これは現物投資をする人にとって最大のリスクと言えるでしょう。
近年のコイン投資の人気上昇に伴って、偽物もかなり出回るようになってしまいました。
特に、ヤフオクやメルカリを覗いてみると、一見して偽物だと分かるものがかなり多く出品されていることに気付きます。ある程度経験を積めば、明らかな偽物は検討が付くようになるのですが、中にはプロでも騙されてしまうような精巧なものも出回っています。そういった精巧なものの場合、出品している本人が気付いていない可能性もあるので、特に注意が必要です。
こういった時に、リスクを減らす手法としてよく言われるのは「プロから買う」「スラブ入りのコインを購入する」の2つでしょう。もう少し詳しく説明します。
まず「プロから買う」についてですが、ここで筆者が言うプロとは、有名どころのオークションで落札する、日本貨幣商共同組合(https://www.jnda.or.jp/)の加盟業者による展示会などで購入する、といったことを指しています。間違ってもインターネット上で派手に宣伝している新興業者や、自称プロのインフルエンサーのことを指しているわけではありませんので、誤解しないようにお願いいたします。
次に「スラブ入りのコインを購入する」についてです。こちらは前回の記事で説明させていただいたNGC社とPCGS社の手によって鑑定されたコインのことです。ここで本物と認証されたものを購入することで、偽物掴みのリスクが無くなって安心だというのが、一般的に言われている内容になります。
ただ、近年このあたりの状況も、雲行きが怪しくなってきました…。実は、スラブに入った精巧な偽物、というのも出回り始めているのです。ですので、スラブに記載されている鑑定番号をもとに、サイトに掲載されている記録写真をチェックすることも忘れないようにしましょう。具体的には、コインの状態(細かな傷やへこみの位置など)やスラブに貼られているラベルの表記内容、フォントの形状や並びなどをチェックするのです。このひと手間を加えるだけで、偽物掴みのリスクをグッと減らすことができます。
そして、偽物掴み対策(というかリスク管理手法)として最後にもう一つ、絶対に業者が言わないことを述べさせていただきます。それは、「高いコインを一枚買うのではなく、複数枚のコインに分散投資をする」ということです。
業者がよく使う常套文句として「高いコインほど値上がりしやすい」というものがあります。これはそれだけ見れば正しいのですが、投資家目線で見ると半分は間違いだと思っています。
確かに、すでにある程度の人気を獲得しているグレードの高いコインの方が、波が来た時にさらに注目を浴びやすく、値上がりに拍車がかかりやすい傾向にあります。その点だけ切り取れば、価格の低いコインを2枚持つよりも、高いコインを1枚持つ方が効率よく利幅を増やすことができるのです。
しかし、筆者の個人的意見としては、リスク管理の観点が抜けており、特に初心者の方にはあまりお勧めはできないと考えています。現実に目を向ければ、上述のように、プロでも騙されるような精巧な偽物が存在します。実際の運用のことを考えれば、偽物を掴んでしまうリスクを始め、(以下で説明するような)価値が消えてしまう(減ってしまう)リスクを抱えることになる以上、複数枚への分散や購入タイミングを分けるリスク管理・資金管理はセットで考えるべきだと思うのです。
そもそも商売形態を考えれば、高いコインを販売した方が利益が大きいのだから「業者は高いものを勧めるのが当然」だということは理解しておいた方が良いでしょう。
高値掴みリスク
先ほどの話をすると、では本物保証をしている業者を選べば良いのでは?と思うかもしれません。確かに本物保証をしていると、安心感があるように思えます。しかし、そこで安易に購入するのは危険と言わざるを得ません。そういった業者の多くは、そもそも販売価格を高く設定している可能性があるからです。
そのコインの希少性や状態(鑑定グレード)を含めてチェックし、相場価格を確認してからの購入をお勧めします。
※相場の確認方法は、また別の記事で説明をさせていただく予定です。
そもそも「親切な業者」とはどのような業者でしょうか?
「本物保証を付けてくれる?」
「丁寧に説明してくれる?」
「気持ちよく特別感を演出してくれる?」
利益を度外視してこういったものを求めている方にはこれ以上何も言いませんが、大多数の人にとっては「適切な価格で販売してくれる業者」が本当の意味で親切な業者と呼べるのではないでしょうか。
値下がりリスク
「コインは値下がりしない」という謳い文句をよく耳にしますが、他の投資商品と同様、絶対はありえません。実際にコインも値下がりすることはあります。
(コインの値動きについては、アンティークコイン記事の第一弾「人気上昇中?アンティークコイン投資とは」にて記載しておりますので、まだの方は是非ご参考ください。)
特に一時的なブームで一気に数倍に価格が噴き上げているような銘柄は、反落する可能性も踏まえて、慎重に検討しておいた方が良いでしょう。
ダメージリスク
コインは他の現物に比べれば圧倒的に管理が楽とはいえ、保管方法にはやはり気を遣う必要があります。特に裸コイン(スラブに入っていない状態)の場合は、表面の傷や錆がそのままコインの価値に影響してしまうので、注意が必要です。コレクション用のホルダーやケース等に入れた上で、湿気の少ない引き出しや金庫などの暗い場所に保管しておくのが良いでしょう。
ちなみに余談ですが、たまたま両親や祖父から古銭を引き継いだ人の「あるある話」として、古びたコインを拭いたり磨いたりしてしまう人がよくいらっしゃいます。中には、丁寧に水洗いをしてしまう人もいるようです。少しでも見栄えを良くして、少しでも高い金額のお金に換えたいという想いからでしょうが、その行為は完全に逆効果です。忠告しておきますが、ペンダント等にして自分で身に着けたいといった特別な理由が無い限り、そのような行為は絶対にやめてください。
洗われたり磨かれたりしたコインは、鑑定時に特記事項の“Detail”評価がついたり、場合によっては“鑑定不可”ということになり、価値が著しく損なわれてしまいます。もとの状態なら数十万円の価値が見込めたのに、ほぼ無価値になってしまうということも十分にあり得るのです。
紛失/盗難/災害リスク
これは、特に細かな説明をするまでもないとは思いますが、こちらも現物投資ならではのリスクです。必要に応じて、例えば保管場所を分ける、耐火金庫を利用する、むやみに高価なコインを持っていることを周りに言わない、保険をかけるといった対策を取りましょう。
大きく儲けるよりも、大きな怪我をしないことの方が大事
さて、今回も少し長くなってしまいましたが、いかがでしたでしょうか。
リスクをたくさん並べたので、げんなりしてしまった人もいらっしゃるかもしれません。
しかし、楽をして簡単にお金儲けができるワケがありません。注意点もしっかりと学習し、地に足が付いた状態で取り組むからこそ、安定した実績をつくることができます。
実際に取り組んでみたいと思われた方は、是非実践前にも今回の記事を読み返していただければと思います。
次回以降は、より実践的な内容に踏み込んでいこうと思いますので、引き続きお付き合いいただけますと幸いです。
まとめ
コイン投資は、基本的に中長期目線での投資になる。
短期目線の人には向かない。
オークション利用には落札価格以外に手数料がかかる。
また、オークション出品にはある程度の待機期間が必要。
買取サービスの利用は、赤字覚悟の最後の手段。
コイン投資の人気上昇に伴って、偽物もかなり出回るようになった。
スラブ入りの偽物コインも出てきたので要注意。
コインもリスク管理・資金管理の観点は必要。
初心者は複数枚に分散するのがオススメ。
親切な顔をした、ぼったくり業者に注意。
コインも価格は下がる場合がある。
コインは表面の状態(傷や錆)が、価値そのものに影響する。
ただし、洗う・磨くは、完全に逆効果なので絶対にしてはいけない。
必要に応じて、保管場所を分ける、耐火金庫を利用する、むやみに高価なコインを持っていることを周りに言わない、保険をかけるといった対策を取る。
大きく儲けるよりも、大きな怪我をしないことの方が大事。
リスクはしっかりと把握しよう。