売却方法一覧
さて、前回はアンティークコインの具体的な「購入方法」というテーマでお話しましたので、今回はその対になる記事として、具体的な「売却方法」についてざっと解説していきます。
前回、コイン投資の「成否を分ける最大のポイント」は購入時にあると述べましたが、コイン投資家が「一番悩むことが多い」のは、おそらく売却時なのではないかと思います。
主な理由として考えられるのは、コイン投資が基本的に長期投資をベースとしているため。初心者やコレクター気質の方にとっては、購入経験に比べて売却経験が極端に少なくなってしまうからだと思います。
今回の記事が、コイン投資における「出口戦略」を考える一助になれば幸いです。
それでは、売却方法の選択肢を一覧で並べてみます。
◎オークション
◎コインショップへの委託販売
◎個人との直接取引(ネット経由)
◎個人との直接取引(対面)
◎買取サービス
以下、順番に掘り下げていきます。
オークション
やはり一番に思い浮かぶのは、オークションへ出品するという方法でしょう。
まず、オークションに出品するメリット・デメリットについて、ざっと挙げてみます。
メリット
>高い価格で売却できる可能性が最も大きい
>出品からお金の回収まで代行してもらえるため、手間が軽減できる
>独自の鑑定の目が入るため、取引の健全性が高い
デメリット
>まれに相場よりも低い価格で落札されてしまう可能性がある
>手数料が必要(※)
>出品からオークション開催・入金までのタイムラグがある(※)
>オークションのルールに則る必要がある
(コイン価格の下限値やグレードなどの理由で出品制限を受ける場合がある)
>残念ながら不落札となってしまった場合は、手数料分、損をすることもある
※手数料とタイムラグに関しては、以前の記事「絶対に知っておくべき!アンティークコイン投資のデメリットと注意点」(https://bfp-investmentlabo.com/2022/12/02/tyouki0009/)で説明しております。まだご覧になられていない方はご一読ください。
補足説明:落札価格のブレについて
さて、オークションの落札価格のブレについて、もう少し説明を加えていきます。
まず、相場よりも高くなる場合の原理は至ってシンプルです。
オークションは「そのコインが欲しい」と思う人が2人以上いれば、互いに競り合うことで、価格が吊り上がっていきます。
コインの世界は「好き」という感情によって下値が支えられている世界ですので、2人以上の入札者の心に深く刺さった場合は、落札価格が一気に噴き上がるという現象が頻繁に起こります。
そして、その価格がコイン価格の実績として残っていく…。
このサイクルがコイン価格の相場上昇に大きく寄与していることは間違いありません。
次に、相場よりも低い価格で落札されてしまう場合です。
これは、オークションが期間限定である=参加者の数に限りがある、ということから起こる現象です。
先ほど述べたように、オークションの落札価格が上がるかどうかは、そのオークション参加者の心に深く刺さるかどうかによって決まります。
ということは…、そうです、逆の場合もあるのです。
本来は希少度が高く高価であるはずのコインが、たまたま何かのタイミングで、あまり注目されずにオークション期間が終了してしまう…、そうすると、相場価格よりも低い金額で落札されてしまうことになります。残念ながら、このような現象が、まれにですが起こるのです。
そのようなコインを見てしまうと、正直、出品者には同情してしまいます…。
※このような現象を防ぐために、多くのオークションハウスは「落札価格の下限値」を出品者が希望できるサービスを用意しています。
非常に便利なサービスではありますが、手数料も追加で必要になってきますので、コインの価格帯やリスク許容度によって使い分ける必要があることは理解しておくべきでしょう。
※ちなみに、不運にもオークションで想定外の安値で落札されてしまう…このような「落とし穴」の存在を理解することは、実は買い手にとっては、安く落札できる「チャンス」を発見することにも繋がります。具体的にどんなケースが考えられるのかについては…文字数の都合もありますので、また別記事にして説明していこうかなと思います。
補足説明:海外オークションについて
また、オークション出品の話をすると、海外オークションを利用した方が良いのでは?という質問をいただくことがあります。
筆者の個人的な意見としては「初心者の方は、そこはあまり気にしなくても良いかな…」というのが正直なところです。
もちろん、海外オークションに出品するメリットはあります。
為替に関してはダイレクトに影響を受けますし、その地域ならではの人気の有無の違いもあります。
また、有名どころのオークションでは参加者の母数も変わってきますので、特に数千万円クラスの、価値が非常に高いコインに関しては、海外オークションを選ぶというのも有効な手段となってくるでしょう。
しかし一方で、
アンティークコインを保有している時点で、すでにある程度の円安対策として機能している点、
そして、言語面でのハードルの高さ・手数料や税金・その他思わぬアクシデントが起こった時の対応などの諸々のリスクを考えると…、
この記事を読んでいる多くの方(国内在住者で、上限で数百万円クラスまでの方)は、まずは国内オークションを主体にする方が良い気がしています。
ただこのあたりは、コインの個別特性やスタンスによっても判断が変わるところだとは思います。
今の説明を受け、それでも海外オークションの方がメリットを感じるので出品してみたいという方は、コインショップによってはディーラーが出品代行してくれるサービスも展開されていますので、信頼のおけるコインショップがあるのであれば、相談をしてみるのもひとつの手かと思います。
補足説明:オークションはギャンブル?
ここまで読まれた方にはご理解いただけるかと思いますが、実は「オークションへ出品する」という方法には少しギャンブル的な要素が含まれます。
繰り返しになりますが、「オークション」はコイン投資家の間でおそらく最もポピュラーであり、かつ高い金額で売却できる可能性が最も大きい方法です。
しかし一方で、まれに想定外の低い金額で落札されてしまうリスクがあることは理解しておくべきでしょう。
また、リスクコントロールのためにも、次に紹介していく「コインショップへの委託販売」や「直接取引」についても理解しておいた方が良いと、筆者は考えます。
なぜなら、これらの方法は自分で売却価格を決められる裁量が大きいからです。
これらの方法を知っておけば、例えば、オークション出品に至る前にそちらの方法での「試し撃ち」を組み合わせる、といった戦略をとることも可能となります。
という訳で、説明を続けていきましょう。
コインショップへの委託販売
この方法は、文字通りショップにコインを委託して、販売してもらうという方法です。
ショップによってもやり方が変わってくるはずなので、記事内で説明できることは多くないですが、うまく活用できれば、売却戦略を考えていく上でも非常に有効なカードになるのではないかと思います。
下記、メリットとデメリットになります。
メリット
>販売価格を相談できるため、相場価格での売却が可能
>(ショップによっては)オークションよりも手数料が安い
>集客・販売・発送・お金の回収まで代行してもらえるため、手間が軽減できる
>独自の鑑定の目が入るため、取引の健全性が高い
デメリット
>信頼のおけるショップを自分で探す必要がある
>ショップの定めるルールに則る必要がある
(コイン価格の下限値やグレードなどの理由で取引制限を受ける場合がある)
>定められた期間内で売却できなかった場合は、手数料分、損をすることもある
委託販売に関しては、ショップによっても条件や積極性が大きく変わってくる印象です。
また、表立ってサービスを謳ってはいなくても、相談してみたら意外に対応してくれる例もありますので、もし気に入ったコインショップができたのであれば、一度相談してみると良いと思います。
個人との直接取引(ネット経由)
ネット上のコミュニティを活用する他に、メルカリなどのフリマサイトや、ヤフオク、e-Bayなどを経由した取引を想定しています。
下記、メリットとデメリットになります。
メリット
>自分で販売価格・販売期間を自由に決められる
>(方法によっては)オークションよりも手数料が安い
>低価格帯のコインや裸コインも売却可能
デメリット
>商品の説明や写真撮影、出品、発送などを自分で行なう必要がある
>(出品サービスを利用の場合)出品アカウントを育てておく必要がある
>トラブルになった時の対応も、自分の責任で行なう必要がある
やはり「自由度が高い」というのは、非常に大きなメリットです。
しかし一方で、手間とリスクもそれなりに背負う必要があることは、忘れてはいけません。
注意点(補足説明)をいくつか記載しておこうと思います。
補足説明:出品アカウントについて
メルカリやヤフオクなどのサイトを利用しておられる方はご理解されていると思いますが、「アカウントを育てているかどうか」は、出品者にとって大きな意味を持ちます。
利用したことがない方もいらっしゃるかもしれませんので、もう少し説明します。
アカウントを育てるとは、簡単に言い換えると「取引実績を積む」ということです。
大体どのサービスを利用しても、取引が終了すると最後に相互評価が行なわれます。
そして、その結果が積み上げられてアカウントに紐づいて公開されます。
これを確認することで「安心して取引できる相手かどうか」の判断の目安とすることができるのです。
(さらに、出品アカウントのプロフィール欄などにしっかりと説明を入れておくことで、ちゃんとしたアカウントだということをアピールし、購入者に対して安心感を与えることができます。)
(ヤフオクの様子 / 某ショップのアカウント画面より引用)
このようにしっかりと育てられた優良アカウントは、一般的に、検索結果や「おススメ」にも表示されやすくなると言われており、この良いサイクルを回していくことで、どんどん出品物が販売しやすくなっていくわけです。
そもそも、購入者の立場で考えれば分かることですが、ただでさえ偽物が多いコインを、取引実績がまったくない新規アカウントから積極的に買いたいとは思われないでしょう。
たとえ本物のコインを出品していたとしても、(新規アカウントは)どうしても警戒されてしまう。
これが、「出品アカウントを育てるべき」と筆者が考えている理由になります。
もしこちらの売却方法を試したいと思われる方は、たとえ今すぐにコインを売却する方針がなくても、日頃から少しずつでもアカウントを育てていくことを推奨いたします。
補足説明:高額コインの売却について
筆者の個人的な意見ですが、メルカリやヤフオクなどの不特定多数に向けて販売するサイトで「高額コインを売却する」というのは、結構リスクが高いなと思っています。
理由は、万が一、「すり替え返品」や「チャージバック制度の悪用」などの犯罪に巻き込まれた場合、自分で対応をしなければいけないからです。
(正確には、運営事務局や警察と連携して対応していくことにはなるのですが、どうしてもこういったサービスは「購入者保護」の側面が強く、結局は自分で被害者だと立証できる材料を準備し、警察などに説明していく必要がある、と考えておいた方が良いでしょう。)
※近年、チャージバックに関する相談が増えたためか、そもそも骨董品などのカテゴリーはクレジットカードでの決済を不可としているサイトが増えているようです。このこと自体は致しかたない流れだと考えていますが、より出品者が自衛意識を高めていく必要がある、ということは言えるのではないかと思います。
誤解がないようにお伝えしておくと、こういった犯罪に巻き込まれるケースは、かなりのレアケースだと思います。(筆者自身も、今のところ経験したことはありません。)
しかしそれでも、
そもそも高額のコインは出品しないようにする、
もしくは、万が一こういった犯罪者に出くわした場合は返り討ちにできるように、
出品前の状態を詳細まで撮影して記録に残しておく、
誤解を招かないようしっかりと商品説明を入れて出品する、
などの最低限の自衛策はとっておいた方が良いと考えています。
個人との直接取引(対面)
コレクター同士のコミュニティなどを活用し、
購入者と直接取引を行なうことを想定しています。
下記、メリットとデメリットになります。
メリット
>価格交渉がしやすい
>手数料が発生しない
>コインの良さを直接分かち合える
デメリット
>そもそも、良いコミュニティを見つけにくい
>トラブルになった時にめんどくさい
特に、コイン好きにとっては、コインの良さを対面で直接分かち合えるのは、コミュニティを利用する醍醐味ではないかと思います。
一方で、トラブルになった際には、自分で対応していく必要があることは、理解しておくべきでしょう。
買取サービス
展示会・イベントでの出張買取コーナーや、コインショップの買取サービスなどを利用することで、お手持ちのコインを売却することもできます。
下記、メリットとデメリットになります。
メリット
>即日、現金化できる
デメリット
>買取金額が、かなり安くなる
こういったサービスは、即日現金化の強い味方ではあるのですが、
間違いなく、かなり低い金額での売却となるため、筆者としてはお勧めできません。
ただし、これでコインショップを悪者にするのは、ちょっと筋が違うということもお伝えしておきます。
ショップ側は商売でやっているわけです。仕入れたコインを相場価格で販売しなければいけない点を考えれば、買取金額が低くなってしまうのは当然と言えます。
ということで、買取サービスに頼るのは、赤字になっても構わないので現金が欲しい、本当にキャッシュフローに困った時の最後の手段として理解しておきましょう。
戦略を立てよう
というわけで、ざっと「アンティークコインの売却方法」について説明をしてきました。
売却方法も、ひとつだけを選ばなければいけないということはありません。
コインに合わせて、もしくは自分のスタイルや考え方に合わせて、適時選択、組み合わせていくのがよいかなと思います。
「売却はまだまだ先」と考えていらっしゃる方も多いかと思いますが、その時が来た際には、この記事を見返していただけると幸いです。
まとめ
コイン投資家が一番悩むことが多いのが、売却時。
「オークション」は、最もポピュラーであり、最も高い金額で売却できる可能性が大きい方法。
しかし、まれに想定外の低い金額で落札されてしまうリスクがある。
「コインショップへの委託販売」や「直接取引」は、自分で売却価格を決められる裁量が大きい方法。
これらを組み合わせることで、リスクをコントロールすることができる。
メルカリやヤフオクなどの「ネットを経由した直接取引」は、自由度が非常に高い分、手間とリスクもそれなりに背負う必要がある。
「買取サービス」は、赤字になっても構わないので現金が欲しい、という時の最後の手段。
売却方法は、コインに合わせて、もしくは自分のスタイルや考え方に合わせて、適時選択、組み合わせていくのがよい。