この1、2年の世界の株式市場の上昇をリードしてきたのは、米国を代表するハイテク企業「マグ二フィセント・セブン」です。今年に入ってからのそれぞれの株価の動きを見ますと、画像処理半導体(GPU)大手のエヌビディアとその他のマグニフィセント・セブンの銘柄との違いが見られています。今回は、過去のエヌビディアの株価の動きと日経平均株価の動きを振り返り、今後の動きを予想しました。
「マグニフィセント・セブン」について
以下は、「マグニフィセント・セブンは米国テクノロジー企業7社〜上昇期待の米国株銘柄」(日経CNBCのHP)から抽出しました。
マグニフィセント・セブンとは、GAFAMと呼ばれる主要5銘柄(グーグル〔アルファベット〕、アップル、メタ・プラットフォームズ〔旧・フェイスブック〕、アマゾン・ドット・コム、マイクロソフトに、テスラとエヌビディアを加えた米国の主要テクノロジー企業7社を指します。
マグニフィセント・セブンの7銘柄は、全てAIに深く関与している中核企業と言えます。生成AI市場や自動運転を支えるAI技術は、この先の人々の生活を大きく変化させると同時に巨大な市場を形成すると予測されています。現在の株式市場で最も関心のある投資テーマと言えます。
昨年からの「エヌビディア」の株価の動き
下図は、「マグニフィセント7」と言われる7銘柄のなかで、この2年間でより堅調に推移した3銘柄(エヌビディア、メタ、アマゾン)の株価の動きを、2年前を100としたときの推移です。日経平均株価についても2年前を100として載せました。
以下のことが指摘できます。
- 2022年終盤から、3銘柄および日経平均株価は堅調に推移しました。
- 2023年7月から2023年10月は、いずれも横ばいで推移しました。米国株は例年9月から10月まで軟調に推移する傾向がありますが、昨年のエヌビディアの株価でもこうした傾向は見られました。
- 2024年に入ってから、エヌビディアの株価と他の銘柄の株価との動きに格差が目立っています。
人員を増やすエヌビディアと人員を減らすその他の企業
以下は、日本経済新聞朝刊5月11日10面より抜粋しました。
米巨大テック企業の人材戦略に注目が集まっています。
- エヌビディアは積極的な採用が続いています。今年1月までの1年間で、従業員を13%(約3400人)増やしました。
- テスラが大胆なリストラに踏み切りました。4月に世界で従業員の10%以上を減らすと発表しました。
- アマゾン・ドット・コム、アルファベット、メタ・プラットフォームズは2023年に大規模な人員削減に踏み切りました。
- アップルも開発中止が明らかになったEV部門の従業員を削減すると報じられました。
エヌビディアとその他の企業の違いは、生成AIの収益化との声が多いようです。
クラウドを通じて生成AIを提供する米マイクロソフトやアマゾン・ドット・コムは本格的な普及まで投資が先行する一方で、エヌビディアは開発段階で収益が増えるもようです。
世界首位の売上高に
米エヌビディアが2月21日に発表した2024年1月期通期決算は、売上高が前期比2.3倍の609億2200万ドル(約9兆1400億円)となり、初めて売上高世界首位となりました。
この発表の後、エヌビディアの株価、日経平均株価はいずれも3月後半まで上昇しました。
5月23日に発表した2-4月期の決算でも売上高が1年前と比べて3.6倍に拡大しました。米巨大テクノロジー企業が繰り広げる生成AIの投資競争の恩恵を大きく受けています。
この発表の後に、エヌビディアの株価は上昇しましたが、日経平均株価は伸び悩んでいます。
今後の「エヌビディア」の株価の見方
下は、日本経済新聞朝刊4月9日9面より抜粋しました。今後のエヌビディアの株価の見方が示されています。
米スピア・アドバイザリーズCIOのイヴァナ・デレフスカ氏の意見は以下の通りです。
- エヌビディアほど競争力が高く効率的な製品を持つ企業は出てきておらず他の追随を許さない。毎年パワフルで費用対効果の高い新製品を発表し続けている。新規参入者がいたとしてもエヌビディアがこの分野のリーダーとしての地位を失うとは考えづらい。
- 最大の懸念点は人びとがもうチップを必要ないと考え、需要が一気に減ってしまうこと。
米ゴールドマン・サックス、リード・アナリストの播俊也氏の意見は以下です。
- エヌビディアの主要事業であるデータセンターのおよそ半分を占めるハイパースケーラー向けは今後も需要が強い状態が続く。データセンターの約2割を占める一般事業者向けでは、数百から数千という企業を顧客に抱える。金融やリテール、製薬など多くの業種で競争の概念が働いている。
- 半導体業界には周期的な変動がある。好調な業績を示していても最終的には調整が入る。時期とその谷を予想することは難しい。
エヌビディアの株価の動きと日経平均株価への影響
前述のように、2月21日のエヌビディアの決算発表を受けて、エヌビディアの株価は3月後半まで上昇しました。この動きは、日本企業を含む、他の半導体関連企業の株価に波及し、日経平均株価は3月後半まで上昇しました。
3月後半からのエヌビディアの株価、および日経平均株価は、原油が上昇したことなどによるインフレの動きが懸念され、米金利が高止まりしたことなどを嫌気して下落しました。
4月に安値をつけてからのエヌビディアの株価、日経平均株価は、内外の多くの企業の決算発表、内外の経済指標の発表を受けて下値も堅く推移しました。
足元の日経平均株価は、米経済指標や米金利の動きなどに影響を受けて上値が重くなっています。エヌビディアの好業績を反映しづらくなっているかも知れません。
今後の日経平均株価は
今回取り上げましたように、5月のエヌビディアの決算発表の後、エヌビディアの株価は上昇しましたが、日経平均株価は伸び悩んでいます。今後の日経平均株価は、米国の経済指標や日米金利の動きなどの影響を受けやすく、エヌビディアの株価と異なる動きになる可能性がありそうです。下値を拾う姿勢が有効になると考えます。