10年単位でじっと我慢。保有資産は、自分の得意領域を。
よく「投資で儲ける!」となると誤解する人が多いですが、皆が皆、「利益を出すために毎日必死に情報収集して、売買を繰り返す!!」という必要はありません。
投資でお金を増やす着実な方法が一つあるとするならば「景気循環」を利用して、売買を繰り返すだけです。不景気の時は、「モノが安い」ので仕込み、好景気は「モノが高い」ので換金。つまりは、「何とかバブル=好景気」と、「何とかショック=不景気」局面。景気循環を利用すれば、お金を増やすことができるのです。ただ、景気循環を利用した投資には最低でも「10年以上の年月」がかかります。
筆者は小学生の頃から日本の株式相場を眺めていたので「国内株式投資」が得意領域になりますが、投資は「価値が本質的に変わらない(と考える)もの」とお金を交換するだけなので、「価値が落ちない」と自分が目利きが出来る領域の「モノとお金」であれば、株式投資に限らずどんなモノでも可能です。例を上げると「金塊」「アンティーク時計」、変わったところでは「ウイスキー」などもあります。
2008年リーマンショックで大下落。その後、2013年アベノミクスから上昇へ。
では、「バブルとショック」の話をしましょう。「世界経済の底が抜けた」とも称されるような、世界を襲った未曾有の金融危機の引き金となったのが、世界有数の投資銀行「リーマン・ブラザーズ・ホールディングス」の破綻。いわゆる「リーマンショック」です。
リーマン単体で与えた損害額だけも、6000億ドル(2022年10月の円安時に関すると、約89兆8338億745万6206円!)という莫大な金額ですが、彼らが売り飛ばしていたデリバティブ(金融派生商品)が与えた影響は遥かに大きく、世界中の企業の時価総額ベースで“溶けた金額”を換算すると「約1京円(※計算法により異なるため、一定の想定数値)」という、天文学を超越した数字になります。日本では1万2000円程度だった日経平均が、底値では6000円を割る局面に突入するのです。
結局儲けられたのは、当時の個別銘柄にスポットを当てて投資した人
国内のナショナル企業の一つ「トヨタ」の株価を見ると、2007年の1年の最高値「1670円」だったものが、2008年の最安値で「517円」。日本を代表する企業ですら「3分の1の価値」に剥落しています。
その後、日本の株価は低迷を続けますが、2013年からスタートした、“日本国民の年金やら、お金やらを突っ込んで、日本の株式を買って上昇させてやるぜオラオラ!”──という、いわゆる「アベノミクス」の局面では、低迷を続ける労働市場を後目に、株式市場は盛り上がりを見せます。これにより、日本の株価は徐々に上昇を続け、2018年には2万4000円を超えるまでに肥大化していくのです。
この時に、きっちりとリスク管理・準備を行った方は株価が約8倍になるという形で利益を得ることができました。中長期の理想形ですので、基本的には「普段は買いあおられず、現金を持って待機する」「チャンスを逃さない」という考え方が大事です。
暴落(リーマンショック等)を知らないプレイヤーたちが跋扈する市場。
つまり、ここ10年ほどのレンジで株価を見ている市場参加者にとっては、「株価は上がるもの」と信じて疑わないことでしょう。ただ、リーマンショックや、それ以前を知ってる古参の投資家たちにとって、日本株は1989年の日経平均3万9000円というトチ狂った高値からずっと右肩下がりです。10年だけのレンジで見ていれば、2020年の「コロナショック」も買い時に見えたことでしょう。しかし、バブルが弾ける足音はもう目前まで来ています。
──1929年以来の、世界大恐慌クラスが襲ってくる可能性も。
「浮かれたプレイヤーたち」が跋扈し、「株価は上がり続けるものである」という投資家が大勢を占める「陶酔の時期」は、概ねバブル期です。
現在は、コロナショックからのコロナバブルが継続していることを鑑みると、絶頂期を既に越えたといってもいいでしょう。2020年の最安値1万6350円だった日経平均は、世界中でバラ撒かれた緩和マネーの影響を存分に受け、2021年に3万円を超える場面もありました。世界の緩和マネーは強烈で、例えば「自己責任」の国アメリカでさえ、コロナで失業すると手当がすぐに出ただけではなく、週600ドルが支給され続けるという大盤振る舞いぶり。
世界中に出回っているお金(マネーサプライ・通貨供給量)は、一時、「40%増えた」と言われる程です。そうしたお金が原資になり、アメリカではロビンフッターと呼ばれる若手投資家(というよりは投機家が正しい)が生まれ、耳目を集めました。そうして、ジャブジャブにお金を刷り続けた結果、訪れたのはお金の価値が下がる、「インフレ」でした。これは、1929年の「世界大恐慌」前夜と類似しています。ということは…。
インフレを引き締めるための利上げ。
世界大恐慌は、今から100年ほど前に起こった金融危機です。世界一次大戦の好景気の余波を受け、投機ブームに沸いた1920年は、言うまでもバブルでした。
そのバブルに浮かれた世界を一気に氷河期に塗り替えたのが1929年からスタートする、世界大恐慌です。結論から言えば、株価は乱高下を続けつつ、大きく大きく切り下げていきました。その数字は、ダウを指標にすると、なんと10分の1!。1929年のピークには381ドルだったダウは、1932年には41ドルになったのです。その後、1929年のレベルにまで株価を戻すのに要した時間は、25年。つまり、四半世紀の間「株は上がるものでは無い」というのが、常識だったのです。
刷りまくったマネーが溢れる現在、世界の中央銀行では暫定的に引き締めが行われ、市場に滲み出し過ぎてしまったがゆえに起こっている「インフレ退治」に躍起になっています。なお、日本だけは真逆の政策をとり、歴史的な円安に突入しています。
バブルはずっと続かない。やがて、景気後退へ。
本原稿の前編「簡単に儲けられるなら、全員富裕層。カモネギにならないためには?」の末尾でも触れていますが、「バブルはずっと続かない=好景気はずっと続かない」というのが、小学生の時に習った「景気循環」です。
バブルはいつか弾けます。あとは、その頃合いでしょう。現在の状況は、どうでしょうか?世界中からお金が染み出し、インフレが加速している中、引き締めを行っても、まだ止まらないのは、「バブル」の証左ですが、徐々に景気後退の兆しも出てきています。2020年の時点で、既に世界はお金を刷り過ぎていましたが、コロナショックで、さらに刷りまくった結果、今があります。つまり、「元々バブルだったところに、さらにバブルを促進した」という点に於いて、戦争による好景気(アメリカ中心)とその余波でバブルが加速した、「1929年」と非常に似通っているのです。
「100年前に起こったことが現在起こる再現性なんて、無いに等しい」と思われる方はいらっしゃるかもしれません。しかし、リーマンショックの時も「100年に1度」と盛んに言われ、めったに見ることが出来ないことから「ブラックスワン」という言葉が飛び交いました。
「みんなが買って、儲けている時」は、バブル崩壊の前兆です。
いわゆる「バブル局面」は、株式銘柄全体が基本的に上がるので、誰もが儲かります。普段は「10人中2人くらいしか成功しない」と言われている株式相場で、8割の人が勝つような相場が訪れます。ですが、その頃はもう崩壊前夜。もし、あなたが「株を買ってみよう」という動機が「周りがやってるから」「テレビやネットで騒いでるから」であれば、悪いことは言いません。現金を持っておきましょう。
口さがない証券マンなどは「国策で2%のインフレが起こるのだから、現金で持ってたら2%目減りする。インフレに強い株を買いましょう」なんていう、セールストークをすることでしょう。しかし素人が株式投資に手を出し、損をするパーセンテージは2%なんかではすみません。暴落相場にでも巻き込まれたら、トヨタの株価ですら3分の1にまで下がったのですから。
では、いつ株を購入すればいいのか。
「いつ株を買えば良いのか」と思われることでしょう。買うタイミング、いわゆるエントリーポイントの指標の一つは、上記の逆。つまり周りのみんなが「株で大損した。株を買うなんて、バカのすることだ」みたいな話が社会に浸透し、世の中が「不景気になった」というニュースで溢れかえった時です。
「株なんかに手を出してる場合じゃない」という空気が漂っている時が、絶好の買い時になります。そもそも株式投資の世界は、8割9割が損をし、残りが得をする世界で、敵は世界トップレベルの賢人たち。 そこで素人が勝つには「休める」という気楽なスタンスだけなのです。不景気で仕込んだ後は、コツコツと労働し、再び「何とかバブル」で人々が騒ぎ出すのを10年、20年単位でじっくりと待ちましょう。その時、彼らに売ってあげるのです。
結論。基本的には現金で、大暴落の時に淡々と購入。
「不景気で買って、好景気で売る」と一言でいうと、簡単過ぎますが、もちろんそこまで単純でもありません。「株価の天井と、底」を的確に把握するのは、不可能だからです。
1929年の大恐慌でも1932年の底に達するまでの間「暴騰・急落」を繰り返しています。ですので、バブルの時に買うのは論外として「もうここが底だろう」と思って買う時も、一気に買うのではなく、分散して購入するようにしましょう。
だいたい、資金の3分の1からスタートし、後は時間と価格。上がっていれば利益確定しても良いですし、下がっていれば「1年、2年後に買う」「持ってる株が半値になったら買うか」などを事前に決め、あとは粛々と機械的に取引をするのが、利益を出すことに繋がります。「ハイリスク・ハイリターン」「ローリスク・ローリターン」な銘柄の選び方などは、またいずれかの機会に。
補足:「大恐慌で儲けよう」。
先の項目までで、話は終わりなのですが「大恐慌でも、儲けたるねん!」という、商魂たくましい方がおられるかも知れません。まあ、筆者もその一人なのですが(笑)。そんな我儘なあなたにオススメなのが「ベア商品」と言われるもの。「日経ベア2倍上場投信(1360)」は、日経平均が1%下がると、2%上がるという「日経平均を空売りできる優れもの」になります。もちろんデメリットもあります。その一つが「減価」です。ずっと持ち続けると、少しずつ価値が下がり続ける宿命があります。ただ、「自分で日経平均空売りを全部組成する」となると、手間暇と多額のお金が必要なので、「大暴落で利益を出す」という意味においては、一つの選択肢になり得ます。大暴落で利益を出すことができれば、その利益をそのまま、大暴落で「買い」に注ぎ込むことができます。2019年から「空売りメイン」にしている筆者からの、蛇足でございました。