2025年3月。大都市圏では不動産価格の高騰が続いています。
日銀が利上げに方針転換したことは不動産市場にとってマイナス要素となり得ましたが、海外と比べれば相対的に低金利環境が続いていることが影響しているのでしょうか。
そんな背景で不動産市場においては高騰する都心部を避け「第二の選択肢(セカンドベスト)」として首都圏、関西圏などの郊外都市が注目を集めています。
この流れに乗って資産を増やしたいところですが、不動産物件への直接投資は簡単ではありません。
物件の見極めに豊富な知識や経験を必要とするのはもちろんのこと、多額の資金を必要とするため銀行から融資が前提になります。
これから投資に挑戦される方にとって、いきなり不動産投資からという選択はハードルが高いでしょう。
そこで不動産物件そのものに投資するよりも、この市場トレンドを捉えた不動産関連企業への株式投資がより魅力的な選択肢となります。
今回は、不動産市場における「セカンドベスト」の台頭と、その恩恵を直接受ける可能性が高い私鉄グループの不動産関連銘柄に焦点を当てます。
セカンドベスト不動産市場が注目される理由
「セカンドベスト」とは、各大都市圏の中心部(ベストエリア)に次ぐ資産価値の維持・成長が期待できるエリアを指します。
東京では千葉や埼玉、神奈川などの国道16号沿線エリア、関西圏では大阪の中心である梅田から少し離れた天王寺や新大阪駅エリアなどが該当するでしょうか。
通勤優先から私生活の充実へシフト
セカンドベストのエリアは、もともと都心部までドアツードアで1時間以内の通勤が可能な地域であり、マイホーム需要の高い地域です。
ただ、都心部と比較すると通勤アクセスの不便さはいかんともしがたく、大きなマイナス要素となっていました。
しかし、近年は一部業界でのテレワーク普及やカーシェアの広がりによりアクセスの重要度が薄れたことに加え、郊外には大型ショッピングモールなど私生活を豊かにする施設が充実してきました。
世帯主の通勤よりも家族の生活や休日を優先する層のマイホーム需要が高まっています。
本当のベストに手が届かないという側面も
加えて都心部の不動産価格上昇により、マイホームとして購入できる世帯が限られてきたことも影響しています。
首都圏ではここ数年、地価の上昇が続いています。
もともと高価格帯であった都心部の地価がさらに上昇しています。
たとえ高年収であったとしても一般家庭の家計状況では、東京23区内のベストエリアにマイホームを持つことは難しくなってきました。
もちろんセカンドベストエリアの3地区も上昇はしていますが、23区内の上昇率に比べれば緩やかな上昇にとどまっています。
もともと都心部と比べれば相対的に低価格帯であった地域です。
ベストエリアでのマイホーム購入を検討していた方なら、上昇したとしても十分手の届く価格帯でしょう。
言い方は悪いですが不動産価格の高騰でベストエリアを諦めた層が、仕方なく選ぶ街としての需要が期待できるのもセカンドベストのエリアなのです。
都心とセカンドベストエリアを結ぶ私鉄に注目
セカンドベスト不動産市場の成長が期待される中、これらのエリアと都心を結ぶ私鉄グループは投資先として魅力的です。
日本の私鉄経営において不動産事業は単なる副業ではなく、多くの場合で鉄道事業と並ぶ中核事業となってきました。
駅前開発、マンション分譲、商業施設運営など、沿線の不動産価値を高めることが同時に鉄道利用者の増加につながるという好循環も生み出しています。
セカンドベストエリアの住宅需要拡大は、私鉄にとって不動産収益と鉄道収入の両面でプラスの影響をもたらすことが期待できます。
以下では、首都圏の3つのセカンドベストエリアを代表する私鉄関連銘柄をご紹介します。
京成電鉄(9009):千葉県
京成電鉄は千葉県を中心に鉄道網を展開し、セカンドベストエリアと都心を結ぶ重要な役割を果たしています。
松戸市内では京成線の利便性を活かした住宅開発に特に注力しており、
駅前再開発や「サングランデ」シリーズのマンション分譲など、住宅需要拡大の恩恵を直接受けることも見逃せません。
業績面では、2025年3月期第3四半期決算で営業利益328億8,200万円(前年同期比37.8%増)と大幅な増収増益を達成し、極めて好調な状態です。
2025年3月期通期予想でも営業利益337億円(33.5%増)とさらなる成長が期待されています。
また、成田空港と都心を結ぶ「スカイライナー」は、インバウンド回復による空港利用者の増加が、鉄道収入と沿線不動産価値の両面でプラス要因となっています。
地域密着の不動産開発と堅実な財務基盤を背景に、京成電鉄はセカンドベストの成長を取り込む長期的な投資先として検討する価値があるでしょう。
西武HD(9024)東武鉄道(9001):埼玉県
西武ホールディングスは所沢市を中心とする埼玉県西部エリアを主軸に鉄道・不動産事業を展開しています。
西武新宿線や西武池袋線沿線での不動産開発に特に注力しており、都心へのアクセスの良さと郊外の住環境の良さを両立したエリア価値創出を推進しています。
所沢エリアでは「グランエミオ所沢」など、駅を中心とした複合開発や住宅地開発が進み、不動産市場の成長による恩恵を直接受ける期待が持てます。
業績面では、2025年3月期第3四半期で純利益913億5,800万円(前年同期比111.6%増)と大幅増益を達成。
通期予想でも営業収益4,890億円(前期比2.4%増)と成長が見込まれています。
同じ埼玉では東武鉄道も春日部市や川越市などで沿線開発を進めています。
『ソライエ(Solaie)』ブランドでの分譲・賃貸住宅事業を展開し、南栗橋駅前では『BRIDGE LIFE Platform』を通じてトヨタホームやイオンリテールと連携し、スマートタウンを開発。
また、スカイツリーの東京ソラマチでは、インバウンド需要の回復を背景に安定収益を確保しつつあります。
業績面でも2025年3月期第3四半期で純利益418億3,200万円(前年同期比2.2%増)と堅調な伸びを示しています。
東急不動産HD(3289):神奈川県
東急不動産ホールディングスは、東急田園都市線沿線を中心に横浜市戸塚区などの神奈川県内で総合的な不動産開発を推進しています。
東急グループの不動産専業会社として、都市開発や住宅、商業施設など多様な事業を行っています。
分譲マンション「ブランズ」や賃貸住宅「コンフォリア」シリーズを横浜市南部エリアで展開しており、
業績面では2025年3月期第3四半期で営業利益878億円(同16.6%増)と過去最高を更新。
マンション分譲や売買仲介の好調、インバウンド需要によるホテル事業の回復もあって、通期計画への進捗率も65.1%と順調です。
2028年度竣工予定の泉岳寺駅直結ビル開発など長期的な成長戦略も進行中で、東急沿線の不動産市場の成長を、最も効果的に取り込める企業の一つとして期待できるでしょう。
まとめ
セカンドベストエリアは都心に次ぐ不動産の成長が期待できる地域
都心へのアクセス重要度の低下や不動産価格の高騰で、郊外に注目が集まっている
鉄道会社は鉄道と不動産の相乗効果が期待できる
私鉄系企業(京成電鉄、西武HD、東武鉄道、東急不動産HD)が有力候補
