環境変化の中でも底堅さが期待できる金相場・銀相場

NYダウをはじめ世界の株式市場は、7月後半に調整する場面がありました(2024年8月1日執筆時点)。今回は、この背景についてまず採り挙げました。

世界の株価指数が調整する中で堅調に推移したのは「金」相場でした。今回は、NYダウに連動しない傾向がある資産として、金相場、銀相場の行方に注目したいと思います。価格の推移(チャート)を見ますと、注目したい点があります。

目次

世界の株式・為替・商品相場の動きに変化

7月後半に世界の株式・為替・商品相場の動きに大きな変化がありました。多くの国の株価指数が下落し、ドル高を是正する動きが見られました。この背景としましては、バイデン米大統領が次期大統領選挙から撤退を表明し、トランプ前大統領が再選する可能性を織り込んだこと(関税が引き上げられること、ドル高が是正されること)、中国で経済指標の低迷が見られたこと、米国の経済指標でインフレ圧力が弱まったことが確認されたことなどが挙げられます。

こうした中で上昇したのは、金相場でした。

金とは・金投資のメリットとは

「金」につきましては、当サイト2023年8月23日掲載の「金相場の動きを振り返り、今後の動きを予想する」で述べました。

金先物(NY)の推移

ここでは、2003年12月以降、金価格(NY金先物)がどのように動いてきたかを表しました。金価格が高値をつけたのは、リーマンショックの後の2011年、新型コロナウイルスによる悪影響が懸念された2020年などとなっています。つまり、NYダウが強くないときに金は高値をつけてきました。

2003年あたりからの上昇が特に大きいのは、中国・インドでの金の消費量が増加したことが挙げられます。

今年序盤までは、上値と上値を結んだ線(上値抵抗線)、下値と下値を結んだ線(下値抵抗線)の間での推移となっていましたが、2つのラインが徐々に狭まった後に大きく上昇しました。

上値抵抗線を上抜いた後は、しばらく上昇しやすいと言われることがあります。

中国で金を買う動きが活発に

日本経済新聞では、(朝刊)7月24日9面、7月25日9面、7月26日9面で、金相場における中国の存在感が増していることが採り挙げられています。以下のようなことが述べられています。

  • 中国の若者の金買いは空前のブームとなり、中高年の需要も歴史的高値であっても衰えません。
  • 若者の気を引こうと、デザインが日々進化しています。
  • 金買いの根底には、自国の将来への不安が拭えず、目に見える価値を実感したい思惑があるもようです。人民元安が続く中で、不動産市場の低迷、株式市場の低迷から、金に魅力を感じる人が多いようです。
  • 2015年から2016年にかけて、中国人民銀行(中央銀行)は大量の金を積み増しました。米中関係の緊張を受けて、外貨準備に占めるドルの比率を引き下げたと見られます。
  • ロシアのウクライナ侵略が始まった2022年2月以降は、ロシアがドル建て資産を凍結されたことから、中国は金への需要を活発化させたもようです。

NY金先物相場の月別騰落率

下の表は、NY金相場の月別の騰落率を示しました。上昇傾向にあった2001~2011年の平均騰落率、下落傾向にあった2012~2015年の平均騰落率、上昇傾向にある2016~2023年の平均騰落率も示して見ました。

各月別の平均騰落率を見ますと、2月、4月、5月、7月、12月の騰落状況が金相場の長期的な方向と比較的一致していました。今年4月、5月、7月に上昇したことは強気を示唆していると考えます。

ただし、2011年、2020年に高値をつけた時期(月)を見ますと、NYダウの上値が重くなりがちな7月、8月に高値をつけていました。また、9月はNYダウと同様に下落しやすい傾向があります。昨年まで7年連続で下落しました。

秋に下落する場面があれば買いを検討したいところです。

銀とは・銀相場のメリットとは

「金」につきましては、当サイト2024年7月3日掲載の「金相場・銀相場の動きを振り返り、今後の動きを予想する」で述べました。

銀先物(NY)の推移

ここでは、2003年12月以降、銀価格(NY銀先物)がどのように動いてきたかを表しました。銀価格が高値をつけたのは、金価格と同様に、NYダウが強くないときでした。金相場と数カ月ずれることがありましたが、高値や安値をつける時期は近くなってきました。

銀相場の過去の高値を見ますと、2011年の高値、2020年の高値と上値を切り下げてきました。一方、下値は2008年の安値、2020年の安値、2022年の安値と下値を切り上げてきました。36カ月移動平均線の前後でよく下げ止まってきたことも読み取れます。

足元は、上値と上値を結んだ線(上値抵抗線)、下値と下値を結んだ線(下値抵抗線)の間での推移から上値抵抗線を上方に動き始めました。上値抵抗線を上抜いた後は、しばらく上昇しやすいと言われることがあります。

さらに、今年5月に2020年高値を上抜けましたので、今後は上昇傾向になる期待が持てそうです。

金価格と銀価格の比率の推移

ここでは、1980年からの「金価格÷銀価格」の推移を示しました。過去の推移を見ますと、足元の銀価格は金価格に比べて割安な状態になっています。

理由として以下のことが、日本経済新聞2024年7月30日22面、7月31日11面に掲載されていました(内容の一部を抽出)。

  • 銀やプラチナの主用途は自動車などの産業向けです。一報、金の産業用途は全体の1割もなく、投資や資産としての需要が多いです。経済不安が高まるほど「金だけが高い」傾向が強まります。
  • 新興国の中央銀行の金買いが目立っています。

産業向けでの銀への需要がかなり衰えない限りは、「金価格÷銀価格」の上昇は限られると考えます。

今後の見通し

金相場や銀相場は、過去の推移を振り返ると、NYダウなど世界の株式相場の上値が重い場面で堅調に推移する場面がありました。資産運用の一部として入れておきたいと考えます。金相場は、2020年から一定範囲内で推移した期間の長さを考えますと、まだ上昇が続く期待が持てそうです。銀相場も、中長期的な上値を切り上げましたので、今後も底堅い展開が期待できそうです。

この記事は投資経済マーケットについて学習および解説をすることを目的に作成されています。 投資や運用の推奨および加入や結果の保証を行うものではございません。 参考資料としてご活用いただき、運用を行う場合は自己責任でお願いいたします。

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