株式相場を見る上で、どのような銘柄が物色されているのかを知るには、様々な株価指数を見る必要があります。JPX日本取引所グループは、多くの株価指数を日々公表しています。
各株価指数を見ることによって、同じような分類の銘柄が上昇しているのか、循環的に様々な業種が上昇しているかが分かり、物色の変化などをつかみやすくなります。今回は、「TOPIXグロース(成長)指数」(以降、グロース指数)、「TOPIXバリュー(割安)指数」(以降、バリュー指数)、の動きを振り返り、今後の物色の方向について考えてみました。
バリュー指数とグロース指数について
日本取引所グループでは、TOPIXスタイルインデックスシリーズとして、銘柄群をバリュー(割安)又はグロース(成長)といったスタイル別に区分して「時価総額加重型」の株価指数を発表しています(日本取引所グループのHP「TOPIXスタイルインデックスシリーズ」より)。
グロース指数の推移と12カ月移動平均かい離率の推移
グロース指数は、「東証グロース市場指数」と異なるもので、底堅く推移しています。下図は、グロース指数の動きとその12カ月移動平均かい離率の推移を示しました。アベノミクスが始まった初期段階で12カ月移動平均かい離率は47%台をつけ、その後も上昇しました。その後の上昇場面では12カ月移動平均かい離率が20%台をつけて上昇が止まる場面が何度か見られました。
高値から高値まで約3年となる傾向があるようです。この傾向からは2027年あたりに高値をつける可能性がありそうです。
また、高値をつけてから安値をつけるまでは1年以内になることが多く、今後は安値をつけて反発しやすい時期を迎えます。
バリュー株指数の推移と12カ月移動平均かい離率の推移
下図は、バリュー株指数の動きとその12カ月移動平均かい離率の推移です。アベノミクスが始まった初期段階で12カ月移動平均かい離率は45%台をつけ、その後も上昇しました。その後の上昇場面では12カ月移動平均かい離率が30%前後をつけて上昇が止まる場面が何度か見られました。
2023年からの上昇が大きいものになっているだけに、今後も12カ月移動平均かい離率が30%前後をつけるようですと、上昇が一服しやすいと考えます。
「グロース指数÷バリュー指数」の推移
下図は、「グロース指数÷バリュー指数」の推移とその36カ月移動平均かい離率の推移を示したものです。2024年5月の水準(1.04倍)は2015年につけた水準(1.02倍)に近いものになりました。
近年はバリュー株指数が優位に推移
ここ数年は、バリュー指数の堅調さが目立ちましたが、その理由を3つ示しました。2と3は、足元でバリュー指数が底堅く推移している理由と言えそうです。
2020年途中からバリュー指数が相対的に優位に推移している理由として以下の3点が挙げられます。
- コロナ禍による影響が懸念されてより下落したのはバリュー指数の方が大きく、コロナ禍による悲観論が和らぐ過程ではバリュー指数の反発が大きくなりました。
- 日本銀行による金融緩和政策が正常化に向かうなかで、長期金利が上昇しています。資金を借りて設備投資を行う企業が多いのはグロース株(グロース指数算出の対象になる銘柄)であり、グロース株の(利子)負担が増えると懸念されました。
- 東京証券取引所が2023年3月末に企業に株価を意識した経営を要請したこと(注参照)は、株価のさえなかったバリュー株の企業改革意識を高めることになりました。
注:東京証券取引所が企業に行った要請(日本取引所グループのHP「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について」に詳しく掲載されています)。
○「上場会社の多くでROE、PBRが低くなっている。企業価値向上の実現に向けて、資本コストや株価に対する意識改革が必要」との内容。
今後はグロース指数が優位となる可能性も
しかし、過去の水準からみて、「グロース指数÷バリュー指数」は低い水準にあり、今後海外経済に不透明感が強まるようだと、バリュー指数を避けてグロース指数に資金をシフトさせる動きになる可能性もありそうです。
また、東京証券取引所が行った要請にグロース指数の算出の対象となっている企業が応えていると判断されれば、グロース指数が上昇することが期待されます。
グロース指数、バリュー指数の月別の動き
下図は、「グロース指数の月別騰落率」―「バリュー指数の月別騰落率」を示したものです。平均は、アベノミクスが本格的に始まるまでの4年間、アベノミクスが本格的に始まった2013年からコロナ禍となった2020年までの期間、2021年から2024年までの期間で集計しました。
以下のようなことが指摘できます。
- 7月から11月にかけては、おおむねグロース指数の優位性が見て取れます。11月は7-9月期の経済指標や決算内容が明らかになる時期ですが、2021年まで5年連続でグロース株指数が優勢となりました。
- アベノミクスが始まってから2020年までを見ますと、3月、5月などでもグロース指数の優位に推移する傾向が見られました。
- 2021年あたりから、1~6月、9月、12月にバリュー指数が優位に推移したことが見て取れます。特に、1月、2月は2021年を境に大きな優位性が見られます。
- 2013年から2020年まででは、グロース指数が優位に推移しましたが、1月、2月にやはりグロース指数の優位性が見られていました。
このように見ますと、1月、2月の動きは「グロース指数÷バリュー指数」の長期的な方向性を示唆していると言えそうです。
まとめ
今回は、「バリュー指数」と「グロース指数」、および「グロース指数÷バリュー指数」の動きを振り返って見ました。ここ数年は、2023年の東京証券所が出した要請の影響などを受けて、バリュー指数の優位性の優位性が続いてきました。
しかし、足元は「グロース指数÷バリュー指数」の水準が過去の水準と比べて低くなっています。今後は、海外経済に不透明感が強まったり、グロース企業に変革の動きが見られたりするようだと、グロース指数が優位に動く可能性もありそうです。
