こんにちは!金融商品を売らない投資と財務の専門家、BFPの土居 亮規です。
さっそくですが皆さんは書籍やセミナー・サロン、SNSなどでいわゆる「レジェンド」「ベテラン」の不動産投資・賃貸業の手法・やり方を聞いて「ためにはなるしモチベは上がるけど、今できないよ!!」と思ったことはないですか?私はあります。
本日の記事ではそんな「各世代・年代ごとの不動産投資の推移」をまとめ、いろんな方の話を聞くとき、自分なりに頭の整理をできるよう記事にまとめてみました。ぜひ今後の学びにご活用ください。
2000年代 前半
本格的に「不動産投資」のブームがきたのは2000年代、不労所得ブームの火付け役となったバイブル「金持ち父さん、貧乏父さん」が発売された2000年の11月からです。それまでもいわゆる大家業・賃貸業のコミュニティはありましたが細々とした、よく言えばブルーオーシャン、悪く言えば変わり者のアンダーグラウンドな集まりでした。

ちなみにこの書籍、2013年には改訂版(リンク先参照)が出ていたり、後年の金持ち父さんはネットワークビジネス・MLMにハマり若干怪しい道に進むのですが、それはいいでしょう。とにかく、この本がブームの着火剤となりました。
この時代の不動産投資といえば1990年代のバブル崩壊の記憶も手伝って「不動産は怖いもの」というイメージや「お金稼ぎは卑しいこと」という謎の価値観も手伝って、いわゆる「貯金が正義」「いい学校に通っていい会社に入って、手堅く稼ぎなさい」という思想・嗜好が変わり始める人が出だした中で「おそるおそる」始める人が多かった時世です。
具体的にいうとワンルームマンションの区分所有や、バブルの夢よもう一度!という新築区分マンションの購入が流行りだし、またサブリースなどの悪名高い手法が脚光を浴びだしたのがこの時期でした。
2000年代 後半
さて、そんなバブル期の「値上がり・売却益」を目指す不動産投資・・・というか投機から一転、火付け役バイブルとなった書籍にて「売却益よりキャッシュフロー!」と考える投資家が出始めました。
これまでは地主などがメインプレイヤーだった、いわゆるアパート経営者がメインの市場にサラリーマン大家さんが乗り込みだした、という時世ですね。この時期は銀行の融資体制もゆるゆるでフルローンも良く出ていました。またアパート利回りも15~25%というのも珍しくなく、いわゆる「経済的自由ブーム」が達成しやすい土壌でした。
またこの時期、物件一つごとに1法人を設立して融資の連帯保証を脱法的に回避する「1物件1スキーム」が流行りに流行ったのも特徴ですね。本記事執筆現在の2025年時点ではこのスキームは当然に脱法行為で、バレたら融資の一括返済なども求められる状況ですが、当時は合法・・・とまではいわないものの、金融機関に聞かれて、ウソさえ答えていなければ一応大丈夫でした。
俗にいうメガ大家・ギガ大家やレジェンドと呼ばれる不動産投資家が参入しだしていたのはこの時期で、不動産投資歴十数年のライターや講師、不動産勉強会の主幹などが参入して規模拡大を始めたのがこのシーズンとなります。
つまり、「参考にはなるしモチベーションアップにもなるけど、いまはできねぇよ!!」という過去の成功体験や書籍情報などはこの時世・情報を基に話されることが多いという、ある種象徴的な時期になります。
2010年代 前半
若干時期に諸説があるものの、上記のような経緯で「不動産投資家の絶対数」が増えたことにより競争が出始め、いわゆる利回りの低下がはじまりだしました。
アパート利回りが10~15%程度に落ち込み始め、築浅物件に至っては10%前後、新築が8~9%前後が平均となった時代ですね。とはいえ今に比べると全然まだ高いですが。
まぁ、「今にして思えばもっと買っておけばよかった!!」という気持ちもわかりますが、これは競馬馬券を当てて「もっと賭けておけばよかった!」というのと変わらないレベルのたられば論なのでいったんおいておきましょう。悔しいは悔しいですがどうにもならないですし。
この時期から、スルガ銀行や当時の関西アーバン銀行(現・関西みらい銀行)、SBJ銀行などの一部地銀等がリスクを取った融資を展開する一方で、2008年ごろに起きたサブプライムローンによるリーマンショック問題などが尾を引き、明確に勝ち組・負け組が分かれた時世でもあります。
もっとも、この時期から不動産投資に参入する方々は先の事件を受け「有価証券は危ない!資産形成は不動産だ!!」という意向をもって始める方も多かったので、全体として不動産投資プレイヤーが増えたことと、今に比べると良い時代であった、というのは否定しがたい事実ではあります。
2010年代 後半
買って貸すだけの通常賃貸だけでなく、レンタルルーム・コワーキングスペース・民泊・シェアハウスなど、不動産賃貸業の派生業種が増えだしたのがこの時期の前後になります。
当時、2010年前半にドル円為替レートが80円だったのに対し2015年ごろは101円~103円と円安に進み、今でいうインバウンド、海外旅行者が増えたのが背景にあります。
そして、運命の日・2018年。シェアハウスに過大な家賃を設定し、借り上げ契約(サブリース)を行ったかぼちゃの馬車と、そこに融資をしていたスルガ銀行などの不正融資が発覚した結果、不動産マーケットに冷や水が掛けられることになりました。
「こんなもん、購入前に相場家賃をちゃんと調べておけば回避できただろう」と言ってしまえばそれまでではありますが、一方で業者や銀行が嘘をつくもしくはエビデンスの偽造等まで行うとは、なかなか一般の(言い方は悪いですが)ビギナー投資家が気を配れなかったのは確かです。
そこの是非は置いておきまして、この事件発覚後に金融機関の融資スタンスが少し厳しく?もしくは正常化し、いわゆるフルローン・オーバーローンや、賃貸経験がなく属性(年収)が500万あれば貸すよ!というスタンスの銀行も700万、800万と最低水準をきりあげることになりました。
また一過性ではありましたが、「同じ物件であっても大手仲介経由で持ち込めば融資はするが、中小の不動産仲介会社経由だととりあえずNGにしておこう」という事例も見かけ、それにより資金繰りを窮した仲介業者が悪事に手を染めるといったケースも見られました。
投資家兼事業者としての筆者所感ですが、この時期は本当に細々としたトラブルが多かった印象です。不動産計画の財務顧問・サポートをしている立場からみても様々なお客様トラブルを見聞きしましたし、弊社もリーマンショックで含み損が出たほか、共同事業を行っていた不動産事業者が「この案件は詐欺だ!」などと言いがかりをつけて、過去に懲戒を食らったことがある弁護士を連れてきたというトラブルに巻き込まれたのもこの時期で、人間不信になりそうになりましたね。
また2018年の6月にいわゆる「180日ルール」等を包括した民泊新法も制定され、ある種ゲームチェンジとなった時期ではありました。
2020年代 前半
さて、時が変わり2020年。皆さんの記憶にも新しい「コロナ」が全国的に流行したタイミングです。
様々なゲームチェンジは起きていたものの、「属性や資産がある人間は融資が受けられる」「情報収集や財務顧問がついていれば融資が受けられる」という、完全素人相場からセミプロ相場になっていた時期に、世界的なマイナスイベントが発生しました。
とはいえ、いわゆるリモートワーク体制が市民権を得るとともに、オンラインサロンや勉強会、リモートでの顧問業務などが世間に受け入れられ、かつ俗にいうコロナ融資などで運転・設備資金ともに資金調達がしやすくなったので、不動産投資という意味では一概に悪い時世ではありませんでした。
この時期は「先も見えないし借りれるだけ借りよう!」というのがトレンドで、それを基に不動産の頭金や諸費用等の運転資金を調達する動きが活発でした。
また「物価は上がるのに家賃は上がらない」という関係上、築古と新築の利回り差が縮小していること、また属性があれば融資が出ること、物件価格が物価上昇・アベノミクスによる株価上昇などにより上昇をつづけていたことにより、「新築を建てて数年後に売れば儲かる!」というスキームが流行りだしたのがこの時期です。思えば不動産投資家が宅建業を取得し、業として本件を行いつつ過去に購入した物件の入れ替えを行い、規模拡大をしよう!というのが流行ったのもこのシーズンですね。
その手法の是非は置いておきまして、「タワーマンションの実勢価格と相続税評価の差を使った節税」という手法や、貴金属(金取引等)をつかって消費税還付を受けるというスキームに法律改正のメスが入ったのもこの時期に重なるわけですが、大きな元銭・種銭を確保して事業拡大を行うという流れになりました。
また背景には「物件を買う時は基本的に、自己資金10~20%を求める」というスタンスの金融機関も増え、不動産で規模拡大をするのにある程度まとまったお金が必要となりだしたのもこの時期ですね。
2020年代 後半
そして現在。
コロナも一旦収束し、株高を支えた安倍元首相も事件によりこの世を去り、アメリカではトランプ政権により株価が横ばいに。そして日銀の総裁が植田さんに交代したことによりいわゆるマイナス・ゼロ金利の是正、いわゆる「融資金利の上昇」が生じ始めました。
こうなってくると、物価が上昇していることから建材費が高騰しているほか、家賃と金利の差、いわゆる「スプレッド」が縮小したことにより新築を「持ち続ける」戦略は中長期的には難しく、「キャッシュフロー重視から売却による利益確定も戦略視野にいれて」物件を所有していく必要性が増しました。
属性が低い方は何とか1~3棟目の築古物件を買って収益を上げ、節税と貯めた家賃で融資を受けやすい築浅を中長期保有する、属性があるかたはリスクが許容できるなら土地から新築を仕込み、売却し、規模拡大のための種銭を稼ぎ出す必要があるという形ですね。
もちろん言葉にするのは簡単ですが、リスク許容度や住居されている市町村と物件・金融機関の兼ね合い、また「納税してよい決算を作って融資を受けるのか」、はたまた「節税して現預金を貯めて物件を買うのか」というバランスなど、考えないといけないことは様々です。
ここからは弊社所感ですが、いわゆる「金融機関の開拓」というのは市況の特性上、(もちろん大切ですが)最優先事項ではなくなり、いかにして「次につながる物件取得と決算作り込み」を行うかの仕組み作りが大切になった印象です。
また、弊社戦略としては「買って貸すだけの雑な不動産投資」から脱却し、事業として収益力を高め、それを金融機関にPRするなどの努力も必要になりだした市況だと感じます。
果たして物件価格の上昇がこのまま続くのか、それとも新たなゲームチェンジなのか・・・この辺りの見極めが、今後数年の資産形成の分かれ道ですね。
まとめ
いかがでしょうか。というわけで、ここまでの不動産投資市況の歴史を簡単にではありますがまとめてみました。ぜひご参考にしていただければ幸いです。
弊社では事業としての不動産投資家の購入計画や行動計画作成をサポートしているほか、下部リンクにて案内しているBFPゆる起業・投資学習交流会にて不動産だけでなくその他の投資や事業化についての情報提供・会員同士の交流などを行っていますが、今後もこういったコミュニティ属性の変化は続くと思われます。
定期的に勉強会や情報配信を行っておりますので、参加は無料なのでもしよければご登録いただければ幸いです。また、個別に相談事項などがある方も、ヒアリング相談は無料(リンク:お問い合わせ用公式Line)なのでお気軽にお声がけください。
それでは、この辺で。
