年末に向けて意識しておきたい「受渡日」

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「受渡日」を知っていますか?

今回のテーマについては過去何度か別媒体でも書かせていただいていますが、なぜか毎年年末になると話題になるので懲りずに(?!)今年も書かせていただくことにしました。

さて、有価証券取引における「受渡日」をご存じですか?

そもそも「受渡日」って何?と思われた方がいらっしゃるかもしれませんので、簡単に触れておくと、まずこの熟語は「うけわたしび」と読み、有価証券取引の決済をする日のことを指します。

例えば、日本株や東証上場のETFは取引が成立した2営業日後が受渡日で、買い取引であれば約定代金を支払って株式を受け取り、売り取引であれば約定代金を受け取って保有していた株式を引き渡す日です。

例えば祝日が無い週末を想定した場合、木曜日に約定した日本株取引の受渡日は翌週の月曜日になります。実際は、株式等は日本の場合「ほふり」と呼ばれる機関が管理しますので、モノの受け渡しはなく、投資家が意識するのは売買代金のみです。

株主優待や配当の権利を得るためには、権利日(月末であることが多いが、まれに20日というようなものもある)に株主である必要がありますが、2営業日前を「権利確定日」と呼ぶのは、「受渡」という手続きに2営業日必要だからです。買い取引の場合は「受渡」を終了して初めて株主名簿に名前と株数が掲載されるわけです。

さしあたり日本株の場合を例示しましたが、この「受渡」までに必要な日数は有価証券によって異なります。投資信託の場合は、4営業日、5営業日必要な商品が少なくありません。つまり祝日等が無い週の月曜日に取引を成立させたとしても、その週中に受渡が完了しない商品がたくさんあるのです。

今この話題を取り上げたのは、時期としてそろそろ意識したほうがいい場合があるからです。

「受渡日」を意識したほうがいい例

読者の方は一般NISAにもつみたてNISAにも各暦年の非課税上限額があることをご存じでしょう。この上限額の消化は受渡日ベースで判定します。

日本の金融機関は12/31に休業しますので、今年であれば12/30までに受渡を終了したものが、2022年のNISA枠対象となります。

また、譲渡損益に対する課税も受渡ベースで決まりますので、例えば日本株の場合今年の12/29以降に成立した売買の譲渡損益は2023年分のものになります。

投資信託であれば、もっと前倒しになります。

なんだ、簡単な話じゃないかと思われた方、もう少しお付き合いください。

例えばお給料日に投信を定期的に積み立てているとか、NISA枠での買いを実施している方が少なくないと思います。結論から申し上げると、お給料日が毎月25日なら、商品によりますが2022年内に受渡できない可能性がかなり高いです。

今年は25日が日曜日ですので、毎月25日が給料日の方は23日に給料が振り込まれるでしょう。前述したように12/31は金融機関が休業しますので、2021年内に受渡するためには12/30が今年最後の受渡日ですが、今年は12/24、25が週末にあたりますので、12/26に取引が成立し、受渡日までに例えば4営業日必要だとすると、ぎりぎり12月30日に受け渡されます。

言い換えると取引が12/27以降になると、取引の受渡日は2023年1月4日以降になります。

この取引をもってNISA枠を使い切ろうと思っていた場合、この取引は2023年の枠として取り扱われることになりますので、想定と違う結果になります。

もう少し踏み込むと、そもそも12/26に取引が成立しない投資信託がたくさんあります。多くの海外市場はクリスマスに休場します。2022年の場合12/26もクリスマス休場となるようです。よって特に外国株や外国債券を対象とした投資信託はそもそも12/26に売買が成立しないことが多いです。

出典:DMM.com証券 website

仮に12/23に取引できたとしても、海外資産を対象とした投資信託などの場合、12/26は受け渡しの日数にカウントしません。海外資産を対象とした投資信託の場合、取引を申し込んだ日から5営業日目に受け渡されますので、12/23に取引を申し込んでも、受け渡しは2023年になります。

自分が積み立てている投資信託等の取引不能日(「ファンド休業日」と呼ばれることも多い)がいつなのかは、たいていの場合販売会社のwebsite等で公表されていますのであらかじめ確認しておきましょう。

これは積み立てだけではなく、スポット購入でも同様です。

販売会社によってそもそも取引を受け付けないか、あるいは取引成立がいつになるか等を示したうえで、取引を受け付けるかはまちまちかもしれません。

また、受渡ではありませんが、外国の有価証券に投資する投資信託の場合、そもそも取引成立は申し込みの翌営業日であることが多いという点も念頭においてください。

「受渡」までの日数が商品によって異なる

また、受渡まで何営業日必要なのかは、商品によって異なりますので、それらもあらかじめ把握しておくべきです。海外のマーケットの有価証券が組み入れられている場合は5営業日以上必要なケースが多いです。

横にそれますが、これは買う時よりも売るときに大事な点です。

いつ現金になるのかが商品によって異なるということですから、例えばフルインベストメントしている投資家が、急にまとまった現金が必要になった場合に、投資対象によって現金を手に入れられる日が違うことを意識しておかないと、手元にお金が足りないという事態も招きかねません。

というわけで、12月中の取引をもって何かを確定させたいと考えている場合には12月中旬までに取引を終了させることをお勧めします。

定期的な買付日を月初にしておけば困らない

ちなみに筆者もつみたてNISAを利用していますが、買付は毎月5日にしています。5日に特に意味はありませんが、上旬の方が前述したような受渡またぎを防げると思ったからです。

下旬に設定している方は来年以降、日にちを変えると受渡の年またぎを防げると思います。すぐに変更できない場合も考慮し、来年早々に実施すると来年の今頃同じような事態を避けられると思いますので検討してみてはいかがでしょうか。

まとめ

「受渡日」は「うけわたしび」と読み、有価証券取引の決済をする日のこと

NISA枠の判定は「受渡日」ベースで行う

毎月下旬に海外資産を対象とした投資信託を買う取引をしている場合、12月分については年内に受け渡せない可能性がある

定期的な買い付けは、月初にするのも一つの手

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この記事を書いた人

大学講師兼投資ライター
システムエンジニア->証券アナリスト->地方公務員->セミリタイアな中小企業の嘱託研究員->大学講師

CFP、FP1級、日本証券アナリスト協会認定証券アナリスト保有。
TOEIC950。MBA取得済。投資歴31年余り。

システムエンジニア時代に投信売買システム、生命保険契約管理システムに携わり、それらのしくみにも精通。
趣味はサッカー観戦(川崎Fサポ)、旅、読書、野菜栽培、フラワーアレンジメント。
がんサバイバーでもある。

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