リニア竣工で市況にどのような変化があったかを東海道新幹線から考える

日本を横断するリニアモーターカーが間を通る県の反対で停滞しているとき、一番残念に思っているのは誰でしょうか。筆者は品川・名古屋間に停車駅が設置される予定だった地元の不動産関係者や地元企業だと思います。日本はすっかり大型インフラが期待できる場所が無くなりつつあり、リニアは最後の希望です。再び動き始めたリニア建設の相場に与える見通しを、数十年前の新幹線狂騒曲から分析します。

目次

巨大インフラの建設時、関連株にはどのような変化があるのか

まず、リニア中央新幹線(以下リニア)のような巨大インフラの建設時には、どのような銘柄に影響があるのでしょうか。

不動産業界と観光業界には強い恩恵

最も想像しやすいのは不動産業界です。駅周辺の新規開発による土地価格の高騰や周辺建物の売買価格増加、人が増えることによる店舗の誘致なども期待できるでしょう。準じて建設業界や原材料もプラスの材料が見込めます。

リニアでは長野県の飯田周辺と岐阜県の中津川周辺に新駅ができると発表されています。この発表に沸き立っているのが旧中山道です。これまで新幹線や特急などとも縁が遠い観光地への来場需要に大きな後押しとなるでしょう。銘柄では無いですが周辺自治体や地元における雇用状況改善にも著しい効果があります。

また既存移動手段とのせめぎ合いも期待できます。現在ドル箱とも称される東京羽田ー関西国際空港・関西空港(吹田空港)は正面からのコンペチターとなるうえ、一般車両からのリニア移動組が想定される高速道路にも大きな影響が予想されます。一方で一般車両の高速利用が減少する分、トラックなどの輸送業にとっては渋滞リスクが減少する可能性が高く、郵送ニーズが見直されるかもしれません。

利用者にとってはどちらの手段を取るか迷う一方、SA(サービスエリア)やPA(パーキングエリア)ではリニアに逃さまいと、お互い切磋琢磨することによるサービス向上も期待できるでしょう。

リニア新幹線の建設時は何が異なるのか

リニアのような巨大交通網といえば、前回の1964年の東京五輪から日本中に敷き詰められた新幹線を参考にすることができます。自分自身の所有株や今後購入したいと考える銘柄を踏まえて、新幹線建設時にどのような動きがあったかを調べることは効果的です。ただ、1960年の株価推移は当然インターネットが登場する何十年も前のため、いわゆる蔵書に頼ることになるかもしれません。今回の執筆において東海道新幹線の建設当時(1960年から1964年)は確認できましたが、同じインフラという視点だけでも1967年に開通を迎える東名高速の工事が進んでおり、新幹線単体の株価影響を算出するのは難しいでしょう。

今回のリニアは既に織り込み済みの材料も多い?

そのときに気をつけたいのが「織り込み」という傾向です。新幹線もリニアも竣工の何十年も前から建設が報じられています。そのため、実際に稼働が開始する頃には、相場は既に読み切って株価への影響も落ち着いていたという話には事欠きません。

ましてや今回、当初の予定では2027年に品川ー名古屋間の先行開通が発表されていたものの、いくつかの事情により2020年に代替日程を定めない延期となりました。このような場合に相場観として更なる盛り上がりを期待するには、想像を超えるサービスであった場合や口コミなどの遅行指数が主な評価軸となります。まずは「リニアってどうだろうね」という感触から始まり、少しずつ市場における評価が定まっていくと考えられます。

それよりは前項の通り、リニア開通によるコンペチターの期待値に投資家として

かける視点を推奨します。2022年12月、リニア開設によって運行に余裕を持つ東海道新幹線の有効活用として、現在停車数の少ない静岡や浜松に新幹線(主にこだまやひかり)の停車数を増やす検討が報じられました。リニア工事は静岡県の大井川の水量を減らすことが懸念されており、地元の反対も根強いです。この策には、静岡への懐柔策といった側面も垣間見えます。

インフラ建設時代とこれからのリニアの違いとは

本稿ではもともと東海道として人流と物流の中心だった東海道への新幹線建設を取り上げたため、建設時の経済成長も手伝いインパクトのある話として描きました。筆者は北海道出身のため、幼少期は新幹線に無縁の人間でした。正直に書くと、社会人になり東京に出てきてから新幹線に初めて乗るとき、チケットの買い方から乗車の仕方がまったくわからなかったことを思い出します(清掃中に乗り込もうとしました)。その背景も踏まえて個人的には北陸新幹線と東北新幹線はインパクトが強いですが、自身の故郷と東京を繋ぐ北海道新幹線は。いまだ新駅の周辺開発が進まないという新幹線神話の終了を予感させています。

一方でリニアはこれだけの大型インフラです。時代が変わったとはいえ、新しい産業の生まれる動機としては十分なものでしょう。特に今回繋がる中央内陸部は山地も多く、海岸沿いに比べこれまでは後回しにされていた地域です。後回しにされたがゆえにリニアを誘致した一連の流れともいえます。まずは再度動き始めた建築に向けての盛り上がりを目に焼き付けましょう。

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この記事を書いた人

株式会社FP-MYS 代表取締役。

相続×Fintechサービス「レタプラ」開発・運営。2022年夏より金融教育のプロダクト提供。上場企業の多数の執筆・セミナー講師の実績を有する独立型ファイナンシャルプランナー(FP)。

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