新NISAの目玉「生涯投資枠」の徹底解説

2024年から新NISA制度がスタートします。基本的には現行のNISA制度の年間上限額を拡充したうえで、現行の一般NISAとつみたてNISAの2階建てとし、更なる投資機会を設けることが主要目的です。そのNISA新制度の目玉とされているのが、生涯投資枠制度です。

目次

NISA新制度の生涯投資枠制度とは?

生涯投資枠制度とは、これまでのNISAには無かった新しい概念です。NISA利用者が生涯で1800万円まで投資できる仕組みが導入されています。この他に成長投資枠(旧一般NISA)1200万円の上限が設定されています。この仕組みを噛み砕いていきましょう。

これまでのNISAには無かった枠のリセット

生涯投資枠はNISA新制度になって導入された制度です。現行NISAにおいて、年間の投資上限額は120万円、5年間で計600万円です。この投資額は1度買付をした後に売却したとしてもリセットされることはありません(損益は関係ありません)。新制度のNISAでは年間上限が240万円に変更され(つみたては120万円)、更に同様に買付をした投資銘柄を売却した場合、買付枠はリセットされる生涯投資枠が開始します。つまりNISAの枠組みのなかで売買を繰り返すことができるように変わります。

その上限額が先の1800万円、1200万円です。上限額枠内での売買はNISA制度の根本である配当所得の非課税制度が適用されるため、更なる積極的活用が期待されています。なお生涯投資枠は買付金額で計算することに注意しましょう。評価額での計算ではないので、購入銘柄が著しい評価損を起こしていたとしても確定売りで購入枠が広がるものではありません。

生涯投資枠の目的は現行NISAに収まらない人たちの開拓?

生涯投資枠の目的は何でしょうか。もともとNISAはイギリスのISAを参考に作られました。当初は資産運用に慣れた投資家ではなく、現役世代のパパやママといった「資産運用?ギャンブルなので無理」と抵抗感を示していた方々に運用習慣をつけてもらう目的がありました。公的年金財政の先行き不透明さも背景にあると言われています。

数年間NISA制度を稼働してみると、実際にNISAを歓迎したのは既に金融リテラシーの高い投資家で、いわゆる投資に不慣れな層にはいまいち浸透しない傾向が見て取れました。そこで国は第二弾として2018年から「つみたてNISA」をスタートします。年間上限額120万円の一般NISAの3分の1、年間40万円に上限が設定されたつみたてNISAは現役世代にも浸透します。日本証券業協会(JSDA)の統計によると、2022年9月末のつみたてNISA口座数は466万口座であり、一般NISAの増加率と比較しても急伸していることがわかります(下図参照)。

<2021年末から2022年9月末までのNISA口座増加数>

2022年9月末時口座数2021年末時口座数増加率
一般NISA678万口座769万口座88.1%
つみたてNISA466万口座339万口座137.4%

出典:日本証券業協会(JSDA)https://www.jsda.or.jp/shiryoshitsu/toukei/files/nisajoukyou/nisaall.pdf

このうえで第3弾となるNISA新制度がスタートとして、生涯投資枠の設置に繋がります。生涯投資枠は一度利用した買付枠の復活であるため、NISA不慣れよりは比較的運用に慣れている利用者の促進を目的としていることがまずわかります。いわばNISA利用者のペルソナ再策定というところでしょうか。

ただ、この考えにはもう1つのポイントがあります。恐る恐る、つみたてNISAを始めた500万家庭のなかにはつみたてNISAに対し、先入観に寄る誤解が解けている部分もあるでしょう。1にも2にも投資が怖いのではなく、投資のなかにもローリスクの方法があること。そして投資信託のファンド(少なからずNISAに選ばれているもの)は厳選されており、少額でかけることのリスクはさほど高くは無いという点です。

そのようなNISAに慣れた方々に対して、もう少し本腰を入れてNISAを進めてみませんか?というメッセージが新制度による上限額拡大であり、生涯投資枠ではないかと筆者は考えています。もちろん実際にスタートしてみるとメインでNISAを活用している世代や所得層、投資傾向の分析が行われ、微修正されていくことでしょう。ただ、国の念願ともいえる「貯蓄から投資へ」の実現役として、2024年からのNISA新制度が重要な役回りを担っていることは間違いありません。

一方で気になるのは、新制度の始まる2024年にアメリカの大統領選挙があります。共和党からは再選を目指してドナルド・トランプ氏が出馬するのではと目されており、世界相場における不安定要素の1つとされています。またロシアとウクライナの戦争や中国の台湾戦略など予断を許さぬカントリーリスクがあり、自分も投資に慣れたと生涯投資枠を積極利用して思わぬ火傷を負うリスクが気になります。時にライフプランにとっての投資の意味を伝える我々専門家としては、時勢によって時に抑制役となることも忘れず、活動していきたいものです。

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この記事を書いた人

株式会社FP-MYS 代表取締役。

相続×Fintechサービス「レタプラ」開発・運営。2022年夏より金融教育のプロダクト提供。上場企業の多数の執筆・セミナー講師の実績を有する独立型ファイナンシャルプランナー(FP)。

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