みなさんこんにちは、金融商品を売らない投資と財務の専門家・BFPの土居 亮規です。
たまに顧客さんが主幹もしくは関与している不動産投資家の勉強会・大家会で講師をさせていただいているのですが、懇親会や二次会などではたまにテーマに上がるのが本件。ずばり、「離婚時に不動産が財産分与の対象となるかどうか」です。また「不動産投資家の配偶者と離婚したい」という人にもおすすめな記事です笑
これはその不動産が共有財産か特有財産のどちらに分類されるかで判断されます。この辺りについて、わかりやすく解説していこうと思いますのでご活用ください。
共有財産における「協力」とは?
大前提として、離婚した際の財産分与対象となる資産を「共有財産」と呼びます。共有財産とは夫婦が婚姻期間中に協力して形成・取得した財産を指し、民法第768条の財産分与の規定に基づき、離婚時に清算の対象となる財産である、と定義されるものです。
ではここをもう一段掘り下げて、「共有財産」の定義のうち「協力」して形成・取得したとされるという文面における、具体的な「協力」とはなにか?を掘り下げましょう。
1:収入および返済援助
例えばご本人名義で不動産を購入した際、諸費用や経費の一部、もしくはローンの返済などを配偶者の方が代理で支払い・返済を行った場合、問答無用で「共有財産」となります。これは「協力」としてはシンプルで、わかりやすいですね。
2:資金援助
1と似たようなケースですが、「一時的に」ご配偶者の方からお金を立て替えてもらい、融資実行後などにそれを返済した場合でも、資金援助と見なされ共有財産になります。もし揉めて裁判などになればそこが立証証明できるのか?等の問題はありますが、とりあえず「お金を借りちゃだめよ」と覚えておきましょう。
3:名義援助
副業を禁止されている企業や公務員の方が、配偶者の方の名義を借りて法人を設立するケースなどがこれに当たります。実質的にお金を出しているのは自分自身でも、名義を借りている時点で共有財産と見なされます。
4:人的支援援助
これがおそらく、不動産投資家の方の最大の落とし穴。最高裁判所判決・平成8年11月26日にて経済的貢献がなくても、「家庭運営・人的支援」も財産形成への貢献として評価されるという判決がでました。つまり、お金は全部自分で出していて、名義が自分でも、例えばボロ物件のDIYや記帳管理、帳簿管理、電話対応などを配偶者の方にタッチさせているとそれは「共有財産」になるということですね。
つまりまぁ、普段はキツイ・気が合わない配偶者の方が「たまにはあなたの不動産物件の修理とか手伝うよ!」とか言い出したら気をつけましょうということです。持っていかれます。
持ち家の財産分与
財産分与の対象となるケース
代表的な「不動産」と言えば持ち家ですが、持ち家は婚姻期間中に夫婦が協力して取得した財産である場合、通常は財産分与の対象になります。
- 婚姻期間中に購入した持ち家
夫婦のどちらかの名義であっても財産分与の対象です。先の例に出した最高裁判所判決・平成8年11月26日判決では「専業主婦の妻が、家事・育児を通じて夫の収入増に貢献していた」としました。つまり相手方の収入有無や経済的貢献などはほぼ関係ない、ということですね。
財産分与の対象とならないケース
以下の場合は、持ち家が財産分与の対象とならない、または一部のみが対象となる可能性があります。
- 結婚前に購入した持ち家
結婚前に購入し、ローンを完済していた場合は特有財産として扱われます。
しかし、結婚後もローン返済が続いていた場合は、婚姻期間中の返済分については共有財産として評価される可能性があります。
- 不良債権となった持ち家・不動産
住宅の時価がローン残債を下回る、いわゆる「評価がマイナス」の場合、持ち家や投資用不動産にかかわらず資産価値がないため、財産分与の対象外となることがあります。
こちらについては後ほど詳しく説明します。
個人名義の投資用不動産の財産分与
財産分与の対象となるケース
投資用不動産が婚姻中に取得され、夫婦の協力があった場合は財産分与の対象となることがあります。
- 婚姻期間中に購入し、夫婦の収入でローン返済をしていた場合
たとえ名義が片方であっても、共有財産とみなされます。投資用不動産の賃料収入を生活費に充てていた場合も、共有財産と見なされる可能性があります。
- 名義が一方でも、婚姻期間中の収入で購入・運用されていた場合
例えば、夫の単独名義の投資物件であっても、婚姻中の収入で購入・維持していた場合は、共有財産とみなされ、分与の対象となることがあります。
財産分与の対象とならないケース
- 結婚前に購入し、婚姻後の関与がない場合
結婚前に購入し、ローンも完済している場合は、特有財産として扱われ、財産分与の対象外になります。ただし、結婚後に個人家計からローン返済を続けていた場合は、婚姻後の返済分に関しては財産分与の対象となることがあります。
つまり、大前提として「本人と配偶者」の方の財布が別々に分別管理されている家計であり、返済等に共有財産を使っていない・手伝わせてもいない、ということが離婚しても資産を持っていかれないようにするマスト事項だということですね。
え?もう手遅れ?タイムマシーンでも探しに行きましょう。
法人名義の不動産の財産分与
原則として財産分与の対象外
法人が所有する不動産は、法人の財産であり、個人の財産とは別と考えられるため、原則として財産分与の対象とはなりません。法人名義の不動産は、会社の運営資産として扱われ、離婚時に夫婦で分ける対象にはならないのが通常です。
ただし、その法人が婚姻後に登記し、かつ登記費用について共有財産から支払いを行っている場合、法人内の不動産は大丈夫でも法人の株式、つまり権利持分は没収される可能性があります。ご注意を。
例外的に財産分与の対象となるケース
ただし、以下のようなケースでは、法人名義の不動産であっても財産分与の対象となる可能性があります。
- 実質的に個人事業と変わらない場合
法人が小規模で、経営者(夫または妻)の個人資産と法人資産が混在している場合は、法人の不動産であっても財産分与の対象とされることがあります。 家庭内費用を経費などで放り込んでいる方はご注意を。
- 離婚に備えて不動産を法人名義に変更した場合
夫婦の共有財産であった不動産を、離婚を見越して法人名義に変更したと認められる場合、財産分与の対象とされることがあります。
- 法人の収益が夫婦の生活費として使われていた場合
例えば、法人名義の不動産の賃料収入を、夫婦の生活費に充てていた場合は法人の財産ではなく、実質的に夫婦の共有財産とみなされる可能性があります。
「不良債権」扱いで財産分与を回避しよう!
ここまでを読んで「やっべ、財産分与対象じゃん!」と思った方。財務コンサルタントの業務一例として対策方法の一つを指南します。まぁ個人的には、配偶者の方に捨てられないように生活を改めたほうが早いような気はしますが。
それはさておき。不動産は「一物三価」と呼ばれるほど価格の評価方法が違います。個人的には3どころか5とかある気がしますがともかくとして、基本的に財産分与において「資産評価」される際に使われる指標は「不動産業者の査定価格(実勢売買価格)」です。
つまりまぁ、喜ばしいことに不動産を数年前に購入し、値段が上がっていればその分持っていかれる金額も増えるわけですね。
最近は無茶なオーバーローンなども見られないことと、まぁよっぽど直近に買った物件でない限りはローンの残債は減っているので、時価>負債となることがほとんどです。それを持っていかれないようにするためにはどうするのか?ズバリ「第二抵当権」です。
不動産投資等であれば「共同担保」として第二抵当を打つことが多いですが、この際嫌がらせと財産保全がメインなので事業性融資を行っている会社で担保に入れて事業用資金を調達しまくります。そうするとあら不思議、不動産の分与価値が一気にマイナスになります。
で、この現金を残しておくと「融資を返済しろ!必要のない資金だ!!」とか言われるので、補助金・助成金の事業必要資金として拠出してしまい、本当に事業の資金である証明実行+半年後に補助金・助成金で取り返すというコンボを行えば完璧です。
まぁ、あんまり書きすぎると怒られるのでこの辺にしておきます。
※この記事はフィクションです。実際の経済活動や法令等には関係がない・・・とは言いませんが、自己責任でダブルチェックしたうえで実行してください。責任は取りません・・・というか弁護士雇いましょう。
まとめ
財産分与の対象となるケース
- 持ち家
婚姻期間中に夫婦で購入した場合
片方の名義でも、婚姻中の収入でローン返済をしていた場合
- 個人名義の投資用不動産
婚姻期間中に購入し、夫婦の収入でローン返済をしていた場合
収益が生活費として使われていた場合
- 法人名義の不動産(例外的なケース)
実質的に個人事業と変わらない法人の場合
離婚に備えて不動産を法人名義に移転した場合
財産分与の対象とならないケース
- 持ち家・個人名義の投資用不動産
結婚前に購入し、婚姻後の関与がない場合
資産価値がない場合
- 法人名義の不動産(原則)
会社の独立した財産として運用されている場合
不動産の財産分与については、名義だけで判断されるわけではなく、実際の運用状況や夫婦の貢献度が重視されます。この「協力」は曲者なので、やましい心当たりがある方はご注意ください。
逆に不動産投資家の配偶者の不貞を見つけた配偶者の方は手伝いに行きましょう。そしてかっぱぎましょう笑
今回はこの辺で。
