よく聞くけれどよくわかっていないかもしれない「クオリティ・グロース」。

運用環境を伝えるニュースなどで耳にすることがある「クオリティ・グロース」。

クオリティは質、グロースは成長ですが、資産運用の世界で2つがくっつくと一体どんなものになるのかを解説します。

目次

スタイルを称するもの

クオリティやグロースは資産運用の世界では「運用スタイル」の一つとして表現され、「運用スタイル」は以下の4つに分類されることが多いです。

1.      バリュー

企業の資産や収益性から計算される本源的価値と比較して、今の株価が割安と判断される企業に投資する。PBRが低い銘柄が多くなる傾向があります。

一般的には近い将来の利益の比重が高く、これを現在価値に割り引く際の割引率の影響をグロース株よりも受けにくいと考えられます。そのため、金利上昇時には、相対的に割安なバリュー株の魅力が増します。また、景気が回復すると、業績が向上する可能性があります。

2.      グロース

これから飛躍することが期待できる企業群に投資する。業績の成長率を目安に使うことが多いようです。低金利や金利低下の局面で優位な傾向があります。グロース株は遠い将来の成長の価値が高く、これを現在価値に割り引く際の割引率の影響をバリュー株よりも受けやすいことが考えられます。また、低金利は企業の借入コストを下げ、成長投資を促進します。特にテクノロジー関連の企業などが恩恵を受けやすいです。

3.      クオリティ

強固な財務体質(低い負債比率、高い利益率など)、優れた経営陣や企業統治(ガバナンス)、

競争優位性(ブランド力、特許、市場シェアなど)、安定したキャッシュフローや収益性をクオリティの要素とすることが多く、指標としてはROE(自己資本利益率)やROA(総資産利益率)を参照することが多いようです。ディフェンシブ性が高く、景気が悪いときに投資家からの需要が高まります。

4.      中小型

規模が小さめの企業へ投資する。時価総額で判断することが多いようです。業績を内需に依存することが多く、国内の景況感改善が追い風になる傾向があります。

4つのいずれかを組み合わせるケースもあります。中小型のグロース株といったようなものです。

ただし、ROEや時価総額、PBRの具体的水準は運用者によって異なることが多いです。またこれらの数字はマーケット環境次第で変化しますので、いつでも同じ水準で区切られるわけでもないでしょう。

クオリティ・グロースとは

その名の通り、企業の「質」と「成長性」の両方を重視するアプローチです。両方を追求することで、過度なリスクを取らず、市場の変動や経済の不確実性に対して比較的強い耐性を持つため、リスクを抑えつつ長期的にリターンを追求できます。

2025年1月にトランプ氏が2度目の米国大統領に就任してからのマーケットは不確実性と向き合う日々です。このような環境下では「クオリティ・グロース」という性格に日の目が当たりがちなのでしょう。

クオリティ・グロース銘柄を探る

具体的にはどのような銘柄が「クオリティ・グロース」に該当するのかを考察します。ここではプロの力を借ります。「クオリティ・グロース」を謳う投資信託の組み入れ銘柄を確認します。

「クオリティ・グロース」で検索してヒットする投資信託は少ないです。まだ、マイノリティなのかもしれませんね。

1.      野村グローバル・クオリティ・グロース

これはいわゆるラップ口座用の投信ですので、誰でも買えるわけではありません。それでもレポート等は公開されていますから、運用内容を知ることができます。野村アセットマネジメントが運用しています。

組み入れ上位10銘柄を眺めると、なんだかいわゆるオールカントリー型のウエイト上位のように見えますが、アップル(AAPL)やテスラ(TSLA)がないのが特徴でしょうか。組み入れ銘柄数は77銘柄です。全世界株式を対象としていても、「クオリティ・グロース」ととらえることができる銘柄はそう多くはないということにも見えます。

出典: https://www.nomura-am.co.jp/fund/monthly1/M1180303.pdf

ラップ口座用投信である野村アセットの商品に対して、販売会社がそれなりにある「クオリティ・グロース」ファンドを運用しているのが、SBIアセットマネジメントです。

SBI・コムジェスト・クオリティG・世界株式は文字通り世界の「クオリティ・グロース」株に投資します。

先ほどご紹介した野村アセットの商品と比較すると銘柄数がかなり絞り込まれています。目論見書においても30~50銘柄に絞って運用と記載されています。

銘柄も野村アセットの商品とは異なる顔ぶれですね。

出典:https://www.sbiam.co.jp/fund/pdf/64f136aba6176496791c8cd46c8435a1c4100b6f.pdf

SBIアセットマネジメントは日本株版の「クオリティ・グロース」ファンドも運用しています。

SBI・コムジェスト・クオリティG・日本株式です。

こちらの組み入れ上位銘柄もTOPIXや日経平均株価のウエイト上位銘柄とはかなり異なります。

出典:https://www.sbiam.co.jp/fund/pdf/0e0ed7084b7c992eead30446e8f7802b88a69c3c.pdf

ご紹介した3本はいわゆるアクティブ・ファンドですので、名の通ったインデックスファンドよりコストは高いです。よって、このようなファンドの利用方法は、レポートや運用報告書などを利用して、「クオリティ・グロース」銘柄がどのようなものかを把握することだと考えます。自分で多くのユニバースから「クオリティ・グロース」を絞り込むのは容易ではないからです。

クオリティ・グロースも万能ではない

「クオリティ・グロース」はマーケットの不確実性対策に向いている投資スタイルです。ですから、マーケット全体がリスクオンになるようなマーケット環境では相対的には弱く推移しがちです。「クオリティ・グロース」という言葉は何となく耳障りがいいように聞こえますが、決して万能ではないことを理解したうえで向き合ってほしい投資スタイルです。

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この記事を書いた人

大学講師兼投資ライター
システムエンジニア->証券アナリスト->地方公務員->セミリタイアな中小企業の嘱託研究員->大学講師

CFP、FP1級、日本証券アナリスト協会認定証券アナリスト保有。
TOEIC950。MBA取得済。投資歴31年余り。

システムエンジニア時代に投信売買システム、生命保険契約管理システムに携わり、それらのしくみにも精通。
趣味はサッカー観戦(川崎Fサポ)、旅、読書、野菜栽培、フラワーアレンジメント。
がんサバイバーでもある。

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