株式市場を見る上で、どのような銘柄が物色されているのかを知るには、様々な株価指数を見る必要があります。
今回は、米国S&Pの業種別株価指数の動きのなかから、不動産株と金融株について取り上げました。今後は、利下げ実施が確実視され、大統領選挙が行われるのですが、その後にどのように推移しやすいのかを考えてみました。
米国の業種別株価指数について
以下は、ホームページのインテク(https://aibashiro.jp/contents/uss09/)から抽出(一部を抜粋)しました。
米国株は、産業によって全部で11の業種(セクター)に分けられています。同じセクターの銘柄は、株価が似たような値動きをしやすい傾向にあるといえるでしょう。
1999年に、米国の格付け会社であるS&P(Standard & Poor’s)と、機関投資家向けに指数や投資分析ツールを適用するMSCI(Morgan Stanley Capital International)によって共同開発されたものです。
具体的な米S&P500の業種別指数は以下のようになっています。
下の表では、注目度の高い銘柄について所属する業種を示しました。
最近の米S&P業種別株価指数の動き
ここでは、過去1年間の米S&P業種別株価指数の推移(一部)を示しました。
2024年7月上旬までの上昇場面は、情報技術(IT)が米株式相場の上昇を引っ張ってきたことが分かります。その後8月上旬までの下落場面も、情報技術が下落の中心であったことが分かります。代わって上昇が目立っているのは、金融や不動産、生活必需品などの業種です。
(負債が多い)不動産株が上昇している背景には、米国で9月に利下げが行われることが確実視されていることが挙げられます。図にはありませんが、(高い配当利回りが見込める)公益事業、(財務体質が弱い)中小型株なども堅調に推移しています。
一般消費財より生活必需品が堅調に推移しているところを見ると、景気の先行きを懸念する動きが表われていると言えそうです。
今後は、米国の株式市場を占う上では、利下げ回数がどの程度になるか、米景気の悪化が限定的になるか、11月の大統領選挙、議会の構成がどうなるかなどが焦点となります。
利下げ局面で上昇が期待される業種
前述のように、利下げ局面で上昇が期待される業種としましては、不動産株が挙げられます。近年の米国での利下げ局面が始まりましたのは、2001年1月、2007年9月、2019年7月です。
日本経済新聞朝刊8月30日23面を見ますと、2001年1月、2007年9月は「本格的な利下げ」と表現されています。一方で、2019年7月の利下げは「予防的利下げ」と表現されています。
今回は「予防的利下げ」に位置づけられると考えます。2019年から不動産株は堅調に推移しました(その後、コロナショックを受けて上昇は止まりました)。
大統領選挙の結果と物色の方向について
大統領選挙の結果が示された段階では、ハリス氏とトランプ氏のいずれが当選するかによって物色の方向は大きく異なるものになるでしょう。以下は、両候補者の発言などから筆者が物色されやすい業種を考えてみました。
ランプ氏勝利で上昇が期待できる業種
- エネルギー関連株
- 国境警備関連株
ハリス氏勝利で上昇が期待できる業種
- 再生可能エネルギー関連株
- 住宅関連株
S&P業種別株価指数・不動産の動き
ここでは、S&P業種別株価指数・不動産の動きとその36カ月移動平均とともに示してみました。
リーマンショック時、コロナ禍で大きく調整したことが分かります。これらを除くと36カ月移動平均の前後でよく下げ止まってきたことも分かります。また、安値を付けた時期を見てみますと、2月、3月、10月が多く見受けられます。
S&P業種別株価指数・不動産の季節的傾向
ここでは、過去のS&P業種別株価指数・不動産の月別の騰落率を調べてみました。
上昇基調にありました2010年から2021年の平均騰落率、下落基調にありました2022年から2023年の平均騰落率を比べてみますと、月ごとに見られる傾向は変わりません。上昇しやすい月、下落しやすい月が共通しています。
安値をつけやすい2、3、10月に上昇するようだと、数カ月は上昇場面が続くことが期待できそうです。
今年の2,3月に上昇しているだけに、10~12月も堅調に推移することが期待できると考えます。
S&P業種別株価指数・金融の動き
ここでは、S&P業種別株価指数・金融の動きとその36カ月移動平均とともに示してみました。
不動産株と同様に、リーマンショック時、コロナ禍で大きく調整したことが分かります。2019年の利下げ局面で相対的に大きく下落していたことが特徴として挙げられます。2020年(コロナ禍に入った初期段階)に36カ月移動平均を下回りましたが、2022年の下落場面では36カ月移動平均の前後で下げ止まりました。
また、安値を付けた時期を見ますと、2月、3月、10月などとなっています。高値を付けた時期を見ますと、1月、2月、7月などとなっています。
S&P業種別株価指数・金融の季節的傾向
ここでは、過去のS&P業種別株価指数・金融の月別の騰落率を調べてみました。
下落基調にありました2018年から2019年の平均騰落率、2022年から2023年までの平均騰落率がマイナスになっており、上昇基調にありました2020年から2021年の平均騰落率、さらに2024年の騰落率がプラスになっている月を見ますと、2、5、8、12月(不確定)が当てはまります。つまり、これらの月は、約4年ごとの上昇や下落の方向に一致しがちであったことが分かります。今後は12月、2月の動きが注目されます。
また、大統領選挙が行われました2012年、2016年、2020年は11月前後から大きな上昇率を見せて、その後に中長期的な上昇場面になっていたことも読み取れます(図と表より)。
まとめ
今回は、米S&P東証業種別株価指数の中から、不動産、金融を中心に取り上げてみました。不動産につきましては、米国での利下げの動き、季節的な傾向から今後数カ月の上昇傾向が期待できると考えられます。一方、金融に関しましては、過去の大統領選挙の後の傾向から上昇基調となることが期待できます。上昇が止まりやすい、今年12月や来年2月にどのように推移するかなどに注目したいと考えます。